カラヴィンカ (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 46
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041061688

感想・レビュー・書評

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  • まるで昭和初期を舞台にしたような過去話とドロドロの人間関係が、読んでいて鬱な気分にさせてくれます。重苦しくて、晴れ晴れとした気持ちになる内容ではないのですが、じっくりと一言一句漏らさずに読み通したいと思わせる求心力にも似た力を作品から感じ、没頭して読んでいました。

    序盤、不動の死の原因とされている実菓子の存在とその態度に、多聞と同じく彼女に対する苛立ちを覚えました。しかし過去の話を読み進めていくと、虐待に起因する「自分に対する興味のなさ」に基づく一連の言動なのかと思い、少しずつ印象が変わっていきました。

    多聞も名家の次男坊(かつ、終盤で明らかになるある要因から?)のため、兄の影で存在をないがしろにされながら成長していました。実菓子とは憎み合っていましたが、私から見れば似た者同士のようにも思えます。

    また、実菓子は母音のみで歌い上げるヴォカリーズの歌い手という設定ですが、これは過去に助けを呼びたい時に「あーあーあーで良いから(叫べ)」と言われたことが何か関係しているのでしょうか。

    ヴォカリーズの収録時、そばにいる多聞に対してずっと「助けて」と叫んでいた? あるいは、偏見なく普通の女の子として私を見て欲しいという叫び?

    こうした、節々の設定から人物の思いや関係性の想像が止まらなくなる(解釈が正しいかは別としてですが(汗))のが、遠田潤子作品の魅力の一つと(あくまで個人的にですが)思っています。本作は今まで読んだ中で一番その妄想が掻き立てられ、最も興味深く読むことができた作品でした。

    ただ、ごんぎつねが多聞と実菓子の関係を暗喩している点は……それを連想させる結末はあまり心に響きませんでした。けれど、実菓子にとって多聞と音楽を綴ったことが「バケツ」ではなく「人」として生きている実感が得られた唯一の時間で、多聞のギターがその象徴だったのかも? と思うと、多聞のギターを買い戻していたという行動がとても感動的なものに思えてきます。

    ハッピーエンドというには多聞と実菓子はあまりに多くのものを失いすぎましたが、ゼロからのリスタートを予感させられるラストは、あとがきにもありますが清々しさを感じました。最後の二人の姿が「雪の鉄樹」のラストシーンと重なり、それを読んだ時の気持ちも思い出し、一層感慨深い心境になりました。

  • 不動、多聞、実菓子の新たな真実が次々と判明していく。なぜなぜが読み進めていくうちに判明していく。伏線回収のうまさが際立った小説だつなあ。

  • すさまじい。

  • 重層的に入り組み、要約するのも簡単ではない悲劇に、慈しみ合っている多聞・不動・実菓子の三人翻弄されて、傷つけ合うことになるのは、いつもの通り。けれども敵役からの非難されるのだが、この三人、ホントに自分たちだけで完結していて、いい意味でも悪い意味でも、他人に興味がない。抜き差しならない悲劇は、実は彼らの外側で展開していたりする。

  • 歌詞のない旋律を母音のみで歌う歌手・実菓子の自伝インタビューに指名された青鹿多聞。二人の繋がりは哀しくも壮絶な過去にあった。徐々に明らかになる真実が解き明かされた時、新たな事件が起こる。
    ちょうど映画の横溝正史・金田一耕助シリーズを再見していたので、本作の没落した旧家の雰囲気や因習、呪われた血の因縁やタブー等の雰囲気にはまった。ただし、登場人物全員に感情移入出来ないのは、読み進めるのが辛い。

  • まんま解説のとおり、読まされてしまった。
    遠田作品は重くてしんどくなるので、ここのところ敬遠してたけど、何故かまた読んでしまった。笑
    やっぱり重くてしんどい話だったけど、あれよあれよと読まされて、なんだかんだで今後も気になる作家さんの一人だなと。
    ごんぎつね、何十年ぶりかに思い出したらせつなくなった。

  • 旧家特有の深い闇を表すかのような歪な家族のカタチを描いた本作は目を覆いたくなるぐらいのキツさでしたがぐいぐいと引き込まれていく自分を抑えきれませんでした。後半からの伏線回収はまるで寄木細工のようで綺麗に騙されましたが悪い気はしませんでした。

  • なんか最後、強引にいい話になった感じで。うーん。

  • ドロドロな人間関係...

  • もっと話し合えよ〜!とか、もっと外部が適切に介入しろよ〜!と言いたくなる。暗いので、元気がないときには読まないほうがいい。

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著者プロフィール

遠田潤子
1966年大阪府生まれ。2009年「月桃夜」で第21回日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。16年『雪の鉄樹』が「本の雑誌が選ぶ2016年度文庫ベスト10」第1位、2017年『オブリヴィオン』が「本の雑誌が選ぶ2017年度ベスト10」第1位、『冬雷』が第1回未来屋小説大賞を受賞。著書に『銀花の蔵』『人でなしの櫻』など。

「2022年 『イオカステの揺籃』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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