僕の神さま

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041097786

感想・レビュー・書評

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  • この本の主人公は11歳の小学生の男の子。
    彼には「神様」と呼ぶ、クラスメートの少年がいて彼と身の回りの問題を紐解いていくという話。

    「春の作り方」
    主人公の少年は、亡くなった祖母が作った桜の塩漬けを落としてしまう。
    それは最後のひとつで祖父が大事にしていたもの。
    困った少年はクラスメートの頼りになる少年にどうしたらいいか相談する。
    彼らは桜の塩漬けを再現し、うまくいったかに思えたがー。

    「夏の「自由」研究」
    主人公のクラスメートで絵のうまい少女がいる。
    彼女はパチンコ依存症の父親がパチンコ屋に行かないようにする方法はないかと相談してきた。

    「作戦会議は秋の秘密」
    運動会の騎馬戦でやる気のない態度をとってクラスメートから責められる少年。
    主人公の友人である「神様」はその理由をすぐに察知する。

    「冬に真実は伝えない」
    主人公の学校で都市伝説的な話が流行る。
    それは亡くなった少女の怨念が本にとりついていて、すべて読むとあちらの世界に連れて行かれるというもの。
    バカバカしい話かと思いきや、図書館の本に次々と恐ろしい書き込みが見つかってー。

    「春休みの答え合わせ」
    自分の事を神様と呼ぶ主人公に「神様」が語り始める。
    あの時はこうだった、ああだった、という種明かし的な話。

    最初の話を読み終えて、全てこんな風に小学生を主人公にして、その周囲に起きた小さな出来事を読み解いていく話、割とほのぼのした話が続くのかと思った。
    すると2話目も同じ主人公、彼が神様と呼ぶ少年が登場し、今度は「殺」なんて物騒な漢字が出てくる。
    個人的には最初の雰囲気で進んでいった方が良かったと思う。

    途中、これは成立するのか?どうもイメージできない、というのもあった。
    いくら絵がうまいと言っても布に描いたものをそれと見せかけるというのがどうも想像できなかったし、本の事もイマイチ分からなかった。
    それは単に私のイメージ不足だと思う。

    主な登場人物として主人公含め三人の子供が出てくるけど、一人ひとりの性格がもっと分かる場面があれば誰かを好きになれたかもな・・・と思う。

    ラストのしめくくりの文、「誰かの人生を背負う事がなんてできない」
    それは当たり前だろって。
    まだ小学生なんだから。
    と大きく突っ込んで終わった読書だった。

  • イヤミスの新星というイメージでしたが、すっかりイヤミス代表選手になった感があります。どれも心を削ってくる感じなのに妙に冷静な文体なのが怖くてくせになります。
    本書は小学校を舞台にした連作ミステリーなのですが、読んでいるといつもと違ってほんのり青春っぽい?と思いましたが後半の不穏な雰囲気はさすが。前半から後半への空気感の変わり方がさすがに上手いなと思わされました。
    神さまと言われる洞察力抜群な水谷君が名探偵役、僕が助手という展開ですので、ミステリーとしては物語を展開させる為の人格でしか無い場合が多いのですが、そのある意味人格の必要が無い完璧超人水谷君の人格に皆が心至った時に、すっかり彼が小学生である事を忘れていた僕ら読者の、罪悪感のひだをちくちくひっかきます。
    ただの推理連作短編では無いのが筆者らしいと思いました。

  • 子どもが主人公というのが活かされた題材だ。神さまとからかう気持ちも、神さまであって欲しいと思う気持ちもよくわかる。水谷くんはあまりに大人びていて、彼の人生の不幸が予感される。ごくごく普通の主人公となぜいつもいっしょにいるのかわからない。ラストはかなり複雑な気持ちになった。

  • 小学五年生の僕と同級生たちから神さまと呼ばれる「何でも分かってしまう」水谷くんとの、日常の謎解きシリーズ、かと思いきや。

    人には誰にでも「秘密」がある。その秘密はたいてい誰にも知られずにひっそりと本人の中だけで守られていく。
    だけどその秘密が、なにかのトラブルに関連して表に出てしまうことがある。
    そんな「秘密」を水谷くんは解いていく。秘密を表に出さないために。秘密を秘密のままで守るために。
    神さまはなんでもわかってしまう。でも…わかってしまえないことも、ある。
    誰かを守るために、小学五年生が選んだとある方法。「神さまに決めてもらおう」
    その残酷さと彼らが背負って生きていく責任の重さを思う。

  • 困ったとき、いつでも冷静に物事を分析して、一番いい答えを見つけてくれる「神さま」と呼ばれる水谷くんと「僕」の小学5年生の物語。

    家族に愛されて守られてまっすぐ育った主人公と、人生何周目かな、と思うくらいの水谷くんの落ち着きぶりの対比が面白かった。どういう環境で育つとこうなるのか興味深い。
    あと谷野さんすごくいい子。合田さんも。

    「間違ったことをしていると思っていたからこそ、罪悪感に苛まれていたからこそ、それを否定してくれる理屈にしがみついたんだ。自分がやったことは正しい。自分は間違ってなんかいない。それを補強してくれる言葉や出来事だけに目を向けて、それ以外のものはなかったことにした」
    という水谷くんの言葉が深く刺さった。
    特に今はロシアとウクライナのことが浮かんだから。

    同級生に「神さま」と讃えられても、自分が間違える存在であることを自覚して、幾つもの後悔を抱えながらも、また困っている誰かのために力になろうとする水谷くんは、ほんとうに神さまみたいに思えた。

  • 神様と呼ばれる小学生名探偵と僕のおりなす日常のありふれた話から少し心に痛む話まであり、ほのぼのしくも切なくもある1冊でした。
    芹沢作品は初めて読みましたがお気に入りの作家さんになりそうです

  • 何でも解決できる小学5年生の水谷くんは、みんなから神さまと呼ばれている。大人顔負けの賢さにクラスメイトは頼りっぱなしだ。

    一風変わった寡黙なクラスメイトの川上さん。逃げようのない親からの虐待。それを見抜けない頼りない大人。暴力を振るわれる自分が悪い、自分さえいなければ…という心理の描写。この本に救われる子ども達はたくさんいるんじゃないのかな。

    何とか救い出したい一心で友達同士、解決しようとする子ども達には、頑張ったね…と声をかけてあげたくなる。

  • 小学校5年生,なんでも考えて答えてくれる水谷くんに僕は友達としての友情とその知識への尊敬を覚え,神さまと呼んで慕っている.第2話になって子供の手に負えないような事態になるも,水谷くんは誠実に立ち向かうが僕との友情は少し形を変えてしまう.この物語を読んで,小学生らしからぬ水谷くんの来し方行く末にとても興味が出てきた.もう少し彼を見てみたい.

  • 子どもは大人が思うよりも あれこれと考えていて 思い悩んだり 世の中を怒ったり 自己嫌悪に苦しんだりする

    水谷くんや 僕が 笑顔で過ごせる子ども時代を過ごし いつか 思い出を語るとき 気持ちが楽になっていればいい と 願いたくなる

  • 読んで抱いた印象はまさに小学生版シャーロックホームズとワトソン助手だった。日常の謎を理詰めで推理していく水谷くんはホームズにしか見えなかった。しかしそれだけでなくここまで小学生の心理を小学生ぽく書けるのがすごいと思った。今まで読んだ芦沢央の作品とは違い小学生でも読めそうな軽い文章とリアリティのある重みを持った雰囲気が芦沢央の実力なのだなと感じた。
    小学生の日常をどこか懐かしみながら読めるミステリー短編集。

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著者プロフィール

1984年東京都生まれ。千葉大学文学部卒業。出版社勤務を経て、2012年『罪の余白』で、第3回「野性時代フロンティア文学賞」を受賞し、デビュー。16年刊行の『許されようとは思いません』が、「吉川英治文学新人賞」候補作に選出。18年『火のないところに煙は』で、「静岡書店大賞」を受賞、第16回「本屋大賞」にノミネートされる。20年刊行の『汚れた手をそこで拭かない』が、第164回「直木賞」、第42回「吉川英治文学新人賞」候補に選出された。その他著書に、『悪いものが、来ませんように』『今だけのあの子』『いつかの人質』『貘の耳たぶ』『僕の神さま』等がある。

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