極上の罠をあなたに

著者 :
  • KADOKAWA
3.02
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本棚登録 : 172
感想 : 34
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041082874

作品紹介・あらすじ

自分では何もしないけど傍観者に徹して最終的には事件の帰趨を支配してしまうという新キャラクター・便利屋。便利屋という職業ではなく、「便利屋と呼んでください」という。まるで死神のようであり、人格のないロボットのようでもあり、得体が知れない。登場する政治家や葬儀屋、捜査一課の刑事たちはみな悪党だらけで、その悪党をいとも華麗に騙していく便利屋。暴力で相手を屈服させるのではなく、知力で騙す。
背徳の街・槻津市の議員の息子が誘拐され、身代金要求が犯人から来た。金を工面しようと事務所の金庫へ向かった秘書が暴漢に襲われ、現金を奪われる。ところが、その金はなんと、偽札だったと警察に知らされる。八方ふさがりになり、便利屋に依頼をするが……。4つの事件と便利屋の連作短編本格ミステリー。最終話、読者は驚愕する!

感想・レビュー・書評

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  • ☆3にしているが、正確に書くと☆2.5というところ。

    『人には頼みづらいが、自分でやるのはちょっと……
     そんな問題でお悩みのあなた
     便利屋を利用してはいかがですか』

    という文面から始まる怪しげ満載なダイレクトメールが届くのは、まさに『人には頼みづらいが、自分でやるのはちょっと』と考えている真っ最中の人々。
    悪事を今まさに働こうとしている人、自分の働いた悪事からどうにもならなくなっている人、さらなる悪事に手を染めようとしている人など、4つの物語。

    分類としてはイヤミスになるのだと思うのだが、いずれも『誰が』または『何を』便利屋に頼もうとしているのか、というところが肝。
    作家さんが読者を罠に掛けようといろんな仕掛けをしているのが楽しい。

    読み始めた当初見えていた、話の主人公の考えであったり計画は段々と様相が変化し、終盤になると違うものに。
    主人公の予想外のことが起こったり、そもそも読者には明かされていなかったり。
    犯罪スレスレ、あるいは犯罪だと分かっていてもそれを口にしない限りは依頼を実行してくれる便利屋を依頼人がどう利用するのか、その結果何が起こるのか、ワクワクする。さらに便利屋はこんな怪しい商売をしているというのに依頼以上のことはせず、仕事が終わればさっさと依頼人との接触を絶ってしまう。
    なんとプロ意識の高い、不思議な人間なのか。
    と、ここまでは面白かったのだが。

    第四話になると、急に警察庁長官だの、キャリア官僚だのが出てくる。
    もしかして便利屋って、そっちの人なのか? 全く考えてもみなかった、大掛かりな計画があったのか?
    …と、当惑しながら読んでいくと、急に終了。ん?

    結局、あの長官やキャリア官僚は何だったのか?
    便利屋は謎のまま次の依頼人へ渡っていくのか。
    尻切れトンボ感が残念だ。

    しかしみなさんのレビューを読むと、もしかして続編があるのかも、ということも書いてあったのでそういうつもりでこの終わり方なのかも知れない。
    この作品単体ならば、長官やキャリア官僚の件は不要だし、便利屋は謎のままの存在にしておいて欲しいと思う。
    さて、続編はあるのか。

  • 良からぬ事を考えている人の元に「何でもやります」と便利屋からのDM が届く。渡りに舟とばかりに便利屋に頼み犯罪が進んでいくけど。。。
    利用しているつもりがいつの間にか利用され、という繰り返しで楽しい。それぞれの話は完結しているけど、最後にちょっと繋がる感じだったのも満足。続編があって欲しい本でした。

  • 数々の罠を楽しんだ。

    己の私腹を肥やすためなら悪を悪とも思わない、あんな人、こんな人。
    そしてそこに絡んでくる、依頼されたことなら何でも引き受けてくれる謎めいた人物「便利屋」。

    仕掛けられた数々の罠はもちろん、誰が何をどう考えているのかの腹の探り合い、天国か地獄かカードゲームのような緊張感は読み応えがあり楽しめた。
    時には思わず読み手まで罠にかかるような感覚も…。
    今、この瞬間もあんなことこんなことでお困りの方、わんさかいらっしゃるんだろうなぁ。

  • これは続編はそのうち出るのかな?尻切れトンボ状態だったので、これだけだと消化不良…。

    悪人に送られてくる便利屋からのダイレクトメール。誰が何を便利屋に依頼するのか、誰がどんなふうに得をするのかが気になって面白かったです。

  • いろんなところでおすすめミステリーに上がっているので、さすがの内容だけど、最大のキーマンである便利屋の正体、都築のその後など、スッキリしない終わり方。
    読後感スッキリを求める人にはお勧めできない。

  • そこそこ面白かったが、尻切れトンボが惜しい。
    便利屋が誰なのか?県警本部長や刑事部長や警視総監がどう関わってくるのか?そこの処がスッポリ抜けての終わりはちょっと頂けないなあ。

  • 4話からなる連作短編集。
    どの話にも「便利屋」なる人物が登場する。

    第1話「便利屋」
    市議会議員の子供が誘拐される。
    犯人は五千万円を要求。
    実はそれは金に困った秘書の犯行。
    金はまんまと取られるが、子供は返ってくる。
    しかし、奪われた金は訳ありで、それを知った秘書は便利屋にある事を依頼する。

    第2話「動かぬ証拠」
    会社社長の男が妻の不倫を疑い、その相手と思われる弟と妻を罠にかけようとする。
    しかし、その弟は殺され、現場にいた男が殺人犯だと疑われる事に。
    このままだと男は相続権を失う事になる。
    困った妻は便利屋にある事を依頼する。

    第3話「死体が入用」
    自分の葬儀を自作自演した男は偽の診断書を作成した病院を恐喝する。
    死体調達には便利屋が絡んでいる。
    それに気づいたある人物により、死んだはずの男は追われる事に。

    第4話「悪花繚乱」
    専門学校生の青年が美人局の罠にひっかかる。
    しかもその後、殺し屋と思われる男を殺してしまう。
    青年の母親は有名な美容サロンの経営者。
    困った彼女は他の話でも登場した弁護士と刑事を頼る。
    刑事はこの件にも便利屋が絡んでると推測し、全てのからくりを知っている便利屋を追う。

    ミステリーの、真相は実は…という筋書きはよく出来ていて、うまくまとめていると思う。
    でも、文章があまりに素っ気なく、筋書き、謎解きありきの話なので読んでいて退屈だった。
    好みが分かれる本だと思う。

  • 騙したつもりが騙される。一筋縄でいかない大どんでん返しミステリー。

    自分では何もしないけど傍観者に徹して最終的には事件の帰趨を支配してしまうという新キャラクター・便利屋。便利屋という職業ではなく、「便利屋と呼んでください」という。まるで死神のようであり、人格のないロボットのようでもあり、得体が知れない。登場する政治家や葬儀屋、捜査一課の刑事たちはみな悪党だらけで、その悪党をいとも華麗に騙していく便利屋。暴力で相手を屈服させるのではなく、知力で騙す。
    背徳の町で繰り広げられる悪事の数々。政治家、葬儀屋、医師、捜査一課の刑事を華麗に知力で騙す。
    槻津市の議員の息子が誘拐され、身代金要求が犯人から来た。金を工面しようと事務所の金庫へ向かった秘書が暴漢に襲われ、現金を奪われる。ところが、その金はなんと、偽札だったと警察に知らされる。八方ふさがりになり、便利屋に依頼をするが……。4つの事件と便利屋の連作短編本格ミステリー。最終話、読者は驚愕する!

  • 「人には頼みづらいが、自分でやるのはちょっと・・・
    そんな問題でお悩みのあなた
    便利屋を利用してはいかがですか」
    怪しげなダイレクトメールを手に悩む面々。アリバイ確保から物品投棄・・・
    その誘いは、悪事に迷う心への最後の一押しになってしまうのか?
    華麗なる大どんでん返しの連単ミステリー。

    例えば、上手い儲け話が転がっていたとしよう。あるいは、身を滅ぼすような危機がせまっているかもしれない。ただ、それは法を犯す行為であり、とうてい自分の力だけでは難しい。となれば、大多数の人は二の足を踏むのではないか。そんな人を狙いすましたように、便利屋からの案内が届く。
    これが悪事を働いた人物が皆制裁を受けるのであれば、ダークヒーローということでスッとはするのだろうけど、そう都合よくはいかないし。なので、読後は多少、いやかなりもやもやが残る。

  • 連作ミステリ。数々の犯罪の陰で暗躍する「便利屋」。どんな仕事でも秘密裏に請け負うという便利屋にされた依頼はいったい何だったのか。そして様々な知略が絡み合う中で、最後に笑うのは誰なのか。どこをとっても一筋縄ではいかない悪人だらけの物語です。
    お気に入りは「死体が入用」。「そっちだったのかぁ!」と思ってしまいました。分かってみればシンプルなのに、完全に騙されてた!

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著者プロフィール

みき・あきこ1947年東京生まれ。東京大学法学部卒。元弁護士。60歳を機に執筆活動を開始、2010年に『鬼畜の家』で島田荘司選第3回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞受賞。『衣更月家の一族』『螺旋の底』が第13回・第14回本格ミステリ大賞にノミネート、『ミネルヴァの報復』が日本推理作家協会賞にノミネートされるなど、注目の作家。他の著書に、『敗者の告白』『殺意の構図』『交換殺人はいかが? じいじと樹来とミステリー』『猫には推理がよく似合う』『消人屋敷の殺人』『ミネルヴァの報復』『消えた断章』『罠』など多数。

「2023年 『欺瞞の殺意』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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