「ふつうの家族」にさようなら

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041099544

作品紹介・あらすじ

中野信子さん(脳科学者)推薦!「家族法研究者 山口真由が明かす家族の本質」

「ふつうの家族」――それは聖なる呪いである。
家族も、親子も、夫婦でも――常に「スイッチオン」でなくていい。その関係は「点いたり、消えたり」でいい。

「"ふつう"を押し付けられたくない私は、"多様性"を押し売りしたいわけでもない。新しく生まれつつあるマジョリティの側にまわって、「空気を読まない」古臭い奴らをつるし上げたいわけじゃない。(略)これからの時代、私たちがすべきことは"違い"をあぶりだすことじゃなくて、”同じ”を探しにいくことなんじゃないか。家族のあり方が変わってもなお、昔と変わらない普遍的ななにかをその真ん中のところに見つけにいくことじゃないかと、私は思うようになった」(「おわりに」より)


はじめに
第1章 親子
言葉を失った「卵巣年齢50歳」の衝撃
結婚じゃない! 子どもなんだ!!
精子バンクはオンラインデート
「フェミニストの希望の星」が残した宣言 他

第2章 結婚
親友の結婚話でヒートアップした私
同性婚を認めた感動的な判決
ジャネット・ハリーというロック・スター
権利と義務の束としての結婚 他

第3章 家族
謎だった「男のお母さん」
私が育った日本の家族
多様になりつつある日本の家族
「家があります。緑と白の家です」 他

第4章 老後
日本の「家」は会社だった?
現代社会における「家」の残り香
「家」か? それとも「個人」か? 他

第5章 国境
アメリカの「実子」、日本の「養子」
「結婚」なんて点いたり、消えたり
「親子」ですらも、点いたり、消えたり
ステイタスとしての家族、プロセスとしての家族 他
おわりに


装画:赤 | aka
装幀:原田郁麻

感想・レビュー・書評

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  • 著者の名前見たことあるな、と思ったら、「東大首席弁護士が教える超速『7回読み』勉強法」の著者だった。
    この本読んで、ほぉ〜っと感心してそれ以来実践しているが、頭のよくない僕には向いていない勉強法らしく、ちっとも知識が身につかない。

    …それは置いといて。

    タイトルが素晴らしい。

    世の中には「これがふつうだ!」であふれている。
    その普通の範疇に入れなかった人たちは、苦しめられ、追い詰められ、社会からはじき出されるようにできている、のだ。

    でも、ふつうであることを諦めてしまえば、心が軽やかになるよ、と言うことをこの本は言っている。

    とは言っても、「ふつう」という規範をぶっつぶせ、と言っているわけではない。
    「ふつう」でなくても被害者ではない。著者は「家族という戦いを戦っている人たち、すべてに、エールを送ろう」という視点で書いたとのこと。
    ふつうの家族とそうでない家族と、その垣根を越えていこうとしている。
    そこがいいなと思った。

    以下、メモ

    ・アメリカは、フェミニストと言う言葉が軽い。フェミニストを名乗った男性は女性にご飯を奢らなくていいと言う特典がある。その程度(笑)

    ・アメリカの家族は点である。子どもが成長すれば親の家族とは別の個人となる。両者は経済的には完全に独立した主体。
    ・一方、日本の家は線である。家は、世代を超え、核家族の境界を越えて、一族を縦に結びつける。精神的な結びつきのみならず経済的な基盤でもある。

    ・池袋暴走事件の加害者の息子は、法ではなく世論によって裁かれた。だが、農水事務次官による長男殺害事件の父は、法によって裁かれてもなお、社会においてはむしろ擁護された。
    法は、個人の責任という欧米の概念を取り入れたが、世間はなお、家族の責任という封建的な感覚を残している。

    ・「結婚」という概念は、国境を越えれば通用しないこともある。(一夫多妻とか)。だから結婚は、相互を縛る絶対的な関係でも何でもなくて、場所によってしてたりしてなかったりする、相対的なものだ。

    ・家族はすでに多様なあり方がある。しかし、国によって同性同士が認められたり認められなかったり。代理懐胎の場合、親と認めるか否かの判断も異なる。そんな親のこどもにとってみれば、私の親は誰か?さえも曖昧になっていく。アイデンティティすら、誰が丸ごと肯定してくれるのだろう?

  • 生まれ落ちたときから、周囲を見回しては比較の中で自分の立ち位置を確認し、安心して前に進んでいく。
    それが「ふつう」の魔力でありながら、結局はその「ふつう」に自分自身が追い込まれていく。

    コメンテーターとしてメディアでお見掛けする山口真由さんがその「ふつう」に対して感じる違和感を筆にした一冊。

    ご自身の留学経験を織り込みながら、アメリカと日本の「家族」「母性父性」「親子」等の概念の違いをさらりと筆にする。

    山口さんが文中で引用した米国最高裁判事であったルース・ベイダー・ギンズバーグさんのドキュメンタリー『RBG 最強の85歳』を私も見たばかりだったので、とても興味深かった。
    当時男性に比べ、「二流市民」の扱いを受けていた女性たちが権利を一歩一歩手にしていく様子と、RBGが理性と品性を失わずに社会を変えていった経過に私も痺れた。

    一方で、山口さんが文中で固有名詞を出された日本の女性活動家たちには、私も同様に従来から違和感を禁じ得なかった。
    権利を手にするために、闘争のための闘争のような印象。
    「正面切って声高に正義を叫ぶことに消耗されるだけ。人生の消費。」言い得て妙。

    米国の家族は点(個人)であり、日本のそれは線(家の継承)であるという明確な違いを法的な概念から端的に説明されたことも興味深い。

    子どもであっても、親とは別個の人間であり、成人すれば独立が当然である米国の親子観に対して、日本は親も子も
    旧来の「家制度」に基づき一心同体、無限抱擁。
    個人を犠牲にしても、家族を優先し、「家」を存続させることに美徳を置く風土は、今もなお健在。

    無論、日米間で価値観の正誤を争うつもりは毛頭ないが、戦後の民法において旧来の「家制度」が取り除かれたにも関わらず、「組織のために個人を犠牲にするという「美学」自体は私たちの社会に根強く残っている。(本文より)」という山口さんの見解に首肯。
    自分の感覚や判断よりも周囲からの役割の期待である「ふつう」を優先する。実は苦痛に満ちているのに。

    最後にSNSというツールを得て、今や誰しも自分の立ち位置と存在を世間に訴えることが非常に容易くなった弊害への言及も目から鱗だった。
    評論家佐々木俊尚さんが提唱する「マイノリティ憑依」にも通じると思う。
    少数派に対する表立った賛辞を皆に求める圧の強さ。

    「”ふつう”を押し付けられたくない私は、”多様性”を押し売りしたいわけでもない。新しく生まれつつあるマジョリティの側にまわって、「空気を読まない」古臭い奴らをつるし上げたいわけじゃない。」(あとがきより)

    日常の些末な出来事に忙殺され、ふわふわしたネット記事やSNSに心奪われがちな昨今。
    「当たり前」と信じ込んでいる価値観や概念に風穴を開ける1冊になりそう。

    読点の多さが少し気になり、新書でもなく、エッセイでもない1冊。
    彼女の力量を安っぽいコメンテーターではなく、もう少し違う形で発揮できればいいのになと願いながら頁を閉じた。

  • 家族法研究者 山口真由が明かす家族の本質――エッセイ 『「ふつうの家族」にさようなら』 2月26日(金)発売!|株式会社KADOKAWAのプレスリリース
    https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000008089.000007006.html

    O u t w o r k
    https://aka-outwork.com/

    「ふつうの家族」にさようなら 山口 真由:一般書 | KADOKAWA
    https://www.kadokawa.co.jp/product/322006000081/

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      んー
      それでも森喜朗を擁護する人たち…産経新聞「厚化粧した集団いじめ」橋下徹「森さんの気持ちわかる」山口真由「欧米的ポリコレに違和感」|L...
      んー
      それでも森喜朗を擁護する人たち…産経新聞「厚化粧した集団いじめ」橋下徹「森さんの気持ちわかる」山口真由「欧米的ポリコレに違和感」|LITERA/リテラ
      https://lite-ra.com/2021/02/post-5785.html
      2021/02/08
  • 「ふつう」とは。

    平均的、最頻的という事にしようか、あるいは、客観的に見た許容範囲と言おうか。適切、適当、適齢…つまり、この本の文脈で言えば、適齢の男女が子供を持つような構成を「ふつうの家族」とする。そして、そこから逸脱したものは「ふつうではない家族」と。

    ジェンダー論で語りながら、LGBTQにも触れるが、よりリアルな話は、著者自身の葛藤もあるだろうか人工授精や女性の出産適齢期のリミットについて。社会がアファーマティブアクションを起こそうがポリコレやジェンダーレスを叫ぼうが、肉体には機能的な限界があり、性機能は残酷にも年齢で劣化し、弱化していく。男女共にそうだが、出産という機能においては女性が年齢に対して特に不利な性別だ。だからこそ、女性の若さは社会的にも価値がある。この不都合な真実との葛藤から解き放たれるには。

    ーその瞬間を私は今でも忘れることができない。じわっと温かいものが私の中に広がっていく。私はやった。小さいけれども、挑戦し、そして何かを手に入れたのだ。それは絶望に次ぐ絶望で、完全に自分と言う人間を失っていた私が、少しだけ自分を取り戻したように思った瞬間だった。彼女は私の熱量を買ったのだった。

    ハーバードロースクール時代に厳しい教師に思い切って自論をぶつけた時の達成感。何故か、この文章が頭に残ったのは、そこに運命を自ら切り拓いた手応えを得ながら、しかし、その後で切り拓けぬ壁と対比する悲劇を予感させたからか。ガラスの天井、ガラスの壁。これは単に社会の偏見や差別、通念や慣習だけではない。人間が生身である故の肉体の限界。

    偏見から解放を求めただけのコンプライアンスの純化は理想論だろう。誰しも、心の底で薄ら寒いと感じるのは、そこでは無いのか。肉体の限界は越えられない。つまり、性別の壁は越えられない。そこを勘違いして、男性器のついた女性性を、女風呂に迎えてはならない。悪いが。

  • 家族、結婚に対して、また多様性という言葉に対して感じていたもやもやが、この本を通して少し解像度を上げることができた気がする。
    判例を読みやすく拾い、簡易な表現を用いながらも説得ある書きぶりだった。

    最後の締めも好きだった。

    この本で主張するべき点ではないかもしれないが、
    ストーリーの後押しは人を説得する上では強力な武器だということが、改めてわかった。

  • 素晴らしい本だった。山口さん自身のエピソードや経験から、何故家族法を研究することになったのかが、丁寧に書かれていると感じた。それだけでなく、家族についての概念が、多様性の波の中でだんだんとゆらいでいく様子や社会構造を、噛み砕いて説明してくれている。日本古来の「イエ」を守るという考え方もあるせいか、変革しきれない社会。まさにいま過渡期にある日本で、読んでおいた方がいいと思った。

  • しくじり先生の番組を観て、もっとこの人の考えを知りたいと思った。海外と国内の結婚に対する価値観の違い、法による制度の違い、LGBTQの例など分かりやすく説明されていて、面白かった。ふつうの家族は1つも存在しないこともわかった。しかし、頭では理解するものの、どこかで、ふつう・一般的・普遍的・マジョリティ等に属したいと矛盾極まりない考えにも陥る。自分の思考の柔軟さが足りない。最後に「私たちがすべきことは、違いをあぶりだすことではなく、同じを探しにいくこと。家族のあり方が変われど、昔と変わらない普遍的ななにかその真ん中を見つけにいくこと。」この言葉を参考に私も、家族という名の旅をしていきたい。

  • すごく読み応えがある本だった。

    いろいろな視点から、「家族」のあり方について考察をしている。

    読んでよかった

  • 子供の時の違和感て大事だな。と思った。正解はない。ということを自分にも子供にも言い続けたいと強く思いました。

  • 上野千鶴子と並ぶ日本の知性。
    鈴木涼美もそうだが、上野千鶴子は
    なぜか83年生まれと縁がある。

    これからの多様性の時代には、「ふつうの家族」
    からセンスのよい距離感をとった人々が、
    むしろ、クールだと称賛されるだろう」(P6)
    ずっと自分が思っていたことをこう言語化される
    と手放しで喝采を送りたくなる。
    本書では「ふつうの家族解体」に果敢に
    取り組んでいる。

    「女性の身体は『砂時計』」(P17)
    その意味することは女性の卵子は
    経年減少するということ。
    『子の無い人生』を著した酒井順子が
    一番会いたかった人は安倍昭恵だという。
    「彼女は安倍晋三氏の妻であっても、
    誰かの母じゃない。そうか、
    結婚じゃないんだ!子供なんだ‼」(P20)
    この件は印象的だ。

    「『父と母がそろっている”ふつう”の家庭が
    子どもにとっては最良である』という社会の
    価値観が、一人親の子どもを不幸にする」(P64)

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著者プロフィール

1983年、札幌市出身。2006年3月、東京大学法学部を卒業。同年4月に財務省に入省。08年に退官し、15年まで弁護士として法律事務所に勤務。15年9月~16年8月、米ハーバード大学ロースクールに留学し、卒業。17年4月、東京大学大学院法学政治学研究科博士課程に入学。17年6月、米ニューヨーク州弁護士登録。20年3月、東大大学院を修了。20年4月から信州大学特任准教授となり、翌年、特任教授に就任。

「2023年 『挫折からのキャリア論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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