翼をください 上 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
4.11
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本棚登録 : 2950
感想 : 142
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041014769

感想・レビュー・書評

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  • エイミーのように純粋に空を飛んで「世界はひとつ」を確認したい人、山田順平のようにカメラで世界で起こっている事を知らせたい人。そんなまっすぐな人たちを巻き込んでいく、国や軍の陰謀に悲しくなります。まっすぐに夢を叶えてほしいと思いながら下巻へ進みます。

  • エイミーの活躍する話かと思いきや、さにあらず。太平洋戦争前夜の微妙な雰囲気を醸し出して上巻が終わる。このあと物語はどのベクトルに進んでいくのか。上下巻に分けたのは非常にうまい演出。すかさず下巻を読みたくなるように仕向けられました。

  • 世界一周を成し遂げる手前で失踪したアメリカの女性パイロットも、日本で初めて世界一周を果たしニッポン号の男性パイロットもモデルがいて、そこにルーズベルト、アインシュタイン、山本五十六など歴史上人物が絡んで、まるで実録のような展開。
    友情、裏切り、陰謀、情熱、それらが塊となって心を揺さぶる。
    下巻、楽しみでしかない。

    ところで、天才アインシュタインは、純粋な研究が世界平和を脅かす可能性を、戦争にも巻き込まれる中で実証してしまった人物である。それは、その後の科学倫理にも課題を提示した形になっている。
    本人が言ったのかどうかは知らないけれど、「世界は、ひとつではない。だからこそ、大事なのは、共存すること。」と言いつつ、でも本当は「私もずっと、考えていたんだよ。そして誰かに言ってみたかった。世界はひとつなんだ、と。」と思っていた。
    アインシュタインの伝記を読んでみて、近からずも遠からずの心境だったのではないかと思う。

  • その名はエイミーイーグルウィン!もう次が気になって気になって…あっと言う間に上巻を読み終えました!さぁ、下巻へ!

  • ※下巻の感想に、この物語を通しての感想や想いを綴っています。

  • こんな史実があったっていう事実だけで引き込まれたのに、その物語の鮮明さたるや。。予想の上の上をいく展開で、一気に読み切ってしまった。人間と時代の怖さと美しさが散りばめられてた。

  •  フランス語では小説をRomanと言う。壮大な夢を見させてくれるロマン。それは小説という表現形態が持つエネルギーのことであり、作者から読者へと伝わる広大な夢の世界でもあると思う。例え現実を基にした作品と言えども、作者がそれを夢やロマンという形で言葉にし、文章にするとき、完成されたものとしての小説=ロマンを読む人の心は、その作品に呼応した心の化学反応のようなものを少なからず見せるものなのだろう。

     小説の持つ力をあなどるべきではない。そんなことを感じさせるのが最近ぼくが集中して向き合っている原田マハの作品である。この作家、実は彼女のどの作品からも、何故か心に共鳴する言葉たちが感じ取られる。読者の心の中でいくたびも再生されてゆく物語の持つ力。読んでいる間も読後もおのずと立ち昇る夢のような世界。言葉と、人々の心の美しさとを、何もなかった虚空に蘇らせて満たしてしまう力。

     いつの時代にも地球は住み心地の良いものとは言い難く、欲望・悪意・戦争・悲惨等々に満ち溢れている。時代により、国により、それは雑多な人間の業の集合体のような巨大な罪までをも想像させられる。でも小説はそれらの世界から人間やその物語を思いのままに切り取る力を持っている。大法螺であれ、儚い夢であれ、それを、その時代を選択した作者の世界観や物語力に、ぼくら読者は身を委ねることができる。それがイコール現実でないとしても、我々の生きる時間に間接的にであれ確かな力を与えてくれることがある。

     本書は、世界横断飛行という夢というかたちで壮大なロマンを提供してくれるスケールの大きな歴史冒険小説である。我らが主人公は、実在した女性飛行士アメリア・イヤハートを基に、新たにフィクショナル・キャラクターとして創り上げられている。夢と心と人間的魅力とを、作者は作品の主人公であるエイミー・イーグルウィングという架空の女性に、限りなく真実に近いかたちで託しているように思う。

     原田マハがなぜこの題材に出会ったのかは、作品のご本人のあとがきに詳しい。毎日新聞社の社用機「ニッポン」という飛行機が、かつて太平洋戦争直前に初の世界一周を成し遂げたこと。その事実が戦後GHQによって隠蔽されていたこと。このニッポン号のことを小説に書いてほしいと、飛行機マニアの作者の知人に提案されたばかりか、その知人がニッポン号快挙の70周年企画として毎日新聞社との渡りをつけるなど諸々の手配もされた裏話等々である。いわばデビュー後、間もない原田マハという作家が、時代と社会のニーズに応え、このような夢と冒険に満ち満ちた作品を書く運命となったということである。史実に基づく題材だから相当な下調べ期間を要したことだろう。巻末の参考文献や資料、実際のニッポン号と乗組員の1930年代の写真なども生々しい。相当な準備なしに書ける小説ではなかった、ということである。

     作品前半は、世界一周チャレンジ中に消息を絶ったエイミーの冒険を主軸に描く。彼女を取り巻く世界緊張のシチュエーション下で、エイミーの淡い恋の気配、飛行仲間たちとの連帯、さらに米軍部のスパイ活動が彼女のフライトに謎めいた気配と緊張感をもたらすという、素晴らしい描写に盛り上がる。

     対する後半部は、主編とも言うべき史実に基づくニッポン号の冒険譚である。この冒険飛行に関わってゆくニッポン号乗員7人のそれぞれの個性や役割はもちろん、飛行そのもののスリリングな描写、世界に影を落とし始めた第二次世界大戦のきな臭い空気など、スケール感のある小説世界に息を飲むことになる。

     準備にも執筆にも相当の時間をかけたであろうこの作品の重さ、大空を舞台に広がる夢の大きさ、登場する男女たちの個性や友情やロマンスなど、第一級のスケールと高いエンターテインメント性を感じさせる傑作であり、文字通りの労作と言える。物語と歴史的事実を重ね合わせて、多面的に読むことができる歴史冒険小説である。また、現代を見る鏡としての役割も果たしているようにぼくは思う。この作品が描いた大戦直前という時代と、現在の世界に漂いつつある緊張感がどことなく共通しているようにも思えるところから、今、多くの方に手に取って頂きたい作品である。

  • 久々のマハさんの本、やはり面白い。
    その時代に、まるで横にいて話を聞いていたような物語。すらすら読める。装丁の海上の空の写真もとても素敵。

    暁星新聞記者の青山翔子は、1939年、第二次世界大戦前に世界一周を成し遂げた航空機、ニッポン号、に同乗した同社大先輩のカメラマン、やまじゅん、を追ってアチソンへ。

    そこで、カンザス州アチソンの英雄、エイミー・イーグルウィング、彼女の仲間のトビアス、ビルとの関係性、マネージャーのジョナサンの悪人ぶり、偶然カフェで出会ったアインシュタイン博士、さまざまな人間関係が登場し、ドラマがある。

    エイミーのかっこよさには惚れ惚れする、成し遂げようとしていた世界一周飛行の影に隠れた陰謀を知り、自ら旅の終わりを決め、そして最期は…本当はどうなったのか…多分下巻に続く。

    まずは冒頭のやまじゅんが乗れた、世界一周飛行の機長が決まるところで上巻は終わる。下巻が気になるーー!

  • 空を飛ぶために生まれてきた宿命を持つ・・・
    そんな米人女性パイロットの、あちこちの空を飛ぶ飛行記録を綴った話かと、のんびりと読み始めた。
    ところが途中から突然、緊張感が。
    何しろ彼女の世界飛行計画の裏には、アメリカ大統領も関与している恐ろしい陰謀が。そんな彼女の前に現れるアインシュタイン博士。ルーズベルト大統領が登場し、山本五十六中将も。たちまち史実とフィクションが融合した謀略サスペンスの世界へ。
    と、思いきや、日本の新聞社が主催する世界飛行計画が始まる。
    女性パイロットと、日本の飛行計画、今後どう関連し、展開するのか、下巻が楽しみ。

  • 上巻を読み終わりました。マハさんの小説はだんだん引き込まれます。

    • エスさん
      上巻を読み終わりました。これからどうなるのか楽しみです。
      マハさんの小説はだんだん引き込まれます。
      上巻を読み終わりました。これからどうなるのか楽しみです。
      マハさんの小説はだんだん引き込まれます。
      2023/02/14

著者プロフィール

1962年東京都生まれ。関西学院大学文学部、早稲田大学第二文学部卒業。森美術館設立準備室勤務、MoMAへの派遣を経て独立。フリーのキュレーター、カルチャーライターとして活躍する。2005年『カフーを待ちわびて』で、「日本ラブストーリー大賞」を受賞し、小説家デビュー。12年『楽園のカンヴァス』で、「山本周五郎賞」を受賞。17年『リーチ先生』で、「新田次郎文学賞」を受賞する。その他著書に、『本日は、お日柄もよく』『キネマの神様』『常設展示室』『リボルバー』『黒い絵』等がある。

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