骨灰

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 182
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041119952

作品紹介・あらすじ

大手デベロッパーのIR部で勤務する松永光弘は、自社の高層ビルの建設現場の地下へ調査に向かっていた。目的は、その現場について『火が出た』『いるだけで病気になる』『人骨が出た』というツイートの真偽を確かめること。異常な乾燥と、嫌な臭い――人が骨まで灰になる臭い――を感じながら調査を進めると、図面に記されていない、巨大な穴のある謎の祭祀場にたどり着く。穴の中には男が鎖でつながれていた。数々の異常な現象に見舞われ、パニックに陥りながらも男を解放し、地上に戻った光弘だったが、それは自らと家族を襲う更なる恐怖の入り口に過ぎなかった。

感想・レビュー・書評

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  • 開発中ビルの地下で見たものは… 心の内側に入り込む恐怖、いつの間にか不思議な世界に誘われる #骨灰

    ■あらすじ
    大手不動産開発会社のIR部に勤める主人公は、開発中のビルの調査を行っていた。図面にのっていない地下の階段を下っていくと、祭祀場で得体の知らない人物を発見する。しかし彼と脱出を図るも、火災が発生してしまって行方不明に。主人公はトラブル解決に奔走するも、様々な現象に見舞われてしまうことになって…

    ■きっと読みたくなるレビュー
    いつのまにか不思議な世界に誘われる恐ろしい物語。
    この本を読むと、きっとあなたは得体のしれない体験をすることになります。

    骨灰とはなんなのか… 特に東京に住んでる皆さんは覚悟してください。
    明日から、大きなビルやマンションに入れなくなってしまうかもしれませんよ。

    本作はホラー小説にも関わらず、現実感があるんですよね。ありえない現象が次々と襲い掛かるんですが、登場人物の息遣いがすぐ近くで聞こえてくるようで。そして作品全体から生あたたかい生気も漂ってくるんです。決して派手ではなく、胃の奥にドスンとくる、地味で重いホラー小説でした。

    特に中盤の主人公とその家族の描写がきつかった。日本のどこにでもいるようなサラリーマン、昭和時代の価値観を持つ上司。妊娠中の妻と小さな娘と暮らし、他界してしまった父親と年老いた母親がいる。

    家族を守るために一生懸命働いているだけなのに、どんどん壊れていく姿がマジで読むに堪えなかったです。私も日々働いていますが、たまには旅行にでも行って、体と精神を休めたほうがいいかなと思ってしまいました。

    そしてなんといっても最終盤ですよ… これほどの不快感、後味の悪さはないですね。いい意味で最高のホラーです。強烈なエグ味を体験することになるでしょう。

    ■きっと共感できる書評
    いつの時代から真面目な人ほど損をする時代になったんでしょうか。無駄なことを一切やらず、地道で時間のかかる改善は毛嫌いする。自分はリスクを避け、他人のことは考えない。この現代人の呪いみたいな価値観を、本作からも痛切に感じました。

    ずる賢くなくコツコツ働いてきた人こそ、少し間違えば生活困窮者になりうる。難しい時代だからこそ、周りの人には優しく生きてほしいと思いました。

    • yukimisakeさん
      初めまして、コメント失礼します。
      今1番読みたい作品がこちらの骨灰でして、akiさんの素晴らしいレビューを拝見して益々楽しみになりました!
      ...
      初めまして、コメント失礼します。
      今1番読みたい作品がこちらの骨灰でして、akiさんの素晴らしいレビューを拝見して益々楽しみになりました!
      図書館で予約していまして、あと6人か…と毎日睨めっこしております。

      共感できる書評を拝見して、そんな事まで感じさせてくれるホラーなんだ…と、今から既にドキドキしております。ありがとうございます!
      2023/08/22
    • autumn522akiさん
      yukimisakeさん、こんちわです。
      稚拙なレビューなのにお褒めいただきまして、ありがとうございますmm
      直木賞候補作ですからね~、...
      yukimisakeさん、こんちわです。
      稚拙なレビューなのにお褒めいただきまして、ありがとうございますmm
      直木賞候補作ですからね~、図書館でも人気だと思います。

      社会課題を指摘した超骨太なホラーミステリーです、ぜひぜひ楽しんでください!
      2023/08/23
  • 都市にまつわるホラー小説だと思います。

    途中までネタバレしていますので、これから読まれる方はお気をつけください。


    シマオカグループの財務企画局IR部の再開発事業に携わる松永光弘が主人公です。
    松永は東棟の地下の人骨が出た穴に入り、一人の人間が鎖に繋がれているのを見つけチェーンを外して逃がしてやります。

    松永には妊娠7か月の妻の美世子と小学一年生の娘の咲恵がいます。
    松永の家からは、電子レンジや扇風機から火が出てボヤが出ます。

    取引先の玉井工務店の荒木奏太はおはらいの札を買うことを松永に勧め、又、穴で縛られていた人物は認知症の症状がある人物を鎖で繋いで地下に閉じ込める契約をしていた原義一というれっきとした人物なのだと説明し、松永は家族の安全のために高額なお札を買い、仕事として原義一を探しはじめます。

    路上生活者だった原義一は、すぐに見つかりますが、穴に再び連れて行くと見失ってしまうということの繰り返しでした。
    松永は14名の原義一を穴に連れていきます。
    またその頃から松永は死んだはずの父に命令されることが多くなり、それを不自然に全く思っていません。

    骨灰は故人に化けるのです。
    松永は完全に祟られてしまったのです。

    色々な事件が起こりますが松永が父のことに気が付かないのが不気味なくらいでそれ程怖い話ではないと思いました。

    でも、一体何の話だったのか私はよくわかりませんでした。

  • 大手デベロッパーの財務企画局IR部に勤める松永は、SNSで発信された悪質なつぶやきの調査をするために建設中の現場地下へ出向く。
    暗い地下階段を降りていき、そこで感じた異常な乾燥と臭いと見たものとは…。

    その日から松永の住むマンションで不可解な出来事が起こり、家族の不調も続く。
    松本自身も今までに感じたことのないものに侵されたような…。
    後半には何者かに支配されて、取り憑かれたかのようで恐怖しかない。
    延々と身に纏わりつくものの恐怖に最後まで気になり一気読み。

    誰かを犠牲にして世の中が成り立っているとは、考えたくないことだと思った。

  • 読んでいると背後で何か恐怖を感じ鳥肌が立つような感覚に…

    大手デベロッパーのIR部で勤務する松永光弘は、不気味なツイートの真偽を確かめるため、自社の高層ビルの建設現場の地下へ調査に向かう
    調査を進めていくと、図面に記されていない巨大な穴のある謎の祭祀場にたどり着く

    その穴の中には男が鎖でつながれていた

    その男を開放したことが恐怖への始まりだった…

    様々な異常現象に襲われ、家が…、家族が…、光弘自身が…

    恐怖のキーワードは、「穴」「灰」「火」「見えないお客さん」「人柱」

    この恐怖の正体は一体なんだろうか…
    ((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル

    • 1Q84O1さん
      では、準備しておきますね!
      さらに高いのもありますのでいつでもおっしゃってくださいw
      ただし、遺品は用意できませんのであしからず…
      では、準備しておきますね!
      さらに高いのもありますのでいつでもおっしゃってくださいw
      ただし、遺品は用意できませんのであしからず…
      2023/10/06
    • ゆーき本さん
      見えないお客さん…
      なんというホラーワード《(;´Д`)》ブルブル
      見えないお客さん…
      なんというホラーワード《(;´Д`)》ブルブル
      2023/10/10
    • 1Q84O1さん
      ゆーき本さん、もし見えないお客さんが見えてたらご連絡を…
      ゆーき本さん、もし見えないお客さんが見えてたらご連絡を…
      2023/10/10
  • 冲方丁さん初のホラー作品。
    「天地明察」のイメージが強くて、歴史系たどか、
    SF系の作品を多く出されているのですが、私にとって初めての著者の作品がこの作品でした。
    読み終えて率直な感想としては、怖かった。
    あまり、ホラー小説を読まないからこそ実写の
    映画より頭の中で映像を創造するので、よりリアルに浮かびました。

  • 直木賞候補だったから、ちょっと期待が大きすぎたのかな?それともこの世界観が私には合わなかったのか…結構読むのに苦労してしまった。
    亡くなった人が焼かれた灰である『骨灰』。関東大震災、東京空襲を経て東京の土にはその骨灰がたくさん混ざっている。そこまでは、あぁ確かにそうかもしれない、と納得できたのだが…その後の展開が全くついていけなかった。そもそも呪いや祟りというものに胡散臭さを感じてしまうので、その拒否感から物語に入り込めず、死んだはずの父が現れたことを受け入れ、どんどん常軌を逸していく主人公にイライラしてしまった。

    終盤ようやく光弘が正気を取り戻し、荒木も祟られていたことがわかったところからは、やっとミステリー展開となって面白かった。

    全体的にはホラー要素が強いように思うので、そういう話の好きな方ならとても楽しめる作品なのでは…と思います。

  • 図書館でなんとなく借りたら、ホラーだった。ホラー嫌いではないが、エクスペクトしていなかったので、ちょっと驚。
    渋谷駅とかだったか、都会のど真ん中の都市開発の工事現場、といっても新築とか新規ではなく、再開発。そこに呪いを鎮める施設があって、知らんと入った主人公が呪われるっちゅう話。
    途中、内容がものすんごくめんどくさくなって、読むテンポがわるくなったが、序盤と終盤はそれなりにまとまっていて、最後までなんとか読めた。ありがちな都市伝説はほんまのことやった、というような内容かねぇ。

    どうでもええが、序盤で親子3人でお好み焼きを食べるシーンがあるんだが、
    「三人で二枚半も平らげたのちは逆に満腹責めだった。」
    一人で2枚半なら満腹責めにもなろうが、1人子供とはいえ、三人で2枚半は少なかろうと思う。なんていうか、都会の人は飯を食わん、、と、再認識した。

  • 落ちる、堕ちる一冊。

    隅から隅まで白い灰が絶えず降りかかる止まらないホラー。

    "東京二十三区女"を思い浮かべながら東京のアンダーグラウンドに眠るもの…いや、息づくもの…それらを興味深さと震えと共にまざまざと見せられた気分。

    穴に落ち、そこから一転、まさにホラーアリ地獄に堕ちていくかのような主人公の境遇に言葉が出ない、祟りに対して背筋凍る抗えない恐怖を味わった。

    世の中、見えないもの、説明がつかないものってたしかにあると思う。

    でもこの決着の付け方があり得ない。
    好きじゃない。

    これでは一生、心には杭、悔いが残りそう。

  • かなり後悔している事があります。
    夜中にこれを読んでしまった事です(睡眠改善をしている人間がする事ではない)

    コ ワ す ぎ る !!

    私はホラー耐性が強いと豪語しておりましたが、撤回しようかなと本気で悩みました。

    以下、もしかすると軽くネタバレになるかも知れない表記がありますので、何も知りたくない方はご注意下さいませ。



    ***********************

    前半から中盤にかけて冲方さんの圧倒的な文章力によって、こちらの脳内にまで侵食してくるような怪異が続きます。
    途中、突然に不安になり本をパタンとして後ろをゆっくり振り返ってしまう程。
    そして溜息を付いては再読へ。
    中盤までは主人公の光弘と共に襲い来る恐怖と戦い続けたのですが、私にとっての真の恐怖はここからでした。

    個人的に最も恐ろしいゾクリポイント。憑かれた人間が壊れていくターンが始まります。

    ダメ!あかんて!
    光弘それヒトやない、骨灰や!!

    と、思わず火垂るの墓の清太になってしまい、何度も脳内で光弘の名を叫んでしまいました。

    しかしこれは本当にフィクションなのでしょうか。
    そう思わざるを得ない臨場感。実際に東京は火に纏わる痛ましい傷を乗り越えて来ており、その上に巨大なビルや駅が聳え立っています。
    更に社会福祉問題にも切り込み、止むを得ず浮浪者になってしまった原さんの行動に、ホラーだと言うことを一瞬忘れて涙ぐんでしまう程でした。

    呪いは天災のようなもの。天災は避けられようもありませんがなるべく被らないように、足を踏み入れてはならない場所や、これみよがしに何かを封印している場所には近寄らないようにしようと心に固く誓ったのでした。
    触らぬ神に祟りなし…。
    光弘、よく頑張った!!!(偉そうに)

    さて、『近畿地方のある場所について』に引き続き読んだので、計らずしも東西ホラー対決をしてしまった訳ですが。

    東京って、怖い所だなぁ…(失礼すぎる)

  • 企業のIRを担当する松永はTwitterで流された風評が事実か、建設現場の地下で証拠を捜索する。そこで見つけたのは巨大な空間と穴と囚われた人。地上に連れ出すも姿を消された後、奇怪な現象が松永の周りで起き始める。

    廊下に無数に現れる足跡などのホラー描写がじわじわと恐怖感を増してくる。ただ、そういった恐怖感を煽る描写や不可解な現象だけでなく、松永が陥っていく状況が怖い。

    家族とのちょっとした諍い、義父母の態度などにイラッとしたところから、崩れていきそうになる感じ(落ち着いて話がするものの心の中で納得しない感じ)が、ある影響が絡んでいると思っても、日常であり得るなと思うと、ゾッとする。奇怪な現象がなくても、ちょっとした人間関係から崩れていくのが、真のホラー要素で、この本の怖いところなんではないかと思う。

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著者プロフィール

1977年岐阜県生まれ。1996年『黒い季節』で角川スニーカー大賞金賞を受賞しデビュー。2003年『マルドゥック・スクランブル』で第24回日本SF大賞、2010年『天地明察』で第31回吉川英治文学新人賞、第7回本屋大賞、第4回舟橋聖一文学賞、第7回北東文学賞、2012年『光圀伝』で第3回山田風太郎賞を受賞。主な著書に『十二人の死にたい子どもたち』『戦の国』『剣樹抄』『麒麟児』『アクティベイター』などがある。

「2022年 『骨灰』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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