先導者

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041103173

感想・レビュー・書評

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  •  死者を再び富と名誉を持った家系に生まれ変わらせる役割を持つ先導者となった「わたし」。わたしの運命を一人称の語りでつづられた小説。

     ホラー小説大賞の受賞作ですが怖さというものはなく、わたしの語りの美しさや格調高い文章はどちらかというと純文学の香りすらも漂わせているように思います。

     なにより圧巻だったのはわたしが死者の魂を導くため臨死体験をする際の描写力です。この作者は一度死んだことがあるのか、と思わせる生々しさがありました。わたしが魂を導く御堂の話やそこが徐々に崩壊していく話も妙なリアリティがありました。

     わたしが所属する組織についての話や後半の展開などがちょっと消化不良気味でしたが、語りの美しさ、描写力に加え、物語の展開もわたしの再生、もしくは復活の物語としてとても綺麗なもので、ここをさらに突き詰めていくと、ものすごい作品を今後書かれるのではないか、という予感を持ちました。

    第19回日本ホラー小説大賞 

  • 死に対する見方が変わりました、切ない物語でもあります

  • 図書館にて。
    ホラー小説大賞受賞作ということで、予約して借りてみた。
    全編に通じて静けさに満ちた作品。
    ホラーというほど怖さは感じられなかったし、淡々と過ぎていく日常に差し込まれた非日常というような、じわじわとくる理不尽さ、悲しさのようなものが感じられた。
    以前読んだ、「わたしを離さないで」(カズオ・イシグロ)と同じ静けさというのはほめすぎ?
    中盤の曾祢さんの生い立ちのエピソードはもう少し薄くても良かったのでは?
    それよりはわからないなりに主人公の幼いころの生活の描写がもう少しわかると、彼女の寂しさがもっと伝わる気がした。
    ラストシーンも、なし崩し的に運良く逃げられているまま終わっているけれど、曾祢さんとの何か幸せなエピソードも欲しかったな…。
    甲斐さんとのことも大樹とのことも中途半端で、大切な人と一緒にいることを選んだのなら、最後にもう一つ能動的で未来につながるエピソードが欲しかった気がする。

  • 現実に見えそうで見えない。
    異世界に連れて行ってくれる本でした。

  • 契約を交わした、選ばれた人間を魂の再生する場所へ導く「先導者」
    丁寧な言葉遣いで、淡々と語られる死後の世界は繊細で、引き込まれた。

  • 生の世界と死の世界を行き来する女の子が主人公。死に向かう描写がリアルで息苦しくなる前半から、ストーリーが予想外の展開に斜めすべりしていく後半が気持ちいい。最後の場面が、ふわっと温かくて良かった。

  • 死の瞬間の感覚描写が生々しい。きっとそうなのだと思う。繊細な感覚と文章でドキドキする。

    だが、筋立てが妙に荒い。あまりに現実的でせっかくの繊細な感覚描写の雰囲気を壊す。もしかしたらこの差が作者が意図したコントラストなのかもしれないが・・・。期待した霊界も近所の森の中のよう、登場する霊たちも魅力ない。「どうしてこんな話になっちゃうのぉ~」と、がっかりした。

    幽体離脱をするときの描写は繊細ですばらしい。

  • 第19回日本ホラー小説大賞作品「先導者」を読んだ。特殊教育を受け強靭な精神力と苦痛に耐えた者だけがなれる先導者。死んだ人をある場所に導く「御役」が役目。15歳で先導者になった少女の淡々と綺麗な言葉遣いで語られていく。とにかく御役の描写が細かく、死に向かうプロセスが重く息苦しい。前半はグイグイ引き込まれ、後半の展開はいまいち気分が乗らず消化不良だったが、全体的にまとまってたなという印象。あと巻末の選評も作家の生の声を聞けて面白かった。

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