- Amazon.co.jp ・本 (397ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041028360
作品紹介・あらすじ
早々に進学先も決まった中学三年の二月、ひょんなことからヨーロッパの古城のデッサンを拾った尾垣真。やがて絵の中にアバター(分身)を描きこむことで、自分もその世界に入りこめることを突き止める。友だちの少ない真は、同じくハブられ女子で美術部員の珠美にアバターを依頼、ともに冒険するうち、パクさんという大人と出会い、塔の中にひとりの少女が閉じこめられていることを発見する。それが十年前のとある失踪事件に関連していることを知った三人は、ある計画を立てる…。「今」を引き受けて必死に生きるすべての人へ-心にしみこむ祈りの物語。
感想・レビュー・書評
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久しぶりの宮部作品。推理小説や時代小説を期待したがファンタジー小説だった。主人公が中学3年となると中高生向けかと前半は感じてしまった。
育児放棄や中年のおじさんが出てくるところから、世相を反映した作品に変わってくる。
古城に囚われた少女の原因は、10年前に失踪した子供で、閉じ込めた理由は、、? 古城の絵が描かれ銀行に貼られた理由が今ひとつ納得感が無い。
結末も、そっちの方向かという感じ。
学校でのイジメも書かれているような状況なのだろうとは思うが、自分達の時代(大昔)と違って陰湿過ぎて気が重くなってしまう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
宮部さんのファンタジー系は初です。一冊でまとまったのが読みたくて読んでみました。
なかなかうまく話せないながらも、少しずつ気持ちを合わせて、絵の世界に入っていくオガキとタマちゃん。パクさんと出会うことで、さらに核心に迫っていくものの、気持ちのすれ違いが生じ始め…
絵の世界への入り方へのアプローチが楽しかった。
現実での境遇描写が、けっこう辛いところもあり、そこから、気持ちがずれていったりしていくのも悲しい。オガキ自体もそこまで恵まれてる環境でもないところがなお、悲しい。
反面、満ち足りているということは何だろうと思わされもする。共通の想いや目的を持って進む仲間を持ったことが、少なくともこの3人にはよい意味を持ったように思える。それが不幸や境遇を覆せるものでなくても、何かしらプラスになってくれていると思えた。
この作品もふとした状況描写が、さりげなく美しい表現で描かれていて、よいです。 -
偶然手にした絵の中に入り込めることに気付いた真。隣のクラスの珠美の協力で絵の中に入り込み、穏やかで綺麗な森と遠くに見えるお城があり、その中に女の子を発見。子どもの頃読んだ、ファンタジーのようでワクワクして夢中になりました。が、途中から一転、物語の中にダークな要素が入り込み、別のベクトルで惹きつけられ改めて夢中に。読後感は清々しい淋しさ。
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宮部さんの現代ものファンタジー。
中学生が不思議な絵の中に入り込み‥?
中学3年の2月、もう高校が決まった尾垣真は、ある日ヨーロッパの古城を描いたデッサンを拾う。
絵の中に吸い込まれるように感じ、どうやら自分のアバター(分身)を書き込むと、その世界の中に入れるらしい?
テニス部で「壁」と呼ばれ、友達らしい友達もいない真。
美術部の城田珠美に、絵を描いてもらおうと思いつく。
珠美は、女子にもっと露骨にハブられていた。
その世界では森の奥に古城があり、城の中には女の子がいるように見えた。
もう一人、パクさんと名乗る四十男も、その世界の探索を試みていたと知る。
10年前に起きたある失踪事件が、関わっているのかも知れない‥?!
それぞれに問題を抱えた3人が、事件の真相を知ろうとして、出来ることを探していきます。
中学3年の終わり、進路が分かれる前の限られた期間での出来事。
珠美自身の境遇は、そう簡単に解決できるようなことではないんですね。
子供向けのファンタジーならば、もっと解決しやすい問題にして大きな爽快感を味わわせることも可能なはず。
そこをやらなかったのは、重さを実感させる告発的な意味があるのかも。
現実にもこういう家庭やいじめはあるでしょうから。
けれども、共に冒険に乗り出し、他の人のために精いっぱいの勇気を出した経験、事態が変わることに力を貸せたという喜びは、奥深い自信となっていくでしょう。
やや軽くまとめてあるのかと思えたけれども、予想より余韻のある読後感となりました。
表紙の絵は、黒板に白墨で描いたものだそうで、すごくいいですね! -
こんなにもファンタジーで溢れていて、人物の様子も繊細に描かれている本は初めてだった。
今でも思い出せるくらい、この本の世界観が好き。
読んでいる間、自分も彼らと王国を旅している感覚だった(*´`) -
宮部作品にしては、、、という感じ。。。
ファンタジーだけどワクワクドキドキはなかったかなぁ。 -
久々の宮部みゆき、私の知る宮部みゆきの本とは毛色の違うものだったけど それはそれで面白かった。不可思議な展開のストーリーだが何故か一気に読まされていた 笑。過日読んだ「かがみの孤城」をついつい思い出してしまったけど。
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宮部みゆきさんの本は読み応えがあって好きです。この本はSFぽくて軽くありえないと思いながらも軽く最後まで読んでしまいました。
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久しぶりに宮部みゆきの本を手に取った。古城のイラストにアバターとして入り込むという、ゲームのようなファンタジー設定に惹かれたが、帯文句の「ネグレクト」「スクールカースト」といった社会問題がどのように絡むのか…正直おっかなびっくりしながら読み始めた。
絵の中の世界と現実世界を行き来する、あり得ないと思いながらもワクワクする展開。平凡で地味な中三の真、同級生で変わり者の美術部員・珠美、絵の中で偶然出会う漫画家アシスタントの中年・パクさん。この3人がぎくしゃくしながらも少しずつ交流を深めていく過程に引き込まれていくのだが、さすがにいじめの凄絶なシーンにはぞっとした。そして、この非現実世界に、十年前の少女の失踪事件が絡んでいることがわかっていく。この少女に対するネグレクトもまた酷く、珠美に影を落とす家族環境も過酷で、シビアな現実に目をそむけたくなるのだけれど…なかなかに物語の展開が早く、3人が絵の中に入り込むのと同様に、自分もすっかり物語世界にどっぷりなのである。どんなに辛い状況でも、もはや目を背けることが出来なくなっているというか。
どうして失踪した少女が絵の城に閉じ込められているのか。そもそもこの城の絵は誰が描いたものなのか。少女の過去と共に少しずつその謎が明らかになっていき、ファンタジー色が濃かった前半に対し後半はミステリー・SF的な展開になっていく。そのため、後半は若干内容を詰め込み過ぎたような…めくるめく展開に頭が付いていかなかった部分もあるが、ラストが切なくてとにかく泣けた。現実は甘くないかもしれない。真・珠美・パクさん、それぞれ置かれている状況は違うけれど…今が辛くても、どうにかやり過ごしながら、前を向いて歩いていけますようにと心から願う。少なくとも自分は、彼らの行いに勇気付けられ、背中を押された思いがした。たくさんの要素を盛り込んだ、スケールの大きなこの物語がどんな着地をするのだろうと読めなかったけど、読後はよいジュブナイルもののに出会ったなという満足感。
話題の黒板アートの表紙も本当に素敵で、本書の内容にピッタリです。 -
途中までは想定読者年齢層から外れてるかなと思いながら読み進む。
パクさんに出会い、伊音ちゃんにであったあたりから、俄然面白くなって読むスピードがあがり一気読み。
不幸な現状を変えたいパクさんと珠美、原状にさしたる不満のない真の考え方の対比も面白い。
珠美の自分の不幸でなく、他人を不幸から救い出す行動には頭が下がる。
真の訳の「いっちゃった王国」には噴いた(笑)