一私小説書きの日乗 野性の章

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
3.60
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本棚登録 : 53
感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041021385

感想・レビュー・書評

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  • 図書館借り出し。
    飲みながら読んでやった。

  •  エッセイに続いて日記本の3冊目を読了。本業の小説を読んでないことに気が引けるが、とりあえず日記を全部読んでみようと思う。内容としては通常運転。日常のありがたみを感じた。
     2013年段階ではまだまだ芥川賞バブルが続いており作家業だけではなくタレントとしても活発に活動している。当時TOKYO MXの番組は少し見たりしてたので、その頃をレミニスした。あとは浅草キッドの2人との関係性が深まったのもこの頃で特に玉袋筋太郎氏との悪友録的な展開の数々はオモシロかった。仲良すぎて殴り合いの喧嘩した挙句、お互いお菓子持参で手打ちしてるのは笑った。また新潮社の面々との関係はあいかわらず特別で愛憎入り乱れる感じがとても好きだった。
     今の時代、手書きの作家がどれだけいるのか分からないけど、一旦ノートにあらすじを書いて、それを手書きで原稿に清書するという超ローテクの作家は今後生まれないだろうから貴重な存在だったのかもしれない。終盤、身体を痛めるシーンがあり、そこで手書きの弊害がモロに出ていた。ただ本人が師匠と崇めている藤澤清造然り、往年の作家たちの手書き原稿が高値で取引されている背景を踏まえると彼の原稿もこれから他の著名な作家と同じく取り扱われるだろうと思うと本人は天国で感慨深く思っているだろうか。
     食べ過ぎの日々は相変わらず続いており、痛風をコントロールするためにビールを飲んでいるところに酒飲みの執念を感じた。この日記を読むと暴飲暴食モード高まるので自戒しつつ彼に見習ってアグレッシブな飲酒ライフも楽しみたい。

  • エッセイとかではなくただの日記である。
    他人の日記を読むと言うことは人の生活を覗き見していかのような若干の後ろめたさと、少しの高揚があるとはおもうが、彼に関しては奔放すぎてそんなことはどうでもよい。ただ、喧嘩を売って、文句を垂れ、手製のなにかを作り、宝を呑んで、小説を書く。それだけだ。それを淡々と書いているだけだ。なぜだ、なぜこんなものを最初から最後まで楽しんで読んでしまうのだ。不思議だ。

  • 毎日の日記
    数行の文章 だけどなにか熱い
    やりたいことに素直
    いいなぁ

  •  『一私小説書きの日乗』『一私小説書きの日乗 憤怒の章』につづく、西村の日記の単行本化第3弾。

     何を食っただの、誰に会っただのというごく普通の日記なのに、不思議と「あと引き」で、ついつい手を伸ばして読んでしまう。
     もっとも、面白さの順番でいけば小説→随筆→日記であって、日記シリーズは読み返したいとは思えないが……。

     本書に記録されているのは、2013年の5月から6月にかけての日々。
     芥川賞受賞後の狂騒が一段落して、じっくり小説に取り組める環境が得られ、しかも仕事は山ほどある。そんな充実の日々が記録されている。

     もしかしたら本書こそ、西村の人生でいちばん幸せな時期の記録になるかもしれない。……などと要らぬことを思ってしまうのは、彼の本の売れ行きが急速に落ちてきているという噂を聞いたからだ。

     内容は、いつもどおり。鯨飲馬食と買淫(「夜、買淫。当たり」などと“評価”が記されるのみ)、編集者たちとの小競り合いと共闘、そして孤独な執筆の日々。

     自分が寄稿している『新潮』の編集長を文中でしばしば罵る(よくホサれないものだ)など、相変わらず私生活ではつきあいたくないタイプの男だが、小説を書くことにだけは真摯に取り組んでいる。
     とくに本書の日記は、初長編『疒(やまいだれ)の歌』の執筆時期と重なっているから、あの作品に力が込められていた様子がまざまざと伝わってくる。

     芥川賞を受賞して収入が一気に増えてからも、西村の食生活が変わらずつつましい(カップ麺やコンビニ食材が頻出し、酒のメインはいまも宝焼酎)点にも、好感がもてる。

  • 2013年5月21日から2014年6月19日までの日記。前作でずいぶんひどい人がいたものだと思ったが、その露悪的なところが病みつきになるところがあって、日記なので時間をおいてはまずいだろうと読んでしまう。

    今回はよく仕事をしていて、喧嘩も少ない。玉袋さんと取っ組み合いのケンカをしても仲直りしている。編集者とは二人くらいともめてるけど騒動にはなっていない。

    体調的には親知らずの抜歯と後半痛風と頸椎症性神経根症がダブルで押し寄せてきてる。

    食べたものをベースに買淫がアクセントになりつつ快調に読めるのが魅力的。自分も少し真似て日記を書いている。

    たまにおススメの作家なども出てくる。今回は藤野可織さん。自分をほめてくれる人に会うとすぐゴロニャンとなってしまう。自分は五流作家と卑下しつつ、弱い者を見ると声高になるキャラクターであり、それを嫌われるのを承知で書いてしまう覚悟がありますね。

    読み続けることに意味がある日記シリーズかもしれない。初版は11月末に出ているので今年もそのくらいでしょうか。

  • 第一弾以降読んでいなくて、最近文學界か何かに自分の日記を読みなおすのは苦痛とか書いてあったのを読んだら不思議と読みたくなってまた手に取ってしまった。
    相変わらずすごい食いっぷり。(私の三日分ぐらいのカロリーを一食で摂っているとかざら)そして著作もついに30冊を超えたとか。ご活躍何より。この人の文章は本当飽きない。いついかなるコンディションでも読める稀有な作家。憤怒の章と『一日』も読もう。面白い。

  • 週刊誌の女性記者二人現れ、自分を見て嬌声を上げる。やたらチヤホヤしてくれ、随分と思い切った性的挑発の言辞まで弄してくれ、内心舌舐めずりしつつ帰り際に二人の連絡先を聞く。色々と期待と股間が膨らむ一夜。ショートメールを送ってみる。返信はあったものの、かの夜の狂的に弾けた調子とは打って変わった事務的で素っ気ない文言。追ってご連絡させていただきます、とのやんわりとした拒絶の返答。結局、追っての連絡は来なかった。華やぎの中にもそこはかとないペーソスが漂う。買淫の記述が日を追うごとにバリエーションに富んでくる。辛うじて当たり、はずれと言えばはずれ。いろんな意味でややはずれ。あたりは久しぶりが幸いした感じ。大当たり、気持ちよかった。会心とは言えず。・・・・・頸椎症性神経根症の罹患で日乗は終わる。相変わらずの自己中心的身贔屓に薄ら笑いを浮かべながら、どこかほっとしてしまう。

  • ☆☆☆3つ

    ふと、どうしてこの作家の本をこうもひとつ残らずせっせと読んでいるのだろう、と思うことがある。 しかもこれが只の日記なんだよ!

    しかしどうやら食い物の趣味が似ているところにその理由がありそうだ。 夜中明け方近くに「赤いきつね」と「緑のたぬき」をすすってから寝るのはめちゃ体に良くないけどウマそうだなぁー、と共感していると言う事。

    まあ、第一意的には文体の独特さと文章の「上手さ」に主因があるのだろうけれど、わたしにとってはこの食い物の件もまんざらではないのだ。

    たぶん。すまぬ。

  • 914.6

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著者プロフィール

西村賢太(1967・7・12~2022・2・5)
小説家。東京都江戸川区生まれ。中卒。『暗渠の宿』で野間新人文芸賞、『苦役列車』で芥川賞を受賞。著書に『どうで死ぬ身の一踊り』『二度はゆけぬ町の地図』『小銭をかぞえる』『随筆集一私小説書きの弁』『人もいない春』『寒灯・腐泥の果実』『西村賢太対話集』『随筆集一私小説書きの日乗』『棺に跨がる』『形影相弔・歪んだ忌日』『けがれなき酒のへど 西村賢太自選短篇集』『薄明鬼語 西村賢太対談集』『随筆集一私小説書きの独語』『やまいだれの歌』『下手に居丈高』『無銭横町』『夢魔去りぬ』『風来鬼語 西村賢太対談集3』『蠕動で渉れ、汚泥の川を』『芝公園六角堂跡』『夜更けの川に落葉は流れて』『藤澤清造追影』『小説集 羅針盤は壊れても』など。新潮文庫版『根津権現裏』『藤澤清造短篇集』角川文庫版『田中英光傑作選 オリンポスの果実/さようなら他』を編集、校訂し解題を執筆。



「2022年 『根津権現前より 藤澤清造随筆集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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