キトラ・ボックス

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041037256

感想・レビュー・書評

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  • 一気呵成に読んだ。最後は不覚にも涙した。これは見事なエンタメである。

    「こんな結果になって驚いていることと思う。また私と君の仲だから悲しんでくれていると思う。これは定まったことではなく、私が選んだ道だ。この国で長寿の果てに身罷るはずもなかったのだが、他ならぬ今というのは私が決めた。人には死ぬのにふさわしい時というものがあって、私の場合はそれが今だった」(147p)

    この世界には、これが見つかれば考古学的大発見、歴史が一瞬にして変わるというものが幾つかある。例えば雄略天皇の実在が確定された稲荷山古墳の鉄剣もそれに類似したものだった。しかし何よりも欲しいのは邪馬台国時代の封泥。それによって、8割ぐらいの割合で邪馬台国の場所を確定できる。

    もちろんそんなありきたりな物語を池澤夏樹は作らない。ここで出て来たのは、キトラ古墳の被葬者を特定し、なおかつ当時の最大事件である壬申の乱の新解釈を呼び起こし、なおかつ当時の人々の想いさえも再現する超一級の遺物であった。

    因みにここで出てくる遺物や遺跡が、あまりにも真に迫っていたので、日月神社の存在、そこから見つかった鏡と銅剣、トルファン出土の禽獣葡萄鏡と大三島の大山祇神社の禽獣葡萄鏡が同じ鋳型だったこと、岡山県美作市の鍛冶屋逧古墳の存在、それらは検索してみたら見事な「ウソ=創作」だった。

    前回の「アトミック・ボックス」の登場人物が出てくるとは知っていたが、まさかこんなにもゾロゾロ出てくるとは予想していなかった。嬉しい誤算であり、それだけでもワクワクしながら読んだ。

    ストーリーはきっちりエンタメ・考古学サスペンスの部類に入るのだが、前回と同様に幾つかの瑕疵があるのを指摘せざるを得ない。中国政府やウィグル独立運動当事者は、ここに描かれているほど甘くはない、と私は思う。しかし、そんなものは私には決定的な瑕疵ではない。

    ここにあるのは、あり得たかもしれない歴史の中の「友愛」である。それは信じることができる。それだけでも嬉しい。

    2017年10月、日本の歴史の曲り角になる選挙が終わった翌日に読了。

  • キトラ古墳を巡る研究と現在の中国の国際問題が絡み合い交差する物語。
    2つとも同時進行しており、先が気になって読み進めていると気がついたら一時間経っていた。
    恐らくフィクションも混じっていると思うが、とてもリアリティがあり、読み応えがあった。
    民博にはたまに訪れるため、登場して嬉しかった。チベット、ウイグルのブースを詳しくみてみたい。
    今、この興奮を上手く文章に表せない自分がもどかしい。
    ぜひ一度この本を手に取って欲しい。

  • こんな面白い本だと思わなかった。考古学のロマンと中国の侵略の問題と、考えさせられる本だった。また、日本の古代史を復習したいと思った。

  • 池澤先生は心に沁みる文章を書くほんとうの作家だなぁと思います。日本古代の話から、近年の中国事情までを謎解きまでいれながら、グイグイ読ませてくれます。かなり面白かった。、

  • なんてこった。面白かった。

  • 著者の作品はこれまで読んだことがなかったが、朝日新聞の書評で気になって購入。一日で読了しました。古墳、古鏡好きの私には面白かった。

  • 歴史ミステリと追っかけをうまく組み合わせて読ませる作品。

  • 最高におもしろかった。
    アトミック・ボックスと繋がりがあると知らず「ボックスってつけるのハマってるのかな」ぐらいの感じで手を出したが、美汐さんが出てきてびっくりした。
    アトミック・ボックスも連載で欠かさず読むくらい好きだったけど、さらに好き。
    ロマンがありすぎる。。非常によい作品を読んだ。

  • アトミックボックスに続いてすぐ読了。こちらも全然違う分野なんだが壮大なスケールで楽しめた。
    ロマンを感じる作品。

  • 2019.2

著者プロフィール

1945年生まれ。作家・詩人。88年『スティル・ライフ』で芥川賞、93年『マシアス・ギリの失脚』で谷崎潤一郎賞、2010年「池澤夏樹=個人編集 世界文学全集」で毎日出版文化賞、11年朝日賞、ほか多数受賞。他の著書に『カデナ』『砂浜に坐り込んだ船』『キトラ・ボックス』など。

「2020年 『【一括購入特典つき】池澤夏樹=個人編集 日本文学全集【全30巻】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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