隠居おてだま

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041118894

作品紹介・あらすじ

老舗糸問屋・嶋屋元当主の徳兵衛は、還暦を機に隠居暮らしを始めた。
風雅な余生を送るはずが、巣鴨の隠居家は孫の千代太が連れてきた子供たちで大にぎわい。
子供たちとその親の面倒にまで首を突っ込むうち、新たに組紐商いも始めることとなった。
商いに夢中の徳兵衛は、自分の家族に芽吹いた悶着の種に気が付かない。
やがて訪れた親子と夫婦の危機に、嶋屋一家はどう向き合う?
笑いあり涙ありの人情時代小説『隠居すごろく』、待望の続編!

感想・レビュー・書評

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  • 「隠居すごろく」の続編。
    前作から間が空いたので詳細を忘れていたが、読んでいくうちに思い出した。

    糸問屋〈嶋屋〉の主人だった徳兵衛は還暦を機に隠居。人生を双六に例えれば、『隠居は上がり』だと思っていた徳兵衛だったが『上がり』どころか新たな双六が始まってしまう。
    その大元は孫の千代太。
    今で言えば貧困家庭の子供たちを連れてきて徳兵衛に助けを乞い、結果千代太をリーダーにした参詣案内商売をさせている。
    また千代太の拾い癖がきっかけで組紐屋〈五十六屋〉を始めることになるのだが、これまでの『苦行』と違って商売を楽しむようになった…というのが前作までの話。

    今回の続編を大まかに表現すれば第一話のタイトル『めでたしの先』ということだろうか。

    千代太が最初に『拾ってきた』親友・勘七の父親が三年ぶりに帰ってきて、家族が揃い家計も安定してめでたしめでたしかと思えばそうはならず…。

    千代太の友人の一人・瓢吉の母親が、再縁した相手の理解もあり瓢吉・逸郎兄弟を引き取りたいと言ってきた。稼ぎをそっくり色街につぎ込む父親と離れられるし、母親の再婚相手も連れ子も優しいので母と暮らす方が良いに決まっているのだが…。

    徳兵衛の末娘・お楽は夫と死別後、次々と男を変えて付き合っているが、ついに錺職人・秋吉という良い相手と巡り合った。だが徳兵衛が許すはずもなく更にお楽は妊娠が分かって…。

    前作に比べると徳兵衛の四角四面さが少し取れてきたような。お付きの女中・おわさにも度々『ご隠居は変わりましたね』と言われている。
    千代太の拾ってくる難題を嫌がりつつも一緒に考えたり、何より貧困家庭の子供たちのことを気にしてくれているのが嬉しい。

    だが最後の最後にとんでもないことが。
    残り少ないページ数でどう収めるのかとハラハラしながら読んだが、上手く収まったようなまだ先があるような。
    他の子供たちの問題やおわさの息子で下男の善三の恋愛問題、秋治・お楽夫婦の今後や〈五十六屋〉の仕入れ先問題などまだ解決していないものもたくさんある。
    もしかすると更に続編があるのだろうか。

    身内の悶着を『お手玉』に例え、『慣れぬお手玉を、三つも四つも手にしているかのよう』と表した丸喜屋ご隠居のように『ずっしり重いお手玉を握らされている』徳兵衛の今後も見てみたいし、なにより子供たちの成長も見守りたい。

  • 始めの江戸の商いの様子が「あれ?私、あきない世傳読んでたっけ?」と勘違いしそうなぐらい似ていた。でも話の最後に向けてちゃんと、西條さんらしい人情が出てきた。うんうん、よかった。

    やっぱり出てくる子供たちが可愛いねー。どんな状況でも、どんな家庭でも、子供が持っている純粋な心は出来るだけ守ってあげたいものですね。
    そしてみんなに話を内緒にされてたご隠居が、ちょっと可哀想だったかな。そりゃ怒っちゃうよ。

  • 『隠居すごろく』の続編。

    老舗糸問屋〈嶋屋〉の元店主・徳兵衛の隠居家は、孫の千代太の“拾い癖”のおかげで毎日大賑わい。
    組紐屋〈五十六屋〉、子供商いの〈千代太屋〉そして徳兵衛の妻・お登勢が師匠を務める手習所〈豆堂〉という三施設(?)を回している状況です。
    そんな中、徳兵衛の末娘で出戻りのお楽が錺師の秋治と恋仲になり、赤子を身ごもっていることが判明して・・・。

    前作に続き、すっかり“生活&就労支援センター”化している徳兵衛の隠居所。
    各キャラの関係性などを思い出すためにも、巻頭の“登場人物紹介”がありがたかったです。
    今回は、勘七や瓢吉の両親の問題だったり、善三の恋だったりと、男女のあれこれがテーマになっている印象でした。
    特にメインとなっていたのは、お楽の“できちゃった問題”で、頑固&堅物爺さんの徳兵衛にバレたらえらい事になる!とばかりに、皆で秘密裏に事を進めていたのが、却って裏目に出てしまうという展開になりましたね。
    徳兵衛にしてみれば、お楽の妊娠云々よりも、自分だけが“蚊帳の外”だったことがショックだったのでしょうね。
    それで拗ねをこじらせちゃう気持ちもわからんではないですが、それは今までの自身の言動が招いた結果でもある訳で・・。
    後半は〈嶋屋〉ファミリーがどうなってしまうのだろう・・と、心配でハラハラしました。
    とはいえ、ラストはほんのり光が見える感じで終わっていましたし、他のキャラ達の今後も気になるので、続きがあるものと期待したいですね。

  • 野生時代2021年7月号〜2022年9月号連載のものに加筆修正して、2023年5月角川書店刊。シリーズ2作目。前作同様にごちゃごちゃしたお仕事人情ストーリー。今回はうまく感情移入できず、納得できないままラストへ。残念です。

  • <無>
    この本はどうやらシリーズものらしい。本の帯とかにシリーズものであることを明記していないせいか,僕はちっともそう云うモノであることを覚えられない。シリーズ物にも二種類あって,シリーズの途中から読んでもそこそこ面白いものと,シリーズの最初から呼んでないとキャラクターの個性などが分かっていなくて面白さが半減してしまうもの。この本がどちららのかはよく分からない。でも多分僕はこのシリーズの既刊本を全部読んでいるだろう。

    単行本で出る番度手に入れて読むからおそらく一年に一冊というインターバルになっている。なのでシリーズ物なんだという記憶が生まれないのだ。登場人物の名前を憶えて長く記憶しておくのは最近はとても苦手なだ。 でおい,この本はいったいに面白いのかそうでないのかくらい書けよおまえさん,と叱られそうなのだが,まあちょっと待て(笑)。

    ところで ようやく 西條加奈 と 西加奈子 の区別をつけるきっかけが本書でつかめたような気がする。思えば長い間二人がこんがらがったままだったのだ。テヘラン生まれの方は,その事をちょっといばっている感じがした時期があって,僕はそれがかなり鼻についていた。でも本は面白いのでこれまた多分全部読んだ。
    時代物作家の方は,物語がちょいと僕には難しい様な気がして苦労した。本書もどっちかと云うとそうだな。これしきの物語でそうなのだから僕はヘタレなのだ。

    話に出てくる「曲尺」 かねじゃく と読むが きょくじゃく とも云うらしい。字からするとまあ曲がった定規だな。でも実は曲がってはいなくて直線なのだ。雲形定規でもない限り曲がりくねった定規ってのは使い物にならないもんなぁ。曲尺は直角90度に曲がったL字型定規だ。大工さんや工場で物造り仕事をする人の大事な道具だし,少し前には普通の家庭にも一本くらいはあったのではなかろうか。でそれがどーした,って。いやいや別にどーもしないよ。こういう風に話題を自分でふって作文してくんだ,ってだけだよ,相すまんね。

    江戸時代の物語。江戸時代の詳しくいつ頃なのかは分からないし まあ調べようとも思わない。ただ言いたいのは離縁の多い時代だったんだなぁ,と云う事。物語の都合上離縁が無いと話が進まないのはまあ分かるがそれにしても離縁して男の子は父方へ 女の子は母方へ引き取られて育てられる,と云う設定がいくつも出て来る。何をと云うのはもう軽く300年も昔の話だろうになんでそんなことが詳らかに分かるのかなぁ とも思う。まあ所詮小説作り話だと思えばそこそこどうでもいいのだが。

    このお話 女子の名にほとんど全部「お」が付く。「お」と云っても「おま〇こ」ではないよ(笑)「お」は付くが決して「こ」は付かないんだ。(ここのコメント欄は誰も一切読まないので あえて僕の好きなシモネタに振ってみたが すまぬのうw) さて では 例を挙げてみるがいくらでもある。おみつ,およね,おつる,おみち,おしん,おふね,おさね,おふさ,おひち,おなつ,おはる,おこま,おこん,おこね,おすぎ,おまつ,おせん,おあん,おなみ,おはん,およし,おみよ,おとも,おゆみ,おけい,おゆう,おさね,・・・。

    現代の女子名もあたまに「お」を付けるとほとんど自然に成り立って呼べてしまうのがこれまた不思議だ いや脅威だ。おせい(せいこ),おるり(るりこ),おまさ(まさこ),おじゅん(じゅんこ),おりょう(りょうこ)・・・このくらいにしておこう。キリがない。要するに登場女子名は皆んな「お〇〇」なので 名前覚えの苦手な僕はちっとも覚えられなくて おかげでお話がチンプンカンプン状態なのだよ!と言い訳したかったのだ(笑)

    このシリーズ次が出たらまた知らずに忘れてしまって読むのだろうなぁ。くよくよ。 ああぁ,やっぱりちっとも読書感想文にはなっていなかった。すまなかった。

  • 【収録作品】一 めでたしの先/二 三つの縁談/三 商売気質/四 櫛の行方/五 のっぺらぼう/六 隠居おてだま

    時代を考えればそうなんだろうけれども。
    「隠居」の頭の固さはよくもあり悪くもあり。
    順序が違うというところは同意。


    物語でなくてもこんなことがうまくいくわけがないのだから、最後も予想通りの展開。ホームドラマだから、なんとなく収まる感じで終わる。

    でも、もやもやする。いっそ出家してすっぱり縁を切って、思い知らせてほしかった……
    もちろんこの物語のテイストには合わないのだけれど。

  • 読み終わったらほっこり
    めでたしめでたしで終わらない話。家庭の事情を各々で消化していく頼もしい子供たちの話。そして、投げても戻ってくるお手玉のように、隠居しても悶着が続きます
    最後はどうなることかとドキドキ。でもほっこりで終わって良かった!

  • 「隠居すごろく」の続編。
    前作のラストですごろくはあがりだったので、まさか続編が出るとは思わなかった。

    末娘・お楽の一大事。徳兵衛を上手く纏めるために嶋屋総がかりで一芝居打つことに。
    お楽の幸せを優先してしまったが為に、一人だけ知らされず、騙されたことで徳兵衛の心がどれだけ傷つけられたか。
    ラストは上手く纏めようとしているのだろうが、何かスッキリしない。

  • 直木賞作家の西條氏の作品。人情などあるけど西條氏ならもっと深みがある作品にできる筈と少し残念。

  • シリーズ第2弾!
    孫の千代田の相談におよび腰な徳兵衛にクスリ。
    いったい今度はどんなお願いなのか、ビクビクする徳兵衛の姿が目に浮かぶ。
    前作から成長した千代田も相変わらず真っ直ぐな気性で、その素直さと優しさにほっとする。

    徳兵衛が隠居後に立ちあげた幾つもの“商い”を舞台に、子どもたちや奉公人たちと繰り広げる毎日がにぎやか。

    徳兵衛の娘・惚れっぽいお楽のお相手、お楽の選択は?
    みんなで何ヵ月も協力してきた「企み」はうまくいくのか…。
    誰かを思っての企みではあるけど、今回は徳兵衛の心中を思うと同情してしまう。

    これどうなるんだろうって思いながら読んでて、終盤は涙ぐんでしまった。

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著者プロフィール

1964年北海道生まれ。2005年『金春屋ゴメス』で第17回日本ファンタジーノベル大賞を受賞し、デビュー。12年『涅槃の雪』で第18回中山義秀文学賞、15年『まるまるの毬』で第36回吉川英治文学新人賞、21年『心淋し川』で第164回直木賞を受賞。著書に『九十九藤』『ごんたくれ』『猫の傀儡』『銀杏手ならい』『無暁の鈴』『曲亭の家』『秋葉原先留交番ゆうれい付き』『隠居すごろく』など多数。

「2023年 『隠居おてだま』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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