臨床真理 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 177
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041083116

作品紹介・あらすじ

臨床心理士・佐久間美帆が担当した青年・藤木司は、人の感情が色でわかる「共感覚」を持っていた……。美帆は友人の警察官と共に、少女の死の真相に迫る! 著者のすべてが詰まった鮮烈なデビュー作!

感想・レビュー・書評

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  • 他人の言葉が色で見えるという少年と、新人臨床心理士が障害者更生施設の闇を暴いていくサスペンス作品。

    中盤まではストーリーに惹き込まれるも、後半は22時35分あたりからのサスペンス劇場を観せられているような展開に失速。私には珍しく、早々に黒幕が分かってしまった(どんでん返しがなかった)ことが残念だった。

  • 柚月裕子さんデビュー作品。
    きれいな色彩の表紙が気になり手に取った。

    「共感覚」を持つ司は、誰にもその能力を信じてもらえず唯一慕ってくれていた彩も失い、孤独にすべての負を抱え込んで生きることを諦めているように感じた。次第に辛くても立ち向かう行動が多くみられるようになったのは、佐久間が司を信じ約束を守る行動を重ねたからだと司の佐久間に対する態度や思いの変化からもわかる。

    佐久間は過去からの後悔と司を救いたい一心でどんどん行動していくが、-後先考えない性格なのか- 思考と行動が暴走する場面が多くヒヤヒヤした。元同級生の栗原が冷静かつ強力的でよかった。いいコンビ。
    終盤、佐久間の安易な判断により大きな危機が訪れるも、佐久間の患者を思う強い意志と正義感からくる行動があったから真実が解明されたと思う。

    事件については、途中まで真相を追ってどんどん深く広がっていくように感じたが、真犯人はもしやという勘が当たって珍しくサラッとわかってしまった。
    自分の利益や欲しか考えない残念な大人たちの行動は本当に許せないし、被害者の子供たちを守るには佐久間や看護師:内田のような思いやりある大人が近くにいることって大切だと思う。

  • 面白かった!
    柚月裕子さんのデビュー作!
    ハードボイルドサスペンス&ミステリーってな感じ

    主人公は臨床心理士の美帆。この人すごい!心が強い!
    その美帆が担当するのは、人の言葉の感情が色で分かるという「共感覚」の持ち主の司。
    司を通して、知的障害者厚生施設で起きた彩の自殺の真相を明らかにするとともに、施設の闇を暴いていくという展開です。

    警察ではなく、美帆が事件の真相を暴くというところがちょっと面白い。
    もちろん、美帆の友人の警察官栗原がいろいろ助けてくれます。この関係も良いです。

    黒幕はなんとなく途中からわかってしまいますが、ラストのその黒幕との対峙シーンがまたすごい!

    お勧め!

  • これ、デビュー作なんや!凄いな。
    知的障害者施設の闇って感じ。実際はどうなんか分からんけど、こんなんあったらツライな。何も分かってない子に酷い…
    その施設で、少女が自殺?
    ほんとに自殺なのか?
    臨床心理士の美帆、カウンセリングをした話した事がほんまかどうか色が見える人間嘘発見器の司が真実を…
    でも…何となく途中で怪しいヤツ分かる。
    まっ!王道って感じの犯人像やな。お前が施設に入っとけ!って思うわ( *`ω´)
    なかなか、生々しい描写で、活字なんでええけど、マンガなら電車では読めん…^^;

  • 知的障がい者更生施設に入所していた少女、彩の死を巡り、彩と施設で親しくしていた司と、司を担当する臨床心理士、美帆が、その真相を解き明かそうとするミステリー。

    前半、彩の死の原因は施設長が彼女と無理やり関係を持ったのかなどと思ったが、真相はもっとずっと複雑で闇が深かった。途中から一気に引き込まれて読んだ。

    人の感情が声の色でわかるという特殊能力(共感覚)というものを初めて知った。
    そして、障がい者など社会的弱者の人も声をあげられる、そしてそういう声に皆が耳を傾ける社会の仕組みを作る必要があると改めて感じた。

  • 展開は予想できるし、一部は胸糞悪い感じもあるが全体としては面白くて読みやすい。年齢と共に一線引いた感じで人と接してしまう事が多い自分に対して、相手に踏み込んで関わる事の難しさとそれを職業としている主人公が凄いと思った。

  • このテーマにとても果敢です。読んでて本当に具合が悪くなるぐらいの筆致でした。

  • これがデビュー作とはおもえないほど、のちの彼女の作品のスタイルが出来あがっている そして描写が容赦ない 今年に入って読書を再開して、ほかの作家の本も読んだが、いまは彼女の文章がいちばん好きだ ストレスなく入ってくる

  • 柚月裕子のファンとしてはイマイチな気もするが、これがデビュー作だとなれば流石だと思う。
    ミステリとしてはどんでん返しまで含めて途中で展開が読めるが、私たち読者がこういう展開の作品に慣れ過ぎて驚かなくなってしまったので仕方ない。「共感覚」という要素を取り入れたことで、読者への新しい知識を提供しながらも多少SF要素が感じられてしまう。
    本作はそういうミステリやSF要素はさておき、根底には精神を疾患した社会的弱者への作者の思いが溢れており、それを理解してもらうためにミステリという方法を採用したのではないかとさえ感じさせる。
    それにしてもこのクオリティのデビュー作の後、「最後の証人」「検事の本懐」という傑作を生み出す力量は驚くしかない。
    現在、最も好きな作家の一人だ。

  • T図書館本

    デビュー作、このミス。
    色が見える子と、自殺したとおぼしい女の子、そして臨床心理士。
    このミス審査員のコメントにもあったけれど、途中から犯人わかってしまうけど、
    面白かった!

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著者プロフィール

1968年岩手県生まれ。2008年「臨床真理」で第7回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、デビュー。13年『検事の本懐』で第15回大藪春彦賞、16年『孤狼の血』で第69回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞。同作は白石和彌監督により、18年に役所広司主演で映画化された。18年『盤上の向日葵』で〈2018年本屋大賞〉2位となる。他の著作に『検事の信義』『月下のサクラ』『ミカエルの鼓動』『チョウセンアサガオ咲く夏』など。近著は『教誨』。

「2023年 『合理的にあり得ない2 上水流涼子の究明』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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