アクアマリンの神殿 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
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感想 : 51
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041040225

感想・レビュー・書評

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  • 海堂氏が新境地で青春学園ものを書いたのかと思いきや、こんな形で過去の作品と繋がっていたとは驚きました。軽さの中に若者に人生の本質を問う厳しさを織り交ぜるところは河野裕氏のシリーズを彷彿させます。
    賛否両論あるようですが、未来の医療技術が直面する可能性がある倫理的な命題に真っ向から取り組んだことが素晴らしいと思います。


  • 前作「モルフェウスの領域」の続編


    5年間の眠りから醒めたアツシだが
    身体は、少しずつ成長したものの
    記憶は9歳のまま


    コールドスリープ状態になって
    1年で、両親が離婚し
    双方が親権放棄した挙句
    全く連絡がつかないという

    天涯孤独になったアツシを支えたのは

    東城大病院staffだった


    日常生活が送れるようになるまで
    院内の小児病棟で過ごすアツシ

    同い年で
    テトラカンタス症候群を患ってる少女の暴言により
    現代に引き戻される


    スリープ管理をしていた涼子は
    眠りから醒めたアツシの未来を考え
    自ら、コールドスリープ装置に入り
    装置開発技術者である
    西野に管理を託す


    西野から、涼子の管理を委託されるアツシ


    涼子がしていた事と同様に
    コールドスリープセンターに住み込み
    装置の、維持・管理をすることになる


    スリープ中の催眠学習により
    大学生を凌駕する程の、学習能力を携えたアツシだったが

    西野の指示により
    桜宮学園中等部に、途中編入し
    普通の中学生活を送る


    涼子の目醒めが近づくにつれ
    涼子が苦悩したのと
    同じ問題に、アツシも突き当たる


    葛藤の末、アツシが選択した方法とは…



    作中、半分は
    アツシの中学生ライフを描いている

    クラス内政治、友情、恋愛、クラブ活動
    などなど

    青春小説を読み慣れてないせいか
    非常に、くすぐったい感は否めない


    学生生活と同時に
    涼子のスリープ管理をしているため

    上司である、西野との関係性や
    天才ゲーム理論学者である
    曾根崎伸一郎との
    メールのやり取り

    なかなか忙しい日々である


    コールドスリープという
    特殊環境で、5年間過ごしたアツシが
    目醒めた後

    如何に、違和感なく
    社会に適合させていくかという問題と同時に


    近い将来、もしや
    同じような技術が開発され
    施行された時の、倫理的・社会的問題
    管轄省庁、医療従事者のあり方
    などなどが
    深く検証されているところが
    非常に興味深い


    新しい技術や制度は
    実際にスタートさせてみないと
    分からない部分があるというのは
    世の常であるが

    問題が起こった際
    柔軟に対応できる体制と、決定権を
    明確にしておくという事が
    如何に重要かということを学んだ作品だったな






    #アクアマリンの神殿
    #海堂尊
    #コールドスリープ
    #レティノプラストーマ
    #テトラカンタス症候群
    #桜宮サーガ
    #読書好き
    #ブクログ

  • えらい面白かった。  
    子供たちがメインってだけで新鮮味があって良い。   
    更に主人公が佐々木アツシだってんだから面白くて当然。     
    ドロン同盟、そして、オンディーヌ。   
    友情と試練の物語。    
    濃密で深淵で軽快な物語。    

    こうしてアツシは、ウルトラスーパー高校生医学生になった。

  • 「モルフェウスの領域」の続編。
    最先端医療の先の、青春。

  • 海堂尊作品は何かしらほかの作品とリンクしているケースが多い。今作も同じ。どの作品とリンクしているかは自分の目で確かめて。ただ、一つの作品としても十分には成立しているので、読んでいなくても大丈夫。何かしら読んでいると、登場人物にニヤリとすることができますが。

    一人の少年が成長し、そして自らを選択していく成長の物語。ミステリというよりは青春モノ要素が強いような気がしますが、物事のピースがつながっていく瞬間は気持ちの良いものでした。
    挫折したけどちょこちょこ「桜宮サーガ」手に取ってみようかしら。

  • 孫悟空は
    釈迦の掌の上で思い切り暴れたからこそ
    釈迦の大きさがわかった。
    普通は掌の上で踊ろうとさえしない。

  • 佐々木アツシ君の中学から高校の数年の物語。
    読みながら思い出すと、彼には親がいない。少年期から思春期がない。身体的欠損もある。普通の友人がない。
    馬鹿馬鹿しい学生生活や彼が守る人に向けての選択も彼の通過儀礼として描かれたのではないだろうか。

    【引用】
    女子という単語には甘美な響きがあるけれど、そこに〝生意気な〟という形容詞をひとつ加えただけで、印象も評価も逆転する。(中略)
    そう、麻生夏美は正真正銘、正統派の美少女だった。(中略)
    〝美少女〟という属性が効力を発揮するのは、日常会話で絶対に使われることのないけれど、入試英語では必須のフレーズ「彼は一目で恋に落ちた」というは慣用表現の一部である〝アット・ファースト・グランス〟が当てはまる、ごく短時間のことだけだ。
    このふたつの設定を合わせると、麻生夏美のクラス内評価は次の一文でこと足りる。
    ー 黙っていれば最高なのに。

    海堂先生がノッて書いているのが分かるけれど、この饒舌性が苦手な人もいるだろう。そして相変わらず箴言、名フレーズのオンパレードの海堂ワールド。

    前半はボクシング漫画風、中間は文化祭を舞台にした学園青春もの。そして終盤は謎解きと決断。謎は無理に話を難しくしている感もチョッと感じたけれど、読後の感想はスッキリしている。

    田口先生の不定愁訴外来から学長室に向かう非常階段。「〝腹黒ホットロード〟なんて陰口を云う人が後をたちません。」細かいギャグがニンマリしてしまう。桜宮サーガがいつまでも続いて欲しいと思う。

    その後のスーパー高校生アツシについては、「医学のたまご」にある。本書を読まれた方は是非。

  • 直前に読んだ海堂作品が輝天炎上だったので、感慨深く…。
    そっか、あの後に舞台となる建物が出来たのねぇ。

    それにしても青春まっしぐらでしたね。
    例えるなら週刊少年誌の恋愛漫画のよう(笑。
    若いのから熟女までよりどりみどりやんアツシ君…(違。
    なにはともあれ、ぐっちーとのやり取りのシーンが好き。

  • モルフェウスの領域のその後かな。
    青春小説になってた。
    麻生との掛け合いが面白い。
    やっぱり論理的に相手の不備をついていくシーンは面白いや。
    最後ちょっとぼやかしたかな?
    ボクシングの件、いるのかなあ。。。

  • ここにいない人の愛情を図るにはどうすれば良いのだろう。冷凍睡眠などの先端医療と難病とを軸に、人権と、心と、愛情が描かれた、青春小説であり成長物語。著者の他作に繋がる物語らしいが、初読みのワシでも楽しめた秀作。むしろ他作に手を出したい。学園生活からそこにうごめく思春期の心の動きまでかロジカルに説明されてそれなりに納得感があるのは、文章を読んでいての心地よさと言えた。そして、他人の心、冷凍睡眠する人の愛情をロジカルに語り、でもそこに沈殿するのはエゴイズムを内包した感情であるのも、人の業に感じ面白い。

著者プロフィール

1961年千葉県生まれ。医師、作家。外科医・病理医としての経験を活かした医療現場のリアリティあふれる描写で現実社会に起こっている問題を衝くアクチュアルなフィクション作品を発表し続けている。作家としてのデビュー作『チーム・バチスタの栄光』(宝島社)をはじめ同シリーズは累計1千万部を超え、映像化作品多数。Ai(オートプシー・イメージング=死亡時画像診断)の概念提唱者で関連著作に『死因不明社会2018』(講談社)がある。近刊著に『北里柴三郎 よみがえる天才7』(ちくまプリマー新書) 、『コロナ黙示録』『コロナ狂騒録』(宝島社)、『奏鳴曲 北里と鷗外』(文藝春秋) 。

「2022年 『よみがえる天才8 森鷗外』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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