孤島の鬼 江戸川乱歩ベストセレクション(7) (角川ホラー文庫 え 1-7 江戸川乱歩ベストセレクション 7)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041053348

感想・レビュー・書評

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  •  大学を卒業し、味気ないオフィス勤めを送っていた箕浦は、見習いタイピストとしてやってきた初代にたちまち魅了されてしまう。内気な箕浦だが、いつしか2人は打ち解け、結婚を約束する仲に。
     しかし、不思議な身の上話を持つ彼女は、次第に怯えた日々を送るようになり、突然この世を去ってしまう。箕浦は涙にくれながら復讐を誓い、彼女の命を奪った犯人を突き止めるべく動き出す……。

     江戸末期から明治、大正という時代背景もあって、今では、到底使われない表現に戸惑うけれど、ミステリーでありながら多くの要素を盛り込んだ冒険小説は、連載当時多くの人にワクワクと読まれたことだろうと思います。特に終盤、主人公たちが窮地に陥ってからの展開からは一気読みでした。

  • 密室殺人、衆人環視の中での殺人、二人の探偵役、謎めいた屋敷…とミステリらしい語句を並べてみたが、もう、読後は諸戸道雄可哀想に尽きる。
    あれだけ尽くしているのに、箕浦の冷たい所業。
    諸戸の気持ちを知っているから都合の良い時に頼るだけ頼って、でもやっぱり受け入れられない、尊敬してるし友達としてなら平気だけど、愛情は無理って。一般的な感情なのだろうけれど、諸戸に同情してしまう。

  • お話の結び方がとても好きです。
    最後の章の題が「大団円」で、皆が幸せになれるのかと思いきや諸戸さんが…。
    特に彼には幸せな人生を歩んでもらいたかったのですが、この結末だからこそ良い、とも思える物語でした。


  • 主人公の自分語りから始まる本書は、読み始めてすぐに乱歩の世界に入り込んでしまった。

    同性愛と障がい者がテーマのミステリーで、後半点と点が繋がっていく様は、読んでいてワクワクし、時に息が詰まりそうになった。
    タイトルや表紙の意味が分かった時は気持ちが良く、芋虫や人間椅子が有名であるが、個人的に乱歩の中で1番面白いと思った。


    【以下ネタバレ含む】
    乱歩が描く恋は、どれも純粋で激しく、今で言う重いものだと思う。
    主人公が亡くなった初代の骨の灰を飲み込んだり、主人公に想いを寄せる諸戸の言動など。
    人を愛するが故に、理性が飛び、狂い、時に人を大きく変える。
    その描写が濃く描かれ、ミステリーの謎解き以上に惹かれるのだ。
    諸戸の父の過去や怨念による事件の意味など、想像以上の展開で読み応えがあった。
    障がい者製造など恐ろしい考えであり、解説にも記載があった通り、昔他国で似たようなことが実際あったことに、ゾッとした。

  • 「傴僂」という今はもう使われなくなった言葉が、この物語の不気味、異常さ感じた。

  • 主人公の美青年と美少女が恋に落ちるのはまぁ普通のことだし良く分かる。しかし、そこにさらに美青年が美青年に恋をしてぐるぐるした人間関係と、密室殺人などが絡んできた。もう一人の同性愛者で美青年の諸戸道雄さんが可哀想でした。これで年末の読書会番組にそなえられた感じで楽しみです!!

  • 主役かと思っていた探偵が突然死ぬところから謎解きが始まる。江戸川乱歩は少年団・冒険譚の話が中心かと思っていたが、同性愛や障害者を生々しく描く。ほのおどろおどろしさから、読めない漢字も何となく読めてしまう。

  • 江戸川乱歩の傑作集が気に入ったので他の作品も、と思い購入。傑作集の、人物心情描写巧みな推理ものとは一線を書くものを読んでみた。
    現在ではこのような話は出版できないだろう。主人公簑浦の婚約者が殺害され、謎を解いていくところまではよくある話。簑浦に対する同性愛的な恋情を抱く諸戸の登場。自らに対して非道な行いをした者への恨みとして健常者を撲滅する目的で奇形の者を人工的に産み出す諸戸の「父親」、それを金儲けではなく自らの悲願として地に手をついて息子に協力を頼むところが個人的に一番ゾッとした。
    読んでいくとゾッとする中で、諸戸の簑浦に対する恋情とそれを知ってて振り回している❨ようにしか見えない❩簑浦のやりとりの一種の耽美性と歪みとがとても際立つ。その意味もあり、読後はぼーっとしてしまい、普段自分は同じ本を続けて二度読むことはないが、2回目をじっくり読むほどであった。

  • おそらく高校生頃から読もう読もうと思ってずっと読んでいなかった本。
    その間に漫画も3種類かな?でて全て手に入れて2作読んでからとうとう読んでみた。さすがに何種類も読んでると漫画化にあたって削られた部分も違う作家さんによって補い合われていてそこまで発見はなかったがそれでもなるほどそういうことかと思う部分もなくはない。親方が諸戸の両親の実の息子だとか。
    あと漫画でもどう解釈していいのかわからなかった君の頭、真っ白だよ。の部分の道雄の笑顔。「道雄はそういって妙な笑い方をした。それが私には泣いているように見えた。」の文が印象的。面白がってる笑顔でもなく悲しんだ顔をするわけでもなくこの笑顔はなんだろうと思っていた部分。文で読んでもはっきりとはわからなかったのだけどあの絵は泣いているような笑顔を表したのね、と。これは漫画を読んでいなかったらさらっと読み流してしまったかも。
    初めて原作を読む江戸川乱歩。ちょっと見慣れずに読めない漢字がでてくるものの文章自体は想像以上に読みやすかった。面白かったー

  • 星4だけど5にしたいくらい良い
    すごい小説に出会ってしまった
    江戸川乱歩好きだわ

著者プロフィール

1894(明治27)—1965(昭和40)。三重県名張町出身。本名は平井太郎。
大正から昭和にかけて活躍。主に推理小説を得意とし、日本の探偵小説界に多大な影響を与えた。
あの有名な怪人二十面相や明智小五郎も乱歩が生みだしたキャラクターである。
主な小説に『陰獣』『押絵と旅する男』、評論に『幻影城』などがある。

「2023年 『江戸川乱歩 大活字本シリーズ 全巻セット』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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