ラプラスの魔女 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 14104
感想 : 708
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  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041054932

感想・レビュー・書評

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  • 温泉地で発生した中毒事故の隠された秘密とは… 現代に魔法使いは存在するのか? #ラプラスの魔女

    ■あらすじ
    温泉地で発生した硫化水素中毒事故。刑事と研究者は事件性を検証するために現場に訪れるが、人的な操作は不可能と判断される。
    時がたった別の日、遠くはなれた別の場所でも、同様の中毒事故が発生した。研究者がその現場を訪ねると、以前の現場でも見かけた少女と出会って…

    ■きっと読みたくなるレビュー
    人と人の絆、丁寧で絵になるプロットなど、いつもの東野先生らしい作品で安心して楽しめました。

    まずね、円華が可愛い。彼女の存在が本作の肝ですね。
    過去の背景から守ってあげなきゃと思うんですが、ところがどっこい謎めいている。でも気丈で責任感の強さは伝わってくるから、悪者じゃない気がするんだけど… って感じで、惹きつけられちゃうんですよね。

    しかし真相を知ると、彼女の背負っているものが分かる。私なんかは何もしてあげられないんだろうな~、という切なくもやるせない気持ちになりました。

    本作の一番の読みどころは、事件が起きた背景、動機。
    中盤までは霧の中で、どういう話なのか全く見えないのですが、物語の終盤になると見えてきます。巻き込まれた関係者たちは確かに可哀そうでなりませんが、私はなにより犯人が不憫でならない。

    人生の生きる喜び、やる気の根源、命をも犠牲にもできる唯一無二の想い…
    こんな大切なものを奪うのは、神様もこんな罰を与えないで欲しい。

    一生懸命に人生を生きていても、ひとりひとりでは大したことは何もできない。でもこの感情があるからこそ、人は団結ができるし、成長もできるし、変化ももたらすのです。あらためて大切なこの想いを、忘れずにいたいと思いました。

    ■きっと共感できる書評
    超常現象の謎について、とても興味深かった。現代の科学なら近い将来に実現しそうな話です。ChatGPTなど、現代もなお新しい技術が生み出されています。

    まさに魔法のように。

    ただ新しい技術がでてくると、本作のようにまず最初に悪いことに利用されてしまう。最たるものは軍事利用で、ドローン兵器なんてものは、今やあたりまえにニュースで報道される。

    魔法は未来のある子供たちに夢を見せるために使ってほしい。そして世界中のどこだろうが、誰だろうが、子どもから未来は奪うのはやめてほしいですね。

  • 東野圭吾作品は、本当にストーリーのバリエーションが豊富だ。今回の作品も様々な事象が絡み合っていて、一つに繋がった時はスッキリだった。面白かったが、円華と謙人の人間性について、もっと知りたかったし、2人の関係性をもっともっと表現して欲しかった。自身の入り込み度合いがやや浅だったので星3つ。

  • 少し読み始めた所で、白夜行に幻夜という続編がある事を知り合いに聞いて気持ちを抑えながら読みました笑。

    タイトルと表紙で手に取り、真相が明らかになっていくのを楽しんで読み進められました。
    ドラマやアニメ化しやすそうなストーリーに感じた反面、超人的な二人が起こす事はやはり現実離れしている為納得できる内容ではなかった。トリックがないとなると自分の中に膨らんだ推理や想像は意味なくなってしまう…

    子供が読むのに大人な描写が少ないのもいいなと思ってましたが、後半に少しだけありましたね笑。

  • 東野圭吾さんらしい理系ミステリー。
    先の展開はよみやすいけど、主人公の青少年が魅力的だった。
    巻き込まれて振り回されている青江教授も好印象だった。
    誰も誰かに干渉せずに生きてはいけない。物理学的には絶対に。
    そこからの、生まれてこなければよかった、なんて人はいない、という話の流れがよかった。

  • 遠く離れた2つの温泉地で硫化水素による死亡事故が起きた。ふたりの被害者に共通点はあるのか。調査のため地球化学の研究者・青江が現地を訪れると、そこにはいつも不思議な少女円華がいた。彼女は何者…

    夫殺しを疑われる水城千佐都、この世で最も大切なもの家族を失った甘粕才生、甘粕才生が書いたブログ、植物状態になったが奇跡的に回復した甘粕謙人、怪しげな「数理学研究所」、予言と予測、ラプラスの悪魔、ラプラスの魔女になりたかった円華…。
    これらが少しずつ繋がって、不思議な現象の謎が解けていく。

    ちょっと切ない話だったな。ずっと孤独だった。これからどうなるのだろう。この世界の未来もどうなるのだろう。

    もっと難しい作品かと思ったけど、そんな事は全然なく読みやすくて面白かった。
    ただ、青江先生の活躍と推理を期待していたのだけど、そこは想像と違ったな。「(こんな現象は)ありえない」とは言うけど、その後、数式を書き始めたりはしない(笑)
    ずっとしつこく「真実を教えてくれ」と言う役割だった。
    翔ちゃんにあってる気もするけど、映画ではもっとカッコよく変えてくるのだろうか?一応翔ちゃんが主演だし。

  • 東野作品は1年ぶり。この作品のキーワードは、硫化水素中毒死 ✕ 超脳力(勝手な造語) ✕ 復讐。

    2つの温泉地で起きた、火山ガス中毒死。警察は事故死として処理したが、可能性の低い極めてレアな事故だった。事故に不可解さを感じた青江(地球化学を研究する大学教授)は、2つの事故現場で事故のことを調べている少女と遭遇し、少女との接触を通じて事件へ引き込まれていく。

    「ラプラスの悪魔」とは、「この世に存在するすべての原子の現在位置と運動量を把握する知性が存在するならば、その存在は、物理学を用いることでこれらの原子の時間的変化を計算できるだろうから、未来の状態がどうなるかを完全に予測できる」存在のこと。

    そして本作のキモは、AIを遥かに凌駕する未来予測を瞬時に行うことができる超脳力の存在。現実的でない漫画チックな設定だが、超能力でないところがミソだな。

    娯楽作品として楽しめた。

    羽原教授のセリフ「人間の養育行動、男性についていえば父性行動にしても、結局のところ遺伝的にプログラミングされたものなのです。そしてそのプログラムのことを便宜上、愛情と呼んでいるにすぎないのです。」にドキッとした。

  • 空想科学ミステリー
    理系ミステリーは得意ではないですが、読みやすく面白かったです。

    甘粕才生のブログに隠された嘘…
    物語の後半、一つ一つ丁寧に伏線回収していく様子にワクワクしました。

    円華と謙人の関係を凡庸な恋愛関係にしなかった所も、流石は東野圭吾さんの作品だと感じました。

  • 面白かった
    桜井翔、広瀬すず、福士蒼汰で映画化された物語!
    東野圭吾得意のSFミステリー

    温泉地で硫化水素中毒による死亡事故が発生。
    地球科学者の青江が事故現場で検証していたところに円華にであいます。
    そして、2か月後、別の温泉地でも同じ死亡事故が発生。
    同様に、調査のため、訪れた青江は、ここでも円華と会うことに。

    事故なのか?殺人なのか?
    円華が持つ不思議な力
    円華と事件の関係は?
    そして、事件の真相は?
    といった展開。
    そこには、哀しい復讐劇がありました。

    警察の動き含めてご都合主義的な展開だったりしますが、エンターテイメントとしては、存分に楽しめます!

    正直、広瀬すず、福士蒼汰は配役はイメージどおりだと思いますが、桜井翔が青江ってなんとなくイメージが違う(笑)

    とはいえ、映画も本作も十分楽しめました。
    おすすめ!

  • 本作設定の2人の特殊能力について序盤から匂わせ、そこからかなり説明してくれているのでその先のトリックなどに拒絶せず世界観に溶け込めて読めたと思う。

    難しすぎず簡単すぎず、後半はよりスルスルと読めたので流石東野圭吾さん

  • 読みやすくて面白い。この安定感は東野さんならではですね。

    とある温泉地で硫化水素中毒による死亡事故が発生し、さらに2ヶ月後にも遠く離れた別の温泉地でも、同じ中毒事故が起こります。
    この二つの事故は関連しているのでしょうか。あるいは、これらは“人為的”なものなのでしょうか・・・。
    登場人物達それぞれの言動から、手がかりがいい塩梅に小出しにされていくので、飽きずに読み進めていくことができます。
    途中、ブログの部分が少し冗長でクドいかな・・と思ったのですが、このブログもクセモノでしたね。
    それにしても、先天性の狂気というのは、どうしようもないのでしょうか。こういう人とは、お近づきにはなりたくないものです。
    ラストは、ちょっとうやむやだったかな。と思わないでもないですが、まあ、ここが落としどころなのかもしれません。
    そして、“若者二人”の能力(物理法則からの未来予知のようなもの)の源になった説を唱えたのが数学者・ラプラスとの事で、タイトルはここからきているのですが、人間の脳というのは本当に計り知れない奥深さがあるのですね。
    この作品の“前日譚”『魔力の胎動』も読んでみたいと思いました。

著者プロフィール

1958年、大阪府生まれ。大阪府立大学電気工学科卒業後、生産技術エンジニアとして会社勤めの傍ら、ミステリーを執筆。1985年『放課後』(講談社文庫)で第31回江戸川乱歩賞を受賞、専業作家に。1999年『秘密』(文春文庫)で第52回日本推理作家協会賞、2006年『容疑者χの献身』(文春文庫)で第134回直木賞、第6回本格ミステリ大賞、2012年『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(角川書店)で第7回中央公論文芸賞、2013年『夢幻花』(PHP研究所)で第26回柴田錬三郎賞、2014年『祈りの幕が下りる時』で第48回吉川英治文学賞を受賞。

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