鹿の王 水底の橋

著者 :
  • KADOKAWA
4.12
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  • Amazon.co.jp ・本 (424ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041071182

感想・レビュー・書評

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  • 鹿の王本編に続きこちらを読みましたが、物語としては一番「絵」が浮かぶ内容で、良い展開、終わり方でした。

    読み終わった後、現代医療とホスピスの関係を考えずにはいられませんし、自分の人生、家族の人生を考えずにはいられません。色々な想いが込められ、溢れる作品です。

  • 鹿の王からかなり時間が空いているので登場人物の関係性や前提とされている背景が中々思い出せず、前作を読み直してから読んだ方が良かったなと。後はメインテーマは何だ?って思いながら読んでたら読み終わってしまって、結局クライマックスはなんだったのかはっきりせず、上橋作品としては盛り上がりや物語の緩急に欠ける様に感じました。

  • 鹿の王の続編。
    しかし本当に児童書か?と思う。
    いくら医学関係のお話で、直前に「著(いちじる)しい効果」とふりがなつきで説明してるとは言え直後の台詞が「~が著効して」(ふりがななし!)ですよ。
    そんでもって主人公ホッサル(血筋の良い貴人の若旦那)と恋人ミラル(平民)の身分差から「愛人」なんて言葉がぽんぽんと……
    タイトルはミラルの父親がかつて見たことのある印象的な橋から来ていますが、そのシーンは何気ないワンシーンなのに、後からこの物語の背景がぐぐっと読者の中で重なってきて上手い。
    お手軽文章タイトルラノベには真似できない(ま、する必要がないんだけど)余韻の深め方。
    影山徹さんのイラストも良い。

    装画 / 影山 徹
    装丁 / 坂川 栄治+鳴田 小夜子(坂川事務所)
    地図デザイン / 大原 由衣

  • やっと読めました!
    鹿の王の世界の続編!続編と言っても登場人物の焦点はヴァンではなく、前回は助演くらいのホッサルたち一行。

    ホッサルとミラルが落ち着くところに落ち着いて良かった。二人を見守るマコウカンの目線が好きです。読者も同じ気持ちですよ〜
    守り人シリーズのバルサとタンダもですが、こうあるべき2人、みたいな関係がすごく好きです。羨ましい限りです。

    清心教医術の源流が明らかになり、二人も医術の在り方、向き合い方を考えさせられる。
    今の知識に固執せず純粋に人を治すことを考えて動けるミラルはすごい。ホッサルも引かれるし、周りの人々も心を動かされる理由がわかります。
    欲のない人は強いな。

    タイトルにもある水底の橋についてミラルの父・ラハルが語っていたけれど、表に出ずに繋がっているそれはホッサルとミラルの関係か、清心教医術と花部の医術か、渦巻く思惑か、物語の中のいろんなものを示唆しているように感じた。

  • 『鹿の王』は、致死率のとても高い感染症に罹患しながら症状もなく回復した男・ヴァンと、その病の撲滅のために尽力する医師・ホッサルの二人を書いた話であるが、『鹿の王』という言葉の意味する、人々を救うために還ることのない旅に出たヴァンが話の中心になるのはいかんともしがたい。
    今作は、医師・ホッサルの物語である。

    ホッサルは医師として患者を治すことにかけては当代一のリムエッルの孫であり、正統な後継者。
    ホッサルの出身地オタワルは、東乎瑠(ツオル)帝国に征服された国だが、医療をはじめ技術や技能でかの地に存在感を示している。

    東乎瑠の皇帝は、后をリムエッルとホッサルの治療により命を助けられたとして、オタワルの医療に信頼を寄せる。
    病気の原因をさぐり、症状を見極め、薬を処方する。
    きわめて科学的だ。

    対して東乎瑠の国で正式に認められているのは、清心教医術。
    心身の穢れを祓い、ある程度の治療で完治が望めない時は、心穏やかに天の国へ向かえるように促す。

    この相反する医術が、次期皇帝争いと深くかかわってしまったために窮地に陥るホッサル。
    ホッサルが納得できないのは、穢れが厭うため身体に異物を混入することを嫌い、輸血や動物由来の薬を使用するくらいなら死を選ぶ清心教医術の姿勢だ。
    手を尽くせば助かる命を、何故諦める?

    ”人ってのは、良い言い訳が見つかると逃げたくなる生き物だ。それでいて、逃げることは後ろめたいもんだから、いつの間にか言い訳を鉄壁の理屈に祭り上げちまう。”

    しかし信仰は理屈ではない。
    神の国へ行けないという恐怖が、よりよく生きることを妨げるのなら、それは心穏やかに死なせるのが正しいという宗教を背負った医術。

    医のオタワル医術と仁の清心教医術。

    副題の「水底の橋」というのは、この舞台にある古く朽ちて水底に沈んでいる橋のことだが、普段目にすることがないからといって無いわけではない。
    橋は確かに存在する。
    そして、その橋を使って行き来していた過去も確かにあったものだ。

    ホッサルは、最後に言う。
    「中途半端に、ふたつの医術を統合する必要はないように思うのです。むしろ、互いが、互いにとって、思ってもみなかった視点を持ち続ける方がずっと意味があるように思います。」
    ふたつの医術に見えない橋を架けよう、と。

  • 鹿の王の続編、ということは
    ヴァンとユナのその後がわかるのかなと一瞬期待。

    そちらではなく
    オタワルの医術の方にスポットを当てた物語でした。

    ホッサルとミラル。
    身分が違うけれど、お互いなくてはならない存在。

    その関係に一つの光が見えて本当に良かったと思った。

  • 鹿の王は過去読んだ中でもトップ10に入ってくるぐらい面白い。世界観が壮大で作者になんとか付いていくので精一杯。でもついて行った先にすごい面白さが待ってる。今回も感動した。

  • 2020.10.18

  • 鹿の王にも登場したホッサルがメインの話でしたが、問い続けられている物語の本質は変わらないと感じました。
    その問いにホッサルが導き出した答えが、「医術師が、なによりも大切にせねばならぬのは、人の命だと思っております。しかし、その命を守る治療ができぬよう、政治という手が私を縛るのであれば、私は政治と戦わねばなりません。」の文章に込められていると思いました。

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著者プロフィール

作家、川村学園女子大学特任教授。1989年『精霊の木』でデビュー。著書に野間児童文芸新人賞、産経児童出版文化賞ニッポン放送賞を受賞した『精霊の守り人』をはじめとする「守り人」シリーズ、野間児童文芸賞を受賞した『狐笛のかなた』、「獣の奏者」シリーズなどがある。海外での評価も高く、2009年に英語版『精霊の守り人』で米国バチェルダー賞を受賞。14年には「小さなノーベル賞」ともいわれる国際アンデルセン賞〈作家賞〉を受賞。2015年『鹿の王』で本屋大賞、第四回日本医療小説大賞を受賞。

「2020年 『鹿の王 4』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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