池上彰の「経済学」講義1 歴史編 戦後70年 世界経済の歩み (角川文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041048924

感想・レビュー・書評

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  • 戦後の日本経済史についてとても分かりやすく書かれている。

    取り上げられている題材は世間の一般常識的なことばかり。しかし、知っているつもりになっていることでも改めて問われると説明できないことが多く、池上さんの易しい解説は勉強になる。

  • 戦後の日本経済やソ連崩壊後のロシア、戦後の中国の歴史について、池上彰氏の大学生向け講座を書籍化したもの。
    とてもわかりやすい。

    日本の高度経済成長時の当時の様子(マナーの悪さ、公害問題、空気汚染)や、大戦後のロシアや中国の経済についての話は非常に面白い。

    社会主義の失敗について少し学ぶことが出来る。

  • 語り口がとても平易でソフトで軽妙で、さすが言葉で情報を伝えることを生業にしているひとの文章だと敬服。内容はすとん、と、こちらに届いて収まりました。
    あまりTVは見ない口ではあるものの、それでも時折りTV番組で見かける池上氏の発言や振る舞い、立ち位置などから判断する限り、私の政治信条と池上氏のそれはおそらく相容れない。そういう意味で、油断ならないと警戒しつつの読書でしたが…。

    まったくの偏りがないわけではない。しかしながら一般に、ものの見方、歴史観、信条や主張、分析、そういったものに偏りがまったくないという状況は成立しないだろう、とも思えます(数学や物理などの自然科学であれば、偏りもぶれもない、完全な中立性は保てるのでしょうか)。社会科学分野で見られる偏りとしては、このくらいなら許容範囲ではないかな? と私には思えました。

    興味深いエピソードも各所に散りばめられ、ついつい先を読みたくなって「今日はここまで」と思いながら次のページをめくってしまったところも。読みやすいというのはそれだけで充分に好印象で、ひとの心に入り込める武器なのだなぁと本筋とは違うところで感心したりもしました。

    まだ部屋に積読本は山をなしている状況で、それでも続刊であるニュース編を買い求めてしまいそうです。

  • 池上彰さんが愛知の大学で15回経済学の講義を行った記録の内、戦後の日本や世界の経済史の部分が本になったもの。400ページを超え、脚注も充実しているのでボリュームはたっぷり。印象深かったのは、社会主義陣営の失敗の話で農業を知らぬ指導者の指導と、それに反対できず媚びへつらいしかしようのない民衆が何千万人と餓死した経緯は唖然もの。

  • 高校生までが生徒、大学は学生。
    行動経済学では、買い物は夕方によくされる。
    経済学で言う「期待」とは予想のこと。
    太平洋戦争後、軍隊の身分を失った兵隊さんたちには退職金が支払われた。
    三菱鉛筆はスリーダイヤの紋章も使っているが三菱グループとはなんら関係ない。
    明治安田生命は三菱グループだが、人が死んで設けるとは何たることとして、当初三菱の名前を付けられなかった。そして今に至る。
    朝鮮戦争時、ソウルまで攻めてきた北朝鮮軍から逃れるため、ソウル南の漢江にかかる橋を超えて人々は逃げたが、北朝鮮軍が通ってはいけないということで、まだ人々が橋にいる間に橋が爆破された。今でも、北朝鮮による進入に備えて橋には爆薬があり、ソウル北の国道沿いにはたくさんのトンネルがあってそこに爆薬が仕掛けられている。
    東西冷戦の初期の時代、アメリカは砂漠に長大な地下トンネルを掘り、地上に多数の穴を開けて、トンネル内を核ミサイルを積んだ列車が走りどこの穴から飛んでくるか分からないような仕掛けをした。
    北極海のしたでは、ソ連とアメリカの潜水艦がよく接触事故を起こしていたが、マスコミには伏せられていた。
    水爆は強力すぎて兵器としては使えず、今の核ミサイルはすべて原爆。水爆は、いわば原爆を爆発させたエネルギーで核融合を起こす仕掛け。すごい。
    ベルリンの壁が崩壊したとき、東ドイツの放送局がまず放送したがだれも従わなかった。信用されていなくてみんな西ドイツの放送を聞いていた。西ドイツのラジオ局がベルリンお壁がなくなったことを放送してやっと東ベルリンの住民は確信した。
    神武景気より好景気が来たので、神武より高い名称をつけないといけず、岩戸景気とした、さらに好景気が来て、国つくり神話までさかのぼろうとし、いざなぎ景気とした。
    日本はインフラがぜんぜん整備されていなくて、太平洋戦争中もゼロ戦は作るが、名古屋から飛行試験場の各務原までは牛車でぼこぼこ道を引いていった。
    第1次世界大戦中、日本は製品をヨーロッパに輸出したが、シャツのボタンは糊付けとか、魚と鉄の釘を一緒に入れて重さを増していたなどをして、メイド・イン・ジャパンは粗悪品と同義語になってしまった。
    戦後、預金しましょうという一大キャンペーンが行なわれて、預金を刷り込まれてしまった。
    東京オリンピックの最中はし尿の汲み取りをやめましょう、みっともないから、ということになり、ありとあらゆるところにハエがたかった。
    ロバート・ケネディが来日した際早稲田大学で講演して、エネルギッシュの源はアイスクリームだと述べたときに聴衆は驚いた。なぜなら当時に日本でアイスクリームは色のついたジュースを凍らせたもので、どうしてそんなものがエネルギーになるのか分からなかった。アメリカでアイスクリームというのは乳脂肪分が8㌫以上あるものを言う。日本でも食品表示をきちんとしようということになり、基準がこの頃から整備されていった。
    通勤ラッシュ時、学生アルバイトがあって、ドアごとに尻押し係と剥ぎ取る係りがいた。
    会社にはクーラーがあるが家にはクーラーがないので、社員は遅くまで会社に残った結果猛烈社員に。
    スターリンは本名ではない。
    スターリンは背が低いことがコンプレックスで、ヤルタ会談でもひときわ背の高い椅子に座っている。

  • あんまり学校でも習わず、よく知らなかった戦後の経済史をしっかり学べる本。日本だけでなく、社会主義など世界の経済の歴史もよく分かります。

    日本は、高度経済成長やバブル経済で、環境問題や融資のやりすぎなど、後々大問題となったこともありました。また、中国・ソ連など、社会主義国家は、生産性低下や大飢饉など、いろいろな問題が噴出しました。そのような失敗談をそのまま語ったり、批判したりするだけでなく、そこから学べる教訓や生かせることなども、同時に話されており、池上さんらしい解説で、学びが深まった感じがしました。

    今までの経済学は合理的にしか考えていませんでしたが、実際は人間の心理までしっかり考えないと、成功しないことを感じました。


  • 「経済学」ではありながらも歴史についても知ることができる。歴史を知ることで経済も知ることができる。

    知っているのは名ばかりで、なぜそれが起こったのか、その影響でどんなことが起きたのか、正直「えっと...」と詰まってしまうことばかり。
    池上さんならではの、噛み砕いた内容で、理解しやすい。

    失敗を繰り返しながら、今がある。

著者プロフィール

池上彰(いけがみ・あきら):1950年長野県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、73年にNHK入局。記者やキャスターを歴任する。2005年にNHKを退職して以降、フリージャーナリストとしてテレビ、新聞、雑誌、書籍、YouTubeなど幅広いメディアで活躍中。名城大学教授、東京工業大学特命教授を務め、現在9つの大学で教鞭を執る。著書に『池上彰の憲法入門』『「見えざる手」が経済を動かす』『お金で世界が見えてくる』『池上彰と現代の名著を読む』(以上、筑摩書房)、『世界を変えた10冊の本』『池上彰の「世界そこからですか!?」』(以上、文藝春秋)ほか、多数。

「2023年 『世界を動かした名演説』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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