- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041066584
作品紹介・あらすじ
検事を辞して弁護士に転身した佐方貞人のもとに殺人事件の弁護依頼が舞い込む。ホテルの密室で男女の痴情のもつれが引き起こした刺殺事件。現場の状況証拠などから被告人は有罪が濃厚とされていた。それにもかかわらず、佐方は弁護を引き受けた。「面白くなりそう」だから。佐方は法廷で若手敏腕検事・真生と対峙しながら事件の裏に隠された真相を手繰り寄せていく。やがて7年前に起きたある交通事故との関連が明らかになり……。
感想・レビュー・書評
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著者の作品は既に数冊拝読しているが、巷で噂の【佐方貞人】は短編集で垣間見た程度で、シリーズ作品としては初読。
検事vs弁護士の法廷ミステリーなのだが、結論凄まじく面白かった。久しぶりに気が散らず夢中になって読み入ってしまった。
ミステリー好き故に伏線の張り方や回収の魅せ方、トリックの巧妙さなど、私は作品ごとに感銘を受けるポイントは異なる。
しかしながら、これは全ジャンルを通し一貫して魅了される作品には、血が通い、肉が備わった人物が存在している(そう感じさせてくれている)こと。
本作品はミステリーとしても、ヒューマンドラマとしても、正に私のツボを貫き、見事に感情を連れていってくれた。
私は確かに感動した。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
★5カッコイイ! 男が惚れちゃう男、弁護士佐方貞人がスゴイ ど真ん中法廷ミステリーの傑作 #最後の証人
ヤメ検弁護士の主人公は、刑事弁護の依頼を受ける。ホテルでの殺害事件で証拠も決定的にもかかわらず、依頼者は無罪を訴えているのだ。相まみえる女性検事は大変優秀と評判、勝てる見込みはあるのか。
一方、かつて自動車死亡事故によって大切な少年を亡くしてしまった夫婦がいた…
見事な法廷ミステリーですね。こりゃ面白いです。
途中何度も読み返し、どうも違和感を覚えるなぁと思ってましたが、こうなりますか。終盤もやもやが綺麗に晴れ、ストレートに解決に導くストーリーは圧巻でした。
全部読んでみれば比較的シンプルなお話なんですが、さすがの柚月裕子さん、構成力、文章力は半端なく抜群ですね。ウマい!
そしていつもの通り男性を描くのがお上手。
一見さえないが、温情で切れ者。表には出さないが正義を胸に秘めた、シブイ弁護士。カッコイイ!惚れる、惚れちゃう。男が男に惚れるとはこのこと。
全登場人物がイキイキとしすぎ!
弁護士、検事、夫婦、刑事、容疑者、その他関係者すべてにおいて、情念と人間性が手に取るようにわかる。むしろ顔すら思い浮かんじゃう。わざとらしくなく会話や行動の中で、それと伝わってきます。
特にある二人の覚悟を決めた時の描写ですよ。それぞれ、魂の叫びが聞こえてきました。スゴかった…
お話としては、切ないですね。
自分自身にもふと起こりえる話で、子供をもつ親としては、自分ならどうするのか考えさせられました。方法は違うでしょうが、同様のことをするんだろうな。
本作は、基本書ですか?というほどガチンコ法廷ミステリーの傑作です。ミステリー好きで未読の方はとりあえず読めという作品、おすすめですっ -
これ!めっちゃ面白い!
なるほど、そう来るか〜!
こんな奴、有罪でええやん!っと思ってまう人であっても、真実に忠実に、真相を!
でも、やはり、碌なことしてないから、色々ある。
そもそも、この事件にしても、起こるべくして起こってるんやし。
まぁ、警察組織もやけど…
主人公で、弁護士の佐方さんは、昔はともかく今はうだつの上がらん感じやけど、腕は確かってとこが良い。
敏腕弁護士に見えんとこが。意外性って言うんですか。
これシリーズ化してる。
面白いし読も!
…既に、もう2冊あるという^^;
でも、時系列的には、これが後になるんやな… -
面白かった
自分好みのヒューマンミステリー
切ないエンディング
ストーリとしては、
交通事故で息子を亡くした夫婦。
しかし、事故の加害者は飲酒運転・信号無視ながらも起訴されることもなく、事故はなかったことに..
そして、7年経ったところで、偶然、その事故の加害者を見つけます。さらに加害者はその事故をもみ消した意識もあり..
夫婦はその加害者に復讐を考えます。
そして、起きたホテルでの刺殺事件。
被告人は状況証拠から明らかに有罪が濃厚。
しかし、そんな状態で佐方は弁護を引き受けます。
佐方と若手検事の真生の法廷での対決となります。
夫婦の復讐への想いと法廷での立証が交互に語られていきます。
そして、明らかになる真相
我々読者にはミスリードを誘う展開で、最後の最後はとても切ない。
こうしたヒューマンドラマはとても好き。
お勧め -
柚月裕子は、読めば読む程さらに読みたくなる作家さんだと思う。
「人間関係で一番強いものは、恋愛や友情ではない。同じ目的をもつ同志の絆だと思う」このフレーズで胸が熱くなった。
ラストは号泣した。大切な人への想いの深さが身に沁みた。
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今の時代、証人をいきなり召喚したり判決が180度覆ったりするようなどんでん返しは少ないので、久しぶりに夢中になって読みました。
時間の流れ的にたった3日間の出来事でちょっと話の出来過ぎ感は否めませんでしたが、エピローグでの小坂千尋の高瀬光治への言葉はとても良かったと思いました。高瀬が心を唯一動かされた瞬間を見ることができました。
”先生は、罪はまっとうに裁かれるべきだ、と言っています。光治さんも美津子さんも卓君も、まっとうに救われるべきです。”
”高瀬さんを本当に弁護出来るのは、全てを知っているうちの先生しかいません。”
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登場人物達の抱える黒い闇が重く悲しい話でした。罪が正しく裁かれることの大切さと、国民を守る警察が真っ当な組織である根底が揺るぐ恐ろしさを感じました。ずっと高瀬夫妻側で読み進めていきました。佐方弁護士の手腕ぶりの詳細がなかったので、佐方弁護士にフォーカスした話も読んでみたいです。
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一気に読めた。子供を急に亡くした両親の心情を思うと言葉に表せないほど辛い。どうにも覆せない状況の中で同志となった2人の決断した思いに感度する。シリーズ物ということなので他のも読んでみたい。
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文句なしの★★★★★です。
258頁の6行目からの台詞は余りに重くて深い言葉でした。
先に検事の本懐を読んでいましたが、どちらとも心に残る作品になりました。
あと、主人公の佐方が何処と無く、横山秀夫の臨場の倉石検視官に重なる気がしました。