いくさの底

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 119
レビュー : 24
  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041061756

作品紹介・あらすじ

「そうです、賀川少尉を殺したのはわたしです」――ビルマ北部のある村に駐屯することになった日本人将校の突然の死。
いったい誰が、なんのために殺したのか?
皆目見当がつかず、兵士も住民も疑心暗鬼にかられるなか、のどかな村に人知れず渦巻く内紛や私怨が次第にあぶり出されていく。
戦争という所業が引き起こす村の分断、軍隊という組織に絡め取られる心理。
正体のあかされない殺人者の告白は、いつしか、思いもよらない地平にまで読者を連れ出す――
驚天動地、戦争ミステリの金字塔。

感想・レビュー・書評

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  • 戡定後のビルマの村に急拵えの警備隊として配属された賀川少尉一隊。駐屯当日の夜、何者かの手で賀川少尉に迷いのない一刀が振るわれる。彼はなぜ殺されねばならなかったのか。

    賀川少尉を殺したのは、ビルマの村の村民か、重慶軍か、日本軍の中にいるのか⁉︎ みな疑心暗鬼に。殺人者の告白に胸がしめつけられる。

    重慶軍は卑劣かつ怖ろしい。
    日本軍は非情かつ怖ろしい。
    戦争は人を狂わせる。戦争中にはこのような事がたくさんあったのだろうか。

    表紙の絵がいい。迷いのない一刀、殺人者の深い哀しみと怒りを表している。善ではないが悪でもないと思う。

    もっとドキドキハラハラかと思ったが、物語は殺人者の告白までは淡々と進み、何度も居眠りをしてしまった。久しぶりの古処誠二さん、戦争ものが好きな方は面白いと思います。

  •  『UNKNOWN』で第14回メフィスト賞を受賞し、ミステリ作家としてデビューした古処誠二さん。第4作『ルール』以降は戦争小説作家に転じ、現在に至る。もうミステリーを書くことはないのだろう。そう思っていた。

     新刊はやはり戦争小説だが、ミステリー的方法論を持ち込んでいる点が興味深い。もっとも、そのように言われるのは、古処さんには不本意かもしれないし、ご本人はミステリーを書いたつもりなどないのかもしれないが。

     第二次大戦中期の、ビルマの山岳地帯の村で、駐留する日本軍の青年将校が殺害された。元々日本軍を遠巻きに見ていた住民たち。それぞれの思惑により分断され、疑心暗鬼に陥る小さな村。日本軍としては、とにかく収拾を図らねばならない。

     連隊本部から副官が送り込まれる。戦死として処理せよという方針には、一読者である僕でも首を傾げざるを得ない。誤魔化し通せるものか。しかし、上層部の命令ならば、事実なのだ。それが軍隊という組織なのだから。

     乱暴に言ってしまえば、いわゆるフーダニット・ホワイダニット・ハウダニット、誰が・なぜ・どうやってという、ミステリの定番的テーマが焦点である。ただし、前線ではないとはいえ、この村が戦場の一部であることが前提になる。

     軍隊における価値観と、戦場における価値観。軍隊に身を置き、それらを解する者でなければ、辿り着けない真相だろう。静かな村の秘密とは。現代社会や日常の価値観でしか判断できない我々には、説明されてももやもやが残る。

     組織へのダメージを最小限にするという論理思考は、現代社会にも通じるだろう。目的のために、誰かを切り捨てるか、あるいは見て見ぬふりをするか。しかし、これはその場しのぎでしかない。組織の価値観を優先するあまり、このようなその場しのぎが繰り返されたのではないか。

     筆致はあくまで淡々としている。日常の価値観が通用しない、戦場という特殊な世界。本作に描かれたのは、そんな戦場の恐ろしさなのかもしれない。

  • このミス5位。不勉強なため、歴史的背景がよくわからず、その説明もほとんどないため、のめり込むことができなかった。

  • ビルマのある村で少尉が殺された。誰が、なぜか、戦場ミステリ。正直読みづらかったです。軍隊のことのせいか、それともオオマサ・コマサとか、どうもしっくりこなかったし。より戦争小説の色合いで書かれていたらよかったかな。淡々とした風ですが、日本軍、村人、華僑そして支那の複雑な関係、口を閉ざす人々の空気、最後の独白のところはよくかけていたかな。

  • この著者の作品はメフィスト賞後に戦争文学に移行してからはしばらく読んでいなかったが、今年の各種ランキング本の上位に入っていたので久々に読んでみた。
    第二次大戦時、ビルマの村に駐屯した日本軍の警備隊。村人は好意的に見えたが、警備隊の隊長が何者かに殺害される。犯人は隊員か、村人か、それとも侵入を企てる敵軍なのか…
    ノンフィクションのように淡々とした文章で描かれる戦地の息詰る緊張感、そして明らかになる哀しい真相。
    いますぐ生きるか死ぬかという悲惨な状況ではないように見えても戦争はいくつもの悲劇を生み出し、理不尽な死を引き起こす。ミステリとしても素晴らしいし、戦争について考えさせられる話だった。

  • 第二次世界大戦下のビルマの村を舞台としたミステリー。

    作者初読みです。
    ミステリーとしては、犯人の想定まではできると思いますが、動機となる真相はさすがにわからないでしょう。
    その点からはミステリー的戦争小説といえるかもしれません。
    戦時の不条理が人を変えて理不尽な行動に駆り立てるという問題提起をしていると思いました。

  • 戦時下のビルマの山奥で起こった小隊長殺害をめぐる物語。戦争物でありながらも、ミステリータッチな部分もあり興味深い。登場人物たちの細かな心の動きと、些細な行動の裏にある感情の推測がおもしろい。

  • ビルマでの日本軍の話。この辺りの歴史はおぼろ。

  • ミャンマーの村で駐屯していた将校が殺される。誰が手をくだしたのか。そして更なる犠牲者が…。
    きちんと伏線も張られたミステリ仕立て。

  • 全部理解できたか自信ない

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プロフィール

1970年、福岡県生まれ。2000年4月『UNKNOWN』でメフィスト賞でデビュー。資料精査の果てに、従来の戦記文学を超越した領域を切り開き続ける。2017年『いくさの底』で第71回毎日出版文化賞受賞。著書に『ルール』『接近』『七月七日』『遮断』『敵影』『メフェナーボウンのつどう道』『ふたつの枷』『ニンジアンエ』など。

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