- 本 ・本 (200ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041103432
作品紹介・あらすじ
人が集えば必ず生まれる序列に区別、そして差別。自らの“人を下に見てしまう”感覚を吐露し、人間の心の闇に鋭く迫る。なかなか言えないホンネを余すところなく露わにする、著者渾身のエッセイ!
感想・レビュー・書評
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「なぜ人は、人を下に見てしまうのか。」誰もが多少経験あるに違いない、その行為。思い切ったテーマを選んだなぁ、と思いました。「本の旅人」に連載していたときから気になってはいたけれど、一冊にまとまってから読んでみると…正直、最初三分の一ほどはちょっとしんどかったですね。小学生~思春期にかけての、幼さゆえの残酷さというか。見下す側・見下される側が紙一重だった当時を思い出し、何とも苦々しい気持ちになったのだった。差別意識について、ここまで書いちゃうか酒井さん…とも思ったが、あえてここまで自らの過去をさらけ出したという点では、よく振り切ったなぁと思う。
中盤以降はいつもの酒井さんらしくノリも若干軽やかになってきて、「あるある、わかるわかる」と言いたくなる箇所が多数。会社員時代の体験談からテーマも広がってきて、男女、世代間、身長、結婚etc…読みながら、己の心のブラックな面を強く意識しましたよ…。締めの「下種(げす)」は何と清少納言の「枕草子」より。平安時代から人は何の躊躇もなく人を見下していたのだな!ま、そんな感情、当時だって抱くだろうよとは思うが、文学としてしっかりそんな記述が後世にまで残るとは。
人と比べてどうのこうのというのが元来苦手なので、極力マイペースでいることを心掛けてきた。それでも時には他人に対して猛烈に羨ましくなったり嫉妬したりするし、上昇志向むき出しになってしまうこともある。あるいは、他人から上から目線で語られて(例えば、結婚まだ?とか、子供一人だけ?とか)上手く受け流せずイライラを募らせることもある。
誰かと比べて鼻息荒くなったり、どす黒い感情を抱えてしまうのも、みっともないけど自分の姿だよなと…ゲスい自分というのも確かに存在します。そう認めたうえで、たまに現れるマイナスの感情を、別の方向に向けていくことが出来ればよいのかな。
ま~なんだか色々考えさせられました。賛否両論あるだろうけど、酒井さんだから書ける内容だとつくづく思ったわ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
著者のサカジュンは、同い年であり、似たような境遇(負け犬)なので親近感を抱き、できれば友だちになりたいものだ、とおもっていたのだが、一昨年あたりから
「ん? 待てよ。友だちになっても長続きしないタイプのような……」
という気がしてきていた。
でもって本書を読んだらそれが確定した。
「アカン、友だちづきあい、でけへんタイプだった……」
好きなものや価値観が似ているから友だちになれるような気がしていたが、やはり育ってきた環境と根本にある性質が対極にある人とは、友だちづきあいは難しい。
たとえば“鉄子友”や“負け犬同盟”または“『枕』愛好者”としてなら、楽しくお話して盛り上がれるだろうが、お互いの深いところまでさらけ出す友人関係、となるとやはり……なのである。
なにしろサカジュン、とにかく
「他人の目が気になる人」
である。
でもって気にするのは、サカジュン自身がそれこそ重箱の隅をつつくように他人を見ているから、なのであって、そのへんの感覚がわたしにはどうにもこうにも、なのである。
このひと、こんなに他人の目を気にして生きてたら、そりゃ疲れるでしょうよ、と同情してしまいそうなのだが、実は彼女はその疲労は気にせず、意地悪い目でもって観察しまくった人々をネタに本を書いてるのだから心配するのもアホらしい、という話になる。
つーか、ここまで他人のことを気にして観察しないと、おもしろいコラムとかエッセイって、書けないのね。
本書はそのサカジュンの、徹底的に自身の意地悪い部分をさらけ出し、そこに冷静に分析した現代社会のありようと、人々の心理をうまい具合に混ぜ込んだ、読むとちょっといゃあなきぶん、になる一冊。 -
人は意識的であれ、無意識的であれ、他者を自分より下に見てしまう(あるいは見たがる)動物のようだ。他者を自分より格下に位置づけることによって安心したいのだ。「甘い誘惑」の中で今時のいじめは「自分より優れている」または「優遇されている」と見える相手に攻撃が向く。そうしなければ自己の精神の安寧が保てないからだと分析している。私ももっともだと思う。読んでいて酒井さんの鋭い観察眼には驚かされる。同時に人間の「もっともっと」という果てしない欲望、他者を下に見なければ生きることが出来ないという貧弱で醜悪ですらある精神にぞっとする。という私も何処かで無意識に人を下に見ているのかもしれない。
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「人はどんな時に他人を下に見ようとするのか」ということを作者の人生と重ね合わせて考えていくエッセイ。
『世の中をざっくりと上と下に分けるとしたら、その境界線にいる人ほど、他者を下に見たい、という欲求は強くなる』らしいです。
作者は1966年(丙午)生まれで、ほぼ私と同世代。
小学時代から高校時代まで女子校のエスカレーターで過ごし、女子のヒエラルキーの中で揉まれたせいなのか、他者との微妙な差に敏感な作者。
それでも、「誰でも、他者を下に見たくなる欲求」はあるなと我が身を省みながら読み終えました。
せめて「人を下に見る病の存在を自覚し、表に出さないことがマナー」は肝に銘じたい。 -
元・オリーブ少女だったもんで著者先行で読んでみた。
辛口だわね。
タイトルからもちょっとマイナー話というか耳に痛い内容もあり。
ニンゲンのイヤだとは分かっているのにどうしようもない部分をちょっと軽妙に書いている感じ。
同世代なので共感する部分も多かった。
ヒトはヒトであり、みんなに優しく。
難しいけどそう思う。反省文みたいだとも感じた。(M) -
人を下に見る。心の中で思ってはいても外には出せない感情。酒井さんと私は世代が違うからか、むむ?と思うエピソードもあったけど自分が無自覚に頭の中で感じていたことを文章にしてもらった気がしてストンと落ちてきました。
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読んでいてハッとさせられた。私たちは知らず知らずのうちに誰かのことを下に見ていて、誰かを下に見ることで自分の価値、立ち位置を確かめている。人はみんな平等と唱えながらもどこかでそう言うふうに見ていたなと気付かされた。
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2022年12冊目。
こんなにも上だ下だと考えながら生きていくのはしんどい。読んでも読んでもなかなかページが進まない…。正直、読んでいて疲れた。途中でリタイヤ!
著者プロフィール
酒井順子の作品





