- Amazon.co.jp ・本 (198ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041103432
感想・レビュー・書評
-
人は意識的であれ、無意識的であれ、他者を自分より下に見てしまう(あるいは見たがる)動物のようだ。他者を自分より格下に位置づけることによって安心したいのだ。「甘い誘惑」の中で今時のいじめは「自分より優れている」または「優遇されている」と見える相手に攻撃が向く。そうしなければ自己の精神の安寧が保てないからだと分析している。私ももっともだと思う。読んでいて酒井さんの鋭い観察眼には驚かされる。同時に人間の「もっともっと」という果てしない欲望、他者を下に見なければ生きることが出来ないという貧弱で醜悪ですらある精神にぞっとする。という私も何処かで無意識に人を下に見ているのかもしれない。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
負け犬の遠吠え書いた人です。自分はマガジンハウスの雑誌を読んで育ったもので、とにかく読み易い。なんなんだこの肌にすっすと入ってくる感覚…と思いながら読んでいました。冒頭はシリアスです。昔のいじめと今のいじめは標的が異なる、に深く納得。後半に進むにつれ、若干冷笑&開き直り気味になってきますが、最後清少納言が「女子の人間関係」につながるような挙動を披露して終了。一題一題、いちいち納得しながら読みました。あー面白かった。
-
軽く書かれているけれど、酒井順子のエッセイの中ではけっこうシビアな部類に入るものではないか。いじめられていた人でなく、いじめていた人の気持ちを理解してみよう、というのはけっこう斬新だと思う。
-
酒井順子は清少納言である。
人が人を「下に見る」ことで味わう密かな優越、「下に見たくなる、線を引きたくなる」甘い誘惑について、センスの有る無し、頭の良し悪し、地方と東京、男と女などを題材に、こういうことは言うのは勿論、思ってもいけないのが世の中では正しいんだけど、本音は皆さん、こうなんでしょ。私もどちらかと言えば「いじめっ子」の側にいましたからね、知ってますわよと、シニカルな観察眼とクール筆致で鮮やかに切ってみせ、ともすれば読後感がマズくなりがちな内容を、ぎりぎりのところで品性を保たせている。
この本を読んで筆者を嫌いになりましたとのレビューも多いけど、これは本書がそれだけヒトの深層心理を抉っているから。