ブランコ乗りのサン=テグジュペリ (角川文庫)

  • KADOKAWA (2015年12月25日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (336ページ) / ISBN・EAN: 9784041037393

作品紹介・あらすじ

20世紀末に起きた天災から数十年後、復興のために首都湾岸地域に誘致された巨大カジノ特区に、客寄せ目的で作られた少女サーカス団があった。選ばれた少女たちは観衆の憧れと熱狂を身に纏い、舞台に立つが……。

感想・レビュー・書評

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  • 少女四人の視点で、柔らかく、淡々と静かに語られるそのくせ、中身は最初から最後まで苛烈で荒々しい物語だった。こうありたい、という心情のための生き方は、高飛車なんて言葉では生温く、傲慢と呼ぶのが正しい。この人の書く話はいつも凄い勢いを感じて、息を詰めるように読んでしまう。たかだか文庫本一冊の人生が、流星が駆け抜けるが如く、燃え上がって走り去って行く、それが、激しすぎて、びっくりするほど怖い。アンデルセンが好きだなぁと思ったのだけれど、やっぱりサン=テグジュペリの激情が一番圧倒されるかな。

  • 歌姫、獣使い、人形師、ブランコ乗り……。
    養成学校まで作り、選抜されたエリートによる少女サーカスは、今宵も人を魅了する。
    けれども、どうやら様子がおかしい。
    ブランコ乗りが、精細に欠けている。
    なぜなら、彼女は、足に怪我を負った双子の妹なのだった。

    サン=テグジュペリの姉妹から始まり、カフカ、アンデルセンの章を進めることで、少女サーカスを取り巻く深い闇が見えてくる。

    それでも、一つの舞台を守るために、生きるために、彼女たちが覚悟を決めていく様子が、うまく描かれていると思う。

    世界観がしっかりしているので、学校内でのあれこれや、エンディングのその後を読みたい気持ちになった。

    これ、ワンクールでアニメ化するにはピッタリの作品と思うんだけど。

  • このサイトで見つけて本屋さんに注文して買った本。
    素晴らしい物語だった。
    面白くてスラスラ読めた。

    少女たちの花のように咲く一瞬の儚さと美しさ。
    完璧でも完全でもなく不完全でありなさい、グッと心にきた。

    一時の夢をみせてくれる、そんな物語。

  • 人食い3部作から読み始めたので、全く毛色の違ったお話でまず驚きました。それでもやはり、この方の作品はどこかしら欠陥を持った少女たちが逞しく生きる姿を美しく描いていてとても読んでいて勇気をもらいます。今回特に素敵だなと思ったのが、サーカスの役職にそれぞれ有名な作家の名前が肩書きとしてつくとろです。サン・テグジュペリは私も大好きで、そのせいもあって読み始めたのですが、ブランコ乗りと飛行士であった彼の名前とがこのようにリンクするとは思っていませんでした。歌姫についても然り。私はまだカフカやチャペックの作品を知らないので、読んでみてから改めてこの作品を読み直したいと思いました。紅玉さんの知識の深さと、それを開けっぴろげにせず登場人物の背景に持ってくる書き方にとても好感を覚えるステキな作品です。

  • なんとも美しく残酷な物語だった。
    歪んでいるのに潔くて、いっそ清廉さを感じる。
    アンデルセン、すきだなぁ。彼女の覚悟は美しい。

    こういう少女小説、さいきん少なくなったよね。

  • 兄弟姉妹って呪われた関係だな、という一面があるのは、兄がいるから分かっているつもりだが、双子だとしたらそれは倍増するのではないだろうか。スターの姉と、その身代わりをする妹。双子の間に交わされる約束は、呪いそのものだ。呪いが言祝がれるのか否か……この物語はファンタジーに過ぎるかもしれない。少女達の描かれ方も芝居じみているだろう。でもそれは、サーカスというモチーフを選んだ著者の意図と妄想する。その上で、少女達の儚くも美しい「覚悟」に切りつけられ、酔いしれるのが、本作の楽しみ方では無いだろうか。

  • 中身だけではなく、見た目も別々になってしまったラストシーンは印象深い。
    片足を失うというのは、双子の片割れを失くすメタファーのように感じた。

  • 少女たちの夢と現実が溢れるダークファンタジー。
    文豪たちの名前をもらった少女たちの思いと周囲を取り巻く人たちの思いが交差し、複雑な思いが残る。
    不完全は美しいと今を生きる読み手にも刺さるセリフが多い。

    個人的には何度も読み返すお気に入りの一冊。

  • 表紙とタイトルに惹かれて読了。
    切なく儚い印象のお話。

    カジノ街の中心で象徴的な存在の少女サーカス。
    空中ブランコのサン=テグジュペリ、歌姫のアンデルセン、猛獣使いのカフカ、パントマイムのチャペック、アメリカ帰りのブラックジャックディーラーのアンソニー。
    キャラクターがどれも魅力的。わずかしか登場しないのに、アンソニーには恋をしてしまった。

  • 913-K
    文庫

  • とてもよかったなー。
    通勤電車の中で読んでたけど、駅に到着して歩き出すといつも頭の中で毛皮のマリーズの星の王子様が流れたなー。

  • 少女たちのサーカス団。儚くて不完全で未完成で、そしてしたたかな少女性。それぞれ一人称視点で、自分の世界が全てという感じ。ラストの姉妹それぞれの決断には驚く。見世物を更に強調することで守られるものとは。読みやすく面白い世界観だった。永遠をちょうだい。不純物の混じった鉱物が美しく見えるように。ざらっとした毒が底に沈んでいて、じわじわ効いている。

  • 請求記号:913.6||Ko 26
    資料ID:C0038336

  • 短い本なのに、5人(かな?)の少女の生き様が描かれていて凝縮されている一冊。
    それぞれ方向性が違う強さを持っていて、強い人間とは何なのか、ということを訴えかけてくるよう。

    余談ですが、女性向けの小説となると男性側はこういう面子になるんですね!

  • てぃーぬオススメ本
    著名作家の名前を冠した少女サーカスのお話。
    サスペンスっぽい内容も合わせて女の子たちの心の動きがとても面白く読むことができました。
    みんなかっこ良くて可愛かった。

  • ジャンルはライトノベルなんだろうけど、この人の話は一般人が読んでもおもしろいんでないかなぁ。

  • 少女サーカスの花形である女の子たちの物語。
    紅玉さんの美しい世界観は読んでいて楽しいです。終わり方も綺麗です。

  • サーカスが舞台で、きらきらした世界で美しく舞う愛涙の話。ハッピーエンドといえる。

  • 夢を生きる「覚悟」の話。少女たちは皆異なる「覚悟」を持っていて、それぞれが正しく、それぞれが美しい。靭やかな強さを貰えるような物語だと思う。

  • カフカのエピソードが好き。

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著者プロフィール

1984年、石川県金沢市出身。金沢大学文学部卒業。『ミミズクと夜の王』で第13回電撃小説大賞・大賞を受賞し、デビュー。その後も、逆境を跳ね返し、我がものとしていく少女たちを描き、強固な支持を得ている。

「2022年 『雪蟷螂 完全版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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