- Amazon.co.jp ・本 (348ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041103203
作品紹介・あらすじ
「この国のキンタマは"食"なんすから」そうのたまい、一介の鮨職人から、外食産業の帝王に成り上がった男・徳武光一郎が自殺。長年「番頭」として彼に尽くしてきた金森は、刑務所でその報を知る。人、金、権力。全てをその手に握った「食王」に、一体何が起こったのか。
感想・レビュー・書評
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小説だからこそ読むことができた「握る男」の半生。
すし職人の世界や飲食店のあれこれが面白い。
さらに、ただの職人にとどまらず、外食産業でのし上がり、そのうえ権力を振るう人間になっていく過程がバブルの時代とともに描かれている。
気が利いていて、頭がよく、人に好かれる好人物である一方で、どこか裏のある素顔をもち、野心もあった。
そら恐ろしさを感じて、波立つような心持ちで読んだ。
成り上がった彼は思い通りの生き方ができたのかもしれないが、心から満足することはできただろうか?
彼の右腕だった語り手の男が彼を思い、すし職人だった頃を懐古するラストが哀しい。
人生でいちばん輝いていた時代の光景はけっして色あせることはない。
そのことが切なく心にしみた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2016.9.19
文庫が出てるのを見て、もっとポップな感じかと思って読んでみたら全然!予想とは違ったけどテンポよく読めた。
成り上がっていくスピード感、スマホどころか携帯さえ全員が持っていなかった時代での会社の成長、いつの時代もあるであろう男女の中。人の弱みを握り、使い、裏切り者はどこまでも追い詰める。幸せとは?成功とは?考えてしまった。やっぱり女性には男性にない怖さがあるなあと思いつつ。
余韻の残る小説やった。 -
寿司屋の弟子時代からの後輩と寿司屋を乗っ取り、その後外食産業、食品産業に影響するほど大きな複合企業を作る社会派フィクション。
寿司屋時代の話は面白かったが、企業作りの話になってくると軽さが鼻につくようになってしまった。スピード感は有るが内容は軽くなってしまったのは残念。一代でのし上がり、周りの人間を駒としか見ないような企業。まあ有りそうな話しかなとは思う。ITバブルの時なんか本当に良くあった話しな感じ。全体的には面白いが、物悲しい読書感。 -
しなくていい事をやり
ついつい後ろを気にするようになり
それでも頭を下げる
ふ~~~~ん -
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「この国のキンタマは“食”なんすから」そうのたまい、一介の鮨職人から、外食産業の帝王に成り上がった男・徳武光一郎が自殺。長年「番頭」として彼に尽くしてきた金森は、刑務所でその報を知る。人、金、権力。全てをその手に握った「食王」に、一体何が起こったのか。
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冒頭で、徳武光一郎(通称ゲソ)の自殺が知らされ、その後、そこに至るまでの一部始終が語られる。語るのは、ゲソの腹心・金森であり、ゲソの死の知らせを聞いたのは刑務所である。一体彼らはどんな関係で、なにがあったのか。読者の興味はいやが上にも増すのである。ゲソは、謎の多い少年だったが、人当たりが良く、才覚もあって、同じ寿司屋の修行の身であり先輩である金森を瞬く間に追い越して、取り立てられるようになる。誰にでも愛想の良いゲソだが、裏の顔は大きすぎる野望のためには手段を選ばない非道さも秘めている。いつの間にか金森はゲソに着いていかざるを得ない状況になり、二人で日本の職を牛耳るという野望を実現すべく行動を起こすのである。ゲソのやり口に憤りながらも、どこまで上り詰めるかに興味を惹かれ、ラストに向かって、ありがちな罠に陥るゲソを複雑な思いで眺めることになった。本店の親方の堅実さが唯一ほっとさせてくれる救いで、あとは、もどかしくやるせない思いで満たされる一冊である。 -
16歳で、寿司職人として、のしあがる"ゲソ"。それに、ついていく金森。
上り詰めるためには手段を選ばないゲソ。「人間のキンタマを握る」やり方がえげつないぐらいに展開されていき、はまりにはまってのしあがっていく。
しかし、その中にある「悲しさ」と「空しさ」が最後に去来して、金森の止められない涙となったのかもしれない。 -
ゲソの魅力と小気味良いリズム感があって、楽しんで読み進めました。
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人を騙して、利用して掴んだ栄光に満足したのだろうか?哀しいね。
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果てしない階段を上っていたと思ったら、実は奈落へ向かっていた。実に恐ろしいのは女性なり。
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想像していたのとは違ったが、面白かった!
テンポがよくてあっという間に読み終わった。
感情移入して、ひやひやする。 -
成り上がり人生の話。
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寿司屋へはなかなか入りにくいもの。少し無理をして通いながら少しずつ学んでいく、その努力は「握る男」に惹かれたから。
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まだ国技館が蔵前にあった頃の両国の寿司屋に見習いで入った金森は、後輩として入ってきた小柄な少年「ゲソ」に出会う。
人懐っこいようでいて冷静に人の心を見つめ利用することに躊躇しない「ゲソ」と金森は、その後、「日本の食を握る」=日本を制することを目標としてのし上がっていく。
ピカレスクロマン、とは少し違うとは思うけれど、ゲソの濁りを飲み干す貪欲な生き方とバブル前後の日本経済および日本の食事情をなぞる物語に興味をひかれて読み進めた。
読みおえてみればそれほど特異な物語ではなくゲソの生き様は王道でもあるように感じるのだけれど、自分をとりまく食についてふと考えさせられる。 -
原宏一らしくない
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ストーリーは典型的な栄枯盛衰だが、著者らしい大胆な構想とゲソこと徳武光一郎の勢いを表すような畳み掛ける展開で読ませられる。
ゲソと金森の関係性も非常に興味深かった。
ラスト手前、金森がゆっくりとお鮨を食べるシーンは沁みた。
読後感はなんだか切なくやるせない。
金森がゲソに相反する複雑な気持ちを持っているように、ゲソもそうだったんだなと思った。 -
面白かった
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16歳のゲソこと徳武浩一郎が鮨職人の見習いから日本の職を牛耳るために外食産業のトップに立つのを目標に、法を犯すような危ないことをして成り上がっていく物語。
主人公金森信次は、その配下になり、生き方を悩みながら同様に突き進んでいく。
終盤、昔お世話になった「つかさ鮨」の親方に握ってもらった鮨を食べ、何も変わらない良さを痛感する場面はなかなか良く、最後の結末は意外であった。原宏一は「ヤッさん」「加代のキッチン」と読んできたが、「床下仙人」も読んでみたい。 -
何度でも読みたい
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サクセスストーリーじゃない成り上がり小説。けっこういい感じ。
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面白かったが、爽快感は無い。
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〈内容〉「この国のキンタマは“食”なんすから」そうのたまい、一介の鮨職人から、外食産業の帝王に成り上がった男・徳武光一郎が自殺。長年「番頭」として彼に尽くしてきた金森は、刑務所でその報を知る。人、金、権力。全てをその手に握った「食王」に、一体何が起こったのか。
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「握る男」の意味は、読まなきゃ分からない。
寿司屋の小僧が「どんな手でも使って」食の世界を登っていく。その道程は、さながら企業小説。
登りつめた先に見える景色は、どんな色か。
最後に本当の「握る男」が、はっきりと立ちのぼってくる。
原宏一の異色作。面白かった。 -
スマホをチャイナにしましたw
ってな事で、原宏一の『握る男』
バブル時代に鮨職人を目指す小僧達の流れからの、ゲソの鮨も握るがキン〇マも握って利用出来る人間は利用し、切り捨てる人間は切り捨ててのし上がって行くお話。
バブリー感一杯じゃけど、その先に見える人生観と言うか、人の根っことはw
単純に面白い♪
原さんの食の表現はええね。
2017年44冊目 -
20230715
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なかなか面白かったです。ゲソの成り上がり方は少しチープでしたが、タイトルの「握る男」とはまさにゲソのことであり、寿司を握ることとキンタマを握ることの二重の意味があるのではないかと思いました。
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寿司屋を皮切りに、キンタマの掴みかたを熟知した人たらしな男と、気弱な普通の男が勢い良く成り上がる話。天才を支えるには、隣に普通の人が必要なんだと思う。ラストはもう一盛り上がり欲しかった。
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人の弱みを握って這い上がっていく
手段を選ばずトップを目指していく
凄い手段だ〜嫌な奴〜って思ったけど、ゲソの背景知ってなるほど、と思った -
sg