潮風テーブル (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 131
感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041137581

作品紹介・あらすじ

葉山の海辺にある小さな料理店のオーナーである海果は、葉山生まれの海辺育ち。高校を卒業した矢先、シングルマザーの母親が恋人と家を出ていき、残されたのは小さな店と借金だけ。途方に暮れる海果だが、しっかり者の中学生・愛と、窓辺で客を招いてくれるキジトラ猫サバティーニの協力のもと、四苦八苦しながらも店を切り盛りしている。地元で採れる新鮮な魚や野菜を使った料理は好評で、素朴な海果の人柄に惹かれ、お店を訪れる人々も増えていた。だが、その夏初めてきた台風で店が甚大な被害を受けてしまい、さらに近所にパスタの有名チェーン店ができる。店を襲うピンチに頭を抱える海果だが、店ごと買い取りたいと申し出ている男性から、母との意外な関係を聞かされ、さらに気持ちは揺れ動く――。

感想・レビュー・書評

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  • 【あらすじ】
     海果の店の近くに、大手チェーンが経営するパスタ専門店がオープン。
     台風で家の壁が損傷を受け、その修繕費も用意しなければならないのに、売り上げに影響が出始める。
     一方で、野球選手として復帰するためのトレーニングを開始した一郎も、自分の進むべき道に迷いがあるようで。
     葉山を舞台に描かれる湘南キッチンシリーズ第三弾。

    【感想】
     今回は、STORY STORY YOKOHAMAさんから、特典付きのサイン本をお取り寄せ。
     この湘南キッチンシリーズはお気に入りで、本棚に並べておきたいので、サイン本で欲しかったのです。
     直接サインをいただいたこともあるのですけれどね(^^;;
     もともと喜多嶋さんの作品はメッセージ性の強いものが多いのですが、このシリーズは、かなり直球のストレート。
     何を恥ずかしいと思うか、何を誇りに思うか。それは人それぞれだとは思います。
     けど、私は喜多嶋さんが描く登場人物たちのように、自分に恥ずかしくないよう、背筋を伸ばして、自分の足で一歩一歩地面を踏み締めて、生きていきたい。
     このシリーズでは、1冊目から、貧困差や企業や政治家の不正問題を取り上げていて、今、何を考えるべきか、何を恥じるべきかということについて、考えさせられます。
     私は10代の頃に、喜多嶋さんの小説から「人生の流儀」という言葉を教わりました。
     人生は長く曲がりくねった道だけど、その道を歩く、自分の生きる流儀を決めるのは自分自身。
     哲学とか、政治とか、そんな難しい分野でなくても、身近なところから、考えることは出来ます。
     本作もそんなことを教えてくれる1冊になっていると思います。

  • 連作だったんですね。いきなり3部から読んでしまった。
    葉山が舞台です。

  • 借金を残したまま母親が家を出て、一人になった18歳の海果

    母親が入院、父親が不在の中学1年生 愛と2人で築50年の小さな居酒屋〈つぼ屋〉を切り盛りしている

    その夏……台風で家が大きな被害を受けたうえ、近くにパスタのチェーン店が出店して売上が下がり大ピンチに

    プロ野球復帰の思いを秘める若い漁師の一郎
    左遷と離婚のピンチにある信金職員 葛城
    低農薬農家の息子 耕平と母子家庭の少女 小織
    選挙違反で父が逮捕された人気の若手俳優 慎

    葉山の小さな料理店を舞台に、魚市場ではじかれる魚やイカと同じ〈戦力外〉の、けれど素朴で実直な人たちの人間模様を描く“潮風が吹き抜ける感動の物語”

    《守りたい居場所が、ここにある》──帯のコピー

    『潮風キッチン』『潮風メニュー』に続く第3作、2023年9月刊

    カバーの写真にもなっている〈つぼ屋〉の新メニュー、食べてみたい

  • 今Melody Fairを聴きながら感想を書いています。
    目を閉じると海果と愛の笑い声が聞こえてくるような気がします。

    この小説は1本のCommercial FilmのようでありLong Movieのようでもあります。
    カメラワークを多彩に切り替え、読者を小説の中へ引きこむマジックを使う、著者、喜多嶋ディレクターが生み出す多彩な映像やセリフ、そしてコピーライティング。
    それらが重なりあった素朴な料理の様でもあり、不思議なカクテルのようでもある小説です。

    飽食の時代に、読者自身が自分を振り返り、警鐘に気づくような作品になっています。
    ※気づけない人もいますけど・・個人差ですから・・
    私は本書を読み進めるにあたって、5回泣きました。
    何処で泣いたか?、この本を手に取った皆さんと同じか否かはわかりませんが、何気ない平凡さ、その平凡を手に入れる事ですら必死に生きて、やっと手入れる幸、そんな、幸せを感じられるような作品に仕上がっています。
    ただ、読者の心を少しだけえぐり取る結果になるかもしれません。
    私はこれで、泣いてしまったのですけどね。

    さて、潮風シリーズの根底にあるのは、貧困と富裕のギャップ。
    日本でもそれは必ず存在しているという事。
    富裕層はそれを理解する事。
    貧困層と書くのははばかられますが、貧困層は前を向いて生きている限り、困った時には必ず助けてくれる人がいるということ。
    助けてもらう事は恥ではなく、前を向いて一生懸命に生きている限り、それは美しく、そして必ず幸せになれるという事。
    だから、何事もあきらめてほしくないというメッセージも込められています。

    全シリーズに、「一生懸命前を向いて生きる」そんな思いが込められていています。
    それを登場人物の生き様に置き換えて、ストーリーを組み立て、読者を感動の涙に誘う小説です。
    今回の「潮風テーブル」もまんまと著者:喜多嶋隆にしてやられた感が否めません。

    それは、のめり込めばのめり込むほど、いつしか登場人物が乗り移ったかのように、小説の中で起きる出来事を疑似体験している感覚に襲われます。
    だからこぞ、プっと笑ったり、涙がこぼれたりするのですよね。

    先にも書きましたけど、
    私も物語りを読み進めるうちに5回は泣いてしまいました。
    なので絶対に電車や会社で読まないほうが良いです。
    ご自宅でリラックスしながら、喜多嶋ワールドを堪能してください。
    そして、登場人物と一緒に、物語りを楽しんでほしいと思います。

    この感想を読む皆様に、もっともっと物語りを楽しんでほしいので、ネタバレは、もう少し経ってから公開する事にします。

    余談ですが、
    私の仲間達で以前、国際NGOチャイルドスポンサーシップや足長育英会に寄付をしていた事もありました。
    今回の慎のCMや、ドキュメンタリーが本当に実現すればよいと個人的には思いました。
    あ・・これはネタばれですね。(笑)

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著者プロフィール

5月10日東京生まれ。コピーライター、CFディレクターを経て、第36回小説現代新人賞を受賞し作家に。スピード感溢れる映像的な文体で、リリカルな物語を描き、多くの熱烈なファンを獲得している。近作は『地図を捨てた彼女たち』『みんな孤独だけど』『かもめ達のホテル』『恋を、29粒』『Missハーバー・マスター』(すべて角川文庫)、『海よ、やすらかに』(株式会社KADOKAWA)など。湘南・葉山に居を構え執筆と趣味の海釣りに励む。

「2022年 『潮風メニュー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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