蟻の菜園 ‐アントガーデン‐ (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041066614

作品紹介・あらすじ

結婚詐欺容疑で介護士の冬香が逮捕された。婚活サイトで知り合った複数の男性が亡くなっていたのだ。美貌の冬香に関心を抱いとたライターの由美が事件を追うと、冬香の意外な過去素顔が明らかになり……。

感想・レビュー・書評

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  • なんとも、不幸がてんこ盛りの作品

    結婚詐欺で逮捕された美人介護士の遠藤冬香。
    しかし冬香は容疑を否認。アリバイも完璧。
    そんな冬香の人物像を掘り下げようとフリーライターの由美が事件を追い始めます。

    由美をバックアップするのが、新聞記者の片芝。
    片芝の薫陶を得ながら、由美は事件の真相を追っていきます。
    冬香の過去を追っていくと、そこには30年前のある事件が。
    現在と過去の話が交互に語られていきます。
    そこから浮き彫りになる冬香、そして、その姉妹の壮絶な過去。
    読んでて辛い。

    そして、途中から「あなた」と語りかける謎の人物。

    明らかになる事件の真相!
    これまた、辛く哀しい物語でした。

  • 何か現実世界でも、こんな事件あったな。それを土台にしてるんかな?
    こんな酷い過去のある姉妹には、同情はしたくなる。しかし、最近も幼児虐待とか良くニュースでやってるから、現実にも深刻な問題…

    まぁ、父親の件は、仕方なしとして、後は何の関係もない人を結婚詐欺&殺人は、あかん。(父親の件も心情はそうやけどダメです〜!)
    さすが柚月さん!もう途中から一気読みでした!

    こんな共依存関係にある姉妹は、辛くても関係は断ち切らなあかんのやろな。
    「一見、助け合っているように見えるが、現実はそうじゃない。共倒れの坂を転がり落ちているだけだ」(文中より)

    これからは、偽りの名前やなく、本当の名前で独り立ちできる事を祈ってます〜

  • 読み終えて西上心太氏の解説の中に「松本清張の『砂の器』へのオマージュが濃いと思った…」との一文に、やはりそう感じた読者は多いかもしれないと改めて思った。北陸訛りと日本海側特有の冬の情景が目に浮かんだ。
    私達は報道を見てそれらの情報だけで解った気になっているが実はそれは氷山の一角でしかないのかも知れない。
    不幸な境遇にある子供達を救うてだてが、今尚確立されていなく悲しい事件が後を絶たない事に苛立ちを覚える。

  • あまりにも色々なことがありすぎた。連続不審死事件、結婚詐欺師、無戸籍児、児童虐待(性虐待)、アルコール依存、共依存、戸籍改ざんこれだけでも十分なのに、ギャンブル(パチンコ)依存に人格障害って。頭が疲れた、重い。
    次は何?くらいの興味で読んでいないと落ち込む。特に性虐待のとこは辛かった。昔は、そういうことが珍しくなかったという部分も。
    四章からは「あなたは・・」と語りかける二人称で描かれている。呼んでいるのは誰?それにつられ(こたえを知りたくて)どんどん読みにはまってゆく。絡みあった糸が解けていくような、パズルがするするはまっていくような、読ませられ感がすごいと思った。
    貧困から父親(母親は亡くなった)から虐待を受け、戸籍も無く学校にも行っていない早紀と冬香の姉妹。
    役場の与野井は、東尋坊の「命の電話」に助けを求めて電話してきた早紀を救う。戸籍を改ざんして別人に仕立て上げ遠くの施設に送った。が、残された冬香はアルコール依存症の父親と壮絶な日々を過ごすことになる。
    老年、与野井は認知症になるのだが、早紀の幸せのためとはいえ、法を犯したことへの、良心の呵責に苦しみ続ける。しかも二人は複数の男に手をかけ殺めてしまった。
    いつまでも心に引っかかる、というものは気持ちの悪いもので、正直に生きなくちゃだめだと思った。いまさらだが。
    いくら毒親に酷い目に合わされようが、人を殺めてはいけない。どうしたら二人を救えたか、がテーマになっているが、一番親から愛されるべき時期に虐待を受けると、難しい。なんらかのサポートを受けないと。

    一見美人姉妹が怖い。冬香は旦那がいる身で婚活サイトに登録し複数男性と付き合ったとは。そのような時間、労力あるんだすごいな(と妙な所に感心する)。

    学校に行ってないって子がいるって、どこかでずっと前に聞いた気もするが、そうなんだとしか言えない。

  • 雑誌のフリーライターでも警察官でも弁護士でも検事でも、事件の調べ方はあまり変わらないな、とか少しおもいつつも、この人の話の運び方や発想が好きなので楽しめる 解説にもあったが、昭和の香りがする たしかにそうだ そういう香りに私は惹かれているのかもしれない

  • 婚活サイトを舞台とし結婚詐欺容疑で美人介護士・円藤冬香が逮捕された。そして彼女と知り合った男性は相次いで死亡していた。彼女は容疑を否認、アリバイも完璧だった。 フリーライターの今林由美は冬香の過去を辿って行く。
    円藤冬香には姉がいて、姉の名前は堀越早紀だったが、今は円藤冬香と名乗っている。婚活サイトで円藤冬香と名乗っていたのは実は江田知代で、昔は堀越冬香で早紀の妹で…と、途中で頭がこんがらがりそうになりました。
    どちらも美人で、側から見れば何の不自由もなさそうに見えますが、実は過去に壮絶な人生を歩んでいます。特に父親である剛からレイプされるシーンは読み進めるのが辛かったです。
    与野井や古森美幸などの周りの人の助けも報われず、普通の人生を歩むことができなかった姉妹。
    出所後は、今度こそ人生をやり直せるといいと思います。

  • 結末が気になってどんどん読めた。おもしろかった。
    けど読後の真新しさは特になくて、どこかで読んだことあるようなつらい話だったかな。

    展開も早くてほぼ1日で読了。2時間ドラマになりそうです。
    結婚詐欺というワードに惹かれて手に取ったけど、そこは物語の核ではなかった。たまたまターゲット探しに使ったのが結婚詐欺だっただけ。

  • すいすい読めたけど、最後のドトールのシーンが気になった。片芝と最初に会ったのも最後のドトール。その時は片芝の分のコーヒーを買いにカウンターへ由美が行っている。それなのに、最後片芝と海谷と三人でのドトール、由美が先に失礼しますと席を立つ時、なぜ自分の分のコーヒー代をテーブルに置いたのだろうか?先に片芝たちが由美の分のコーヒーを買っといてくれた?それは考えにくくないかな〜って。そこだけ気になってしまった。

  • 虐待されてる子どもたちは、心に深い傷を抱えたままやがて大人に成長する。
    昨今、不幸にも子どものまま命を奪われる痛ましい事件も少なくない。
    助けようとした大人たちも助けられず悔恨の念を引き摺っている。
    二章の東尋坊のシーンはこの小説の大事なところと思う。

  • 読後は決して爽やかではない。しかしイヤミスではない。読むだけで胸が苦しくなるような悲劇の実態を描いた作品だ。

    タイトルになっている「蟻の菜園」は共依存を表現したものだが、この作品の悲劇の根幹はそれではなく、胸糞が悪くなるような児童虐待だ。最近、巷間を賑わせているJ事務所の問題も児童虐待だが、この手の話は被害者が名乗り出ないと表沙汰にならないにも関わらず、被害者からの告発がないケースが多いようだ(J事務所の件はずっと以前から声をあげた人々がいたがマスコミが無視をしたという最悪のケースだが)。被害者が名乗り出ずに忍耐を続けているが故に虐待がエスカレートしていく。事案は違えど共通の構図だ。

    世の中から少しでも児童虐待を減らすために私たちが出来ることは何だろうか。
    多分そんな大袈裟なことではなく、知人や隣人にもう少しだけ関心を持つ。それが第一歩のように思う。
    柚月裕子は昭和の雰囲気を持つキャラクターを描くのが上手いが、古き良き昭和のような周囲とのコミュニケーションこそが、悲劇を減らす切っ掛けだと作者は感じているのかもしれない。

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著者プロフィール

1968年岩手県生まれ。2008年「臨床真理」で第7回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、デビュー。13年『検事の本懐』で第15回大藪春彦賞、16年『孤狼の血』で第69回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞。同作は白石和彌監督により、18年に役所広司主演で映画化された。18年『盤上の向日葵』で〈2018年本屋大賞〉2位となる。他の著作に『検事の信義』『月下のサクラ』『ミカエルの鼓動』『チョウセンアサガオ咲く夏』など。近著は『教誨』。

「2023年 『合理的にあり得ない2 上水流涼子の究明』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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