- Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041110782
感想・レビュー・書評
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結局は「ウジウジ度」の問題なんだろうな。
あらすじは下に書きましたが、登場人物たちがそれぞれに問題を抱え悩み、一歩を踏み出せずにいます。それがちょっと度を過ごしていて余りにもどかしいのです。閉塞感におぼれ、中島さんの特長であるユーモアが身を潜めてしまった感じがします。
もう一つ、どうも人物像がしっくり来ません。ムーンライト・インの持ち主の虹之助さんは80歳過ぎで今も果樹栽培とジャムやジュースの工房を運営しているのですが、そういう生活感がありません。また主人公の拓海の異常なほどの引っ込み思案(ウジウジ度)とこれまでの経歴が結びつきにくく、マリー・ジョイの一見あっけからんとしたキャラは好きですが、どうにもモデルのローラさんがちらついて邪魔になります。LGBT、老人介護、親子の断絶、ワーキングプア、外国人の就労問題。少々盛沢山に世相を折り込んで話は進みます。
最終的にはそれぞれが小さな一歩を踏み出して、明るいであろう未来を感じさせて終わるのは良いのですけど。
【出版社の紹介】
だいじょうぶ。何かにつまずいた時、 あなたを待っている場所がある。
職を失い、自転車旅行の最中に雨に降られた青年・栗田拓海は、年季の入った一軒の建物を訪れる。穏やかな老人がかつてペンションを営んでいた「ムーンライト・イン」には、年代がバラバラの三人の女性が、それぞれ事情を抱えて過ごしていた。拓海は頼まれた屋根の修理中に足を怪我してしまい、治るまでそこにとどまることになるが――。
人生の曲がり角、遅れてやってきた夏休みのような時間に巡り合った男女の、奇妙な共同生活が始まる。