- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041093153
作品紹介・あらすじ
圧政に屈せず!
嘉永六年五月。圧政を強いる盛岡藩に抗して民百姓が立ち上がった。彼らを導いた首謀者の一人、三浦命助は、一揆に初めて参加したにもかかわらず数々の策を練って武士を翻弄。藩政への怒り、騒ぎに乗じた憂さ晴らし、取るものもとりあえず――膨れ上がる群衆をも巧みにまとめあげた。時を同じくして浦賀に異国船が渡来する。そのことが交渉の行方にも影響して……。果たして、一揆衆の要求は通るのか? 時代の流れに翻弄される百姓たちのドラマを描く、熱き歴史長編!
感想・レビュー・書評
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2020年3月角川書店刊。ペリー来航の年におこった百姓たちの一揆を骨太に描く長編。主人公の命助の合理的思考が心地よい。息もつかせぬ展開に頁を繰る手が止まらなかった。ラストが近づくとこれでちゃんと終わるのかやきもきしたが、うまく仕舞われていて、一安心。
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嘉永6年(1853年)に南部藩で起きた三閉伊(さんへい)一揆を題材にした小説。
様々な景気高揚策に失敗した南部藩はそのツケを領民に回し重税を課すという悪政を敷いていた。6年前の一揆で藩に約束を反故にされた三閉伊地区の住民達は、今度は隣の仙台藩を巻き込むために8000人もが越境し、南部藩に48か条もの要求を突きつけるとと同時に仙台藩には「三閉伊通を幕府直轄地か、もしできなければ仙台領にしてほしい。」と訴えます。
その顛末を一揆を指揮した主人公・三浦命助を通して史実に沿って描いた本格的な歴史小説です。
何と言っても史実そのものの面白く、それをきっちり描くことで読み応えのある作品になっています。
小説として良いアクセントになったのは、常に第三者の立場で一揆衆にも南部藩士にも堂々と文句を言う飯炊き女のたせの存在です。ただそれ以外は物語としてやや淡白な感じもします。例えば主人公を他に置いて命助の姿を側面から描いたり、一揆衆内部の不協和音をもう一歩ドロッとしたところまで踏み込んだら、もっと深い物語になったように思えます。
しかし、命助たちが目先の利益(一時的な減税など)では無く、藩政全体の革新を要求し、最終的に藩もそれを受け入れた稀有な事件だったようです。ちなみに、この一揆を機に住民との関係を改善した南部藩は明治2年(1869年)に白石13万石への減転封を命じられるのですが、領民たちは政府に対して藩主・利恭の盛岡復帰請願を続け、認められたそうです。
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転封阻止のエピソードから藤沢周平の『義民が駆ける』を思い出しました。
これも一揆もので、「百姓と雖も二君に仕えず」の合言葉の元(現実には国替えの時に庄内藩に備蓄米を持ち去られた上に、貧窮故に転封されて来る川越藩主からの搾取を怖れ)、庄内藩の転封を阻止するために江戸に上り集団越訴を行った農民たちを描いた作品です。こちらは転封を命じた幕閣、庄内藩の家老・重臣たち、そして越訴を行う農民たちの三方から事件を描いて見せた分、重層的で持ち重りのする作品でした。 -
「昔、こんな人がいました」的な感じでした。
一揆ってこんな風にやるものなんだと、興味深かったです。
命助の人物像が、いまひとつハッキリとしてこなかったのが、残念でした。
一番しっかりと芯を持っていると感じたのは「たせ」
とてもカッコ良かったです。
人と人がコミュニケーションを取っていくことの大切さが描かれているのかなと感じました。
著者プロフィール
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