百年法 下

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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  • Amazon.co.jp ・本 (413ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041101919

感想・レビュー・書評

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  • また言う、これは傑作だ。構想が雄大だし、こちらに突き付けてくる問いも鋭い。人物たちも生き生きとしていて、どの人物にも肩入れしてしまう。遊佐総理、牛島大統領、兵頭局長、加藤医師たちの動きから目を離せないが、遊佐以外のもう一人の主人公と言える仁科ケンの人物像が魅力的だ。由基美や貴世、恵といった女性群もいい。遊佐も途中で、どうしちゃったのかという感じだったが、最後で思い切り力を発揮する。かっこいいぜ。
    永遠の命を得られたらどうする?本当に幸せ?そんな人間ばかりになったら社会はどうなっていくのか?死があってこその人間?老化っていったいなに?独裁政治というのは可能か、有効か?それぞれが考えるべきことだろう。
    この著者らしく、悲惨な結果にはならないが、一歩間違えば、どうなっていたか分からない設定である。実に面白かった。

  • 面白かった!
    スカッとする場面が多く、楽しい。
    下巻はあっという間に読み終わりました。

    人の寿命について、色々考えさせられるなぁ。

    小難しい内容かと思ったけど、そんなこともなく。
    手にとった自分、えらい!
    やはり、皆んなが面白いと言う本は面白いんだなぁ。

  •  上、下巻のボリュームなど関係ない。素晴らしい作品だった。さすがに、構想に10年かけただけの作品のことはある。

     上巻を読んでいるあたりは、若者ばかりで永遠に歳をとらないという、作品の世界に入り込むのに苦労したけれど、下巻に至っては、もうページをめくる手が止まらなかった。

     ラストの仁科ケン独裁官が、独裁官制度を終了し、民主制移行を告げるあのスピーチ、本当に素晴らしかった。山田さんは、これを描きたくて、この最後の思いを私たちに伝えたくて、この作品を構想したんだろう。

     日本人として生まれてきてよかったって思った。理性と誇りを失わず、秩序を愛する民族の一員であることを、私自身が誇りに思う。
     もちろん、この作品中で、皆が皆、こんなに理性的なわけではなかった。富と権力に執着し、目先の利益ばかりを追求した者がいた。自分の持つ肩書きに酔いしれて、正しい判断を下せなくなった者もいた。
     けれど、日本人の大半は、過去の自らの過ちを認め、次の世代のためにすべてを捧げた。これを愛さずに、何を愛するというのだろう。この行為を賞賛せずして、何を賞賛するというのだろう。

     私は、ケンのようには強く生きられないと思う。私は何の疑問も持たずに、みんなが受けているからという理由でHAVIを受けてしまうだろうし、拒否者を積極的に助けたりしないだろう。

     ケンは最後にこう言っている。
    「あなたにもできることは見つけられるはず」と。

     「私は、あなたのようになれない。私は、強くないから」なんて言い訳していてはダメなのか。何もしないことが罪なのか。

     だとすると、わたしにできること。
     まず、自分を大切にしよう。そして、その次に、私の周りにいる大切な人を大切にしよう。
     周りに感謝をして、困っている人がいたら、手を差し出して生きてみよう。
     そして、このバトンを、次世代に確実に渡そう。

     そうしていくことは、きっと、いつか、誰かを救うことにつながる。そう信じよう。

  • 百点満点。
    久しぶりに絶対映像化してほしくないと思った。
    今年読んだ中で1、2位を争うほどの一気読みでした。

    下巻はSMOCという謎の病と拒否者ムラという違法者の話から始まりますが
    そこからまさかの展開があり、怒涛のラスト。驚きの連続でした。

    牛島と遊佐の病室での場面、泣けたなあ。
    そしてあの、国民投票。最終章のケンの言葉。

    「自虐的で冷笑的な言葉に酔う前に、その足で立ち上がってほしい。」
    「虚無主義を気取る余裕があるなら、一歩でも前に踏み出してほしい。」
    「あなたにもできることは見つけられるはずだ。」

    はあ。どこかに遊佐みたいな政治家いないですかねえ?

  • 上巻からの続き
    http://booklog.jp/users/kickarm/archives/1/4041101484

    【再読】

    「日本共和国」を生かすために動き始めた「百年法」が時間の経過とともに、歪んでくる。

    そして、自分の「生」と賭してこの国の未来を拓こうとする。
    その時、自分が未来の世代のために出来ることは何か?俺に出来ることは何か?

    政権があの党に戻り、日本は良くなるのか?
    折りしも「日本国憲法」改定の話もある。物語と同じで敗戦時にアメリカの都合に合わせて作られた憲法。

    それをしっかり国民に説明し、中国を敵国と認識させることで「まだアメリカに助けてもらわないと日本ヤバイよ」と意識操作していることを白昼に晒し、国民投票をすることが出来るか?

    なんて妄想も膨らむ、「国造りエンタメの傑作」です。


    【初読時】
    法律で「死」を求めれば、当然その法律から逃れる人が居ます。
    物語の中の社会では、「死」を拒否した人を「拒否者」と読んでいます。これが「基本的人権」を持たない人達です。
    拒否者でも集まれば、集団になり村になる。何しろ「不死」ですからね。

    安定していた「日本共和国」が揺れ始めます。
    後半は、「不老不死」よりも政権、権力の奪い合いに話が流れていく。そして「不死」の存在が一転・・・
    下巻で、ストーリーから逸れた気がするんですが、結末へ向けての必要な布石。

    「この国がどうやって生き残るか!」に全てを捧げる官僚が熱い。
    「不死に法律で期限つける?何か面白そう」と手に取りましたが、いやいや、いつの間にが国を作る熱き男たちの物語になった。

    それでは現実に戻り、政権を取り戻したあの党に期待大です!


    貪るように読んでしまった。読了後、そのまま再読中。。。

  • 驚異的な傑作。これほどまでにダイレクトに胸を打つ力強い本はなかなかないと思う。本当に様々な要素を盛り込んだ一大エンターテイメントの傑作であると同時に、力強いメッセージを訴える社会派小説の傑作。そして、ジャンル的には近未来SFの傑作と言ってもいいのだろう。話題になった「ジェノサイド」や「虐殺器官」もすごかったが、個人的にはそれをも超える稀に見る傑作であると感じた。
    テーマは人の生と死。そして、それを前提とした人間の生き方の問題だ。
    放り込まれた要素は、人との信頼、男女の愛、親子愛、信念をつらぬく大切さ、人の醜さ、弱さ、愚かさ、身勝手さ、などなどたくさんあれど、中でもきわだっているのは、まるで現在の日本の政治状況そのものを揶揄したかのような権力闘争の要素であろう。また、近未来SFとはいうものの、時代設定は奇妙に現代とリンクしており、これがまた奇妙なシンクロ感を醸し出す。この政治的な要素と時代設定の仕掛けから考えるに、この作品はある程度の大人が読んで初めて感動できるものなのかもしれない。
    過去に著者の本は読んだことがないけれど、その小説的なテクニックもひどくうまい。場面や時制の転換が自由自在で、登場人物が思わぬところでつながってくる過程がとても見事だ。重いテーマを内包しつつも、堅苦しい文章になることなく、あくまでもエンターテイメントとして完成させていることに、著者の指向性と力量をみた気がした。
    繰り返そう。これは驚異の傑作だ。今を生きる日本人が1人でも多くこれを読んで、自分の生き方を真摯に考えてみることを強く祈ります。

  • 最後の仁科ケンのメッセージが、この本の全てを物語っている。
    日本という国を作ってきた先代達、そしてこれからを担う人はどのように生きていくべきか。
    百年法という架空の設定の中に、多くの社会的課題を投影させ書いたストーリー。
    本当に最後のメッセージで著者が何を伝えたいのかが理解できた!

  • 百年法拒否者のムラの乱立、SMOCという他臓器ガンの増発、警察局長のクーデターなどなど、もうあれこれと盛り沢山な下巻でした。
    途中、少し読み疲れも出ましたが、先が見えてきてからは、急加速の一気読み。
    多くの犠牲の元、人類の正しい姿に戻った最後に、いろいろ思うところがあったというところでしょうか。

    こうであったらいいなと思っていた人たちが、そうあってくれて、良かった。
    読み込めていないがために、一部、私の中では謎が残ってしまった部分があるので、機会があったらまた読んでみたいと思います。

  • まったくもって骨太だね。
    この構想、想像力すごいとしか…。
    人間の生き死にが終始関わってくるだけに、読むのに体力はいりますが、それを上回る好奇心やドラマ展開があるので一気に走り切ってしまいます。
    こんなことが現実に起きたら「自分ならどうするだろう」としばし考えてはみるが、やっぱりわからねぇ。

  • 2013年に読んで一番良かった本

著者プロフィール

1965年愛知県生まれ。筑波大学大学院農学研究科修士課程修了後、製薬会社で農薬の研究開発に従事した後、『直線の死角』で第18回横溝正史ミステリ大賞を受賞し作家デビュー。2006年に『嫌われ松子の一生』が映画、ドラマ化される。2013年『百年法』で第66回日本推理作家協会賞を受賞。その他著作に『ジバク』『ギフテット』『代体』『人類滅亡小説』『存在しない時間の中で』など。

「2022年 『SIGNAL シグナル』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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