微睡みの海 (単行本)

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
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本棚登録 : 67
感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041107249

作品紹介・あらすじ

2010年春、東北の港町・仙河海市の美術館で働く笑子が身を投じたのは、元担任と元教え子、二人の男性との激しい性愛−−在りし日の「被災地」の姿と生命を燃やして恋する男女の姿を描いた、肉体の純愛小説。

感想・レビュー・書評

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  • 「仙河海サーガシリーズ」の第二弾。2010年4月から2011年3月10日までの物語。つまり震災直前までの話になっている。主人公は、「リアスの子」で、優等生として一瞬登場した昆野笑子。既に35歳になっている。

    東北の一地方都市の、元教師の元先生や元教え子たちがでて来て、モチーフは絵画、主題は性愛を伴いながら揺れ動く「恋」である。

    236pまで、ここまで共感の出来ない主人公も珍しいなと思いながら、読んでいた。大きく感心はしなかったけど、笑子の決断に至った、自分自身への分析に、初めて共感した。

    大人の恋である。このあと、どうなるにせよ、次の日には大きく変転するのは確かではある。

    装画はagoeraという人らしい。笑子のことを上手く描いていた。

    2017年3月16日読了

  • 中学教師かぁ、大変だろうな。
    せっかく美術館に職場をかえたのに、会いたくない人に出会ってしまうなんて。
    教え子のせいで学校に行けなくなったと思い込んでたんだもんなぁ、これはツライ。
    両親も教師なら、なおさらきっちりした自分でないとと強く思っていたに違いない。
    力を抜いて自由にと思ってもこればっかりはなかなかできないわな。
    祐樹に救われたなぁ。その絵に何らかの力を貰ったのか。

  • 元中学教師で現在は地方の美術館で学芸員になった笑子は、副館長の貴之と不倫中。そこに元教え子の祐樹が現れ二人の男性の間で揺れ動く。東日本大震災の前年から始まった物語は、その前日、未来を感じさせる記述で終るという構成が余韻を残していて小憎らしい。文章も読みやすい。でも、表紙の穏やかな海に漂っている女性みたいに、笑子が何だか醒めていて、恋に揺れている感じを受けないのが残念。彼女が一番揺れたのって、恋ではなくトラウマになっている男子生徒との再会じゃなかろうか?官能描写もあったけど、個人的には艶っぽさを感じなかったなあ。官能表現も含んだ小説って最近は女性作家の方が攻めていて面白いのが多いような気がする。

  • 熊谷達也 著「微睡み(まどろみ)の海」(2014.3)、仙河海(せんがうみ)市が舞台です。中学校の教員から美術館の学芸員になった笑子(えみこ)(35歳)が、副館長(50)との不倫の恋、元教え子(21)との激しい恋、このふたつを清算し微睡みの世界に移らんとする姿(心)が描かれています。私にとっては、あまり好きになれないストーリーですw。笑子の同級生だった友達、希(のぞみ)がいい味を出しています。

  • ありきたりな話だが、3.11の前日、という意味を我々読者がわかっているからこそ読後感が大きく異なる。登場人物の日々はそこでは終わらない。事実は小説より奇なり、とはよく言ったものだ。作者の意欲を感じる。

  • 破滅ってそういう事?

    ちょっと苦手でした。

  • はじめまして。綺麗な文章、お手本のような感もありますが。
    勝手に気仙沼と思って読んでいましたが、また探したいと思います。
    2014/7/18読了

  • 昆野笑子は中学教師を止めて美術館に勤務している.副館長は笑子の元教師だが不倫関係に在る.美術展で賞を得た吉田裕樹は元教え子.裕樹に絵を教えることになり、二人は深い関係になる.笑子の同級生の早坂希が笑子の気持ちをよくフォローする場面が良かった.でも著者は男性だが、女性の心の中をうまく描写しているのは素晴らしい.

  • 心に傷を負って中学教師を退いた美術館学芸員の笑子は
    かつての中学担任で現上司である男と不倫中。
    そして再会した中学の教え子とも関係を結ぶ。
    年上と年下、性愛と人目、直情と客観、
    様々に揺れ動く女性心理はわからなくもないが
    その終着に3/11を持ってくるのは
    しかもそれを匂わせるだけで終わるのは
    なんだか卑怯な気がしてしまう。

    【図書館・初読・6/5読了】

  • ☆2つ
    うーむ、なんともどうにもフクザツな心境に読み手を追いやってしまう作品である。
    こういうことめったに書かないけど私の苦手な感じのお話である。
    宮城県の仙台にほど近い場所にある「仙河海市」というのは、作者がこの物語シリーズを書くためのに創った架空の町の様だ。そう、この物語はシリーズなのだ。何作目かは知らないし何作まで続くのかも知らない。だけどわたしは全部読んでいる。たぶん。

  • 『リアスの子』と同じ作家の作品という事を読了後に知った。在りし日の宮城県を舞台にした作品。3.11の前日までの宮城県仙河海市で男女3人の壮絶な恋愛を描いている。あらすじには純愛な肉体小説とあるがその部分に関しては首を傾げてしまう。主人公である笑子の恋愛観(ただし、略奪愛以外)が自分自身に似ているので共感する部分が多かった。笑子は恋愛で身を滅ぼす典型的な人かもしれない。『リアスの子』とは真逆の作品だとは思う。私的にはこちらの方が好きである。

  • [2014.04.07]

  • そこで終わりなのか…でも、それ以上は書けないのだろう

  • 恩師と教え子を同時に愛してしまう元中学校の美術教師。東北の小さな街での日常を描く。愛する二人は何もかもが正反対。そんな日常をあっと言う間に変えたあの出来事。

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著者プロフィール

1958年仙台市生まれ。東京電機大学理工学部卒業。97年「ウエンカムイの爪」で第10回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。2000年に『漂泊の牙』で第19回新田次郎文学賞、04年に『邂逅の森』で第17回山本周五郎賞、第131回直木賞を受賞。宮城県気仙沼市がモデルの架空の町を舞台とする「仙河海サーガ」シリーズのほか、青春小説から歴史小説まで、幅広い作品に挑戦し続けている。近著に『我は景祐』『無刑人 芦東山』、エッセイ集『いつもの明日』などがある。

「2022年 『孤立宇宙』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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