にっぽん製 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 207
感想 : 24
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041212158

作品紹介・あらすじ

ファッションデザイナーとしての成功を夢見る春原美子は、洋行の帰途、柔道選手の栗原正から熱烈なアプローチを受ける。が、美子にはパトロンがいた。古い日本と新しい日本のせめぎあいを描く初文庫化。

感想・レビュー・書評

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  •  談話室にて教えて頂いた一冊。巻末の解説にこの本を読んで感じた特徴がおおよそ書かれてあるので、ここにはちょっと気になった一文をピックアップしてみる
     「(略)でも死に急ぎすることはありませんよ。……私、ふたまわりも年上の女として言うんだけれど、人生って、右か左か二つの道しかないと思うときには、ほんの二三段石段を上がって、その上から見渡してみると、思わぬところに、別な道がひらけてるもんなのよ。そうなのよ」
     とてもいい言葉なのだけど、後に作者自身がセンセーショナルな自殺をしたことを思うとなんだか結果的に皮肉めいたものを感じる。彼はこの言葉を思い出すことはなかったのだろうか?

  • あご頤で結んだネッカチーフ ほりゆうのしつ蒲柳の質 がいとう外套地 しんかん森閑とした御幸通り 飾窓 ねむけ睡気に襲われて 聴耳 麗々しく賽銭箱が据えてある えりしょう襟章 孔子さまの廟びょう いつもの習性の擒とりこ 豪奢な 仰向いて笑う美子の微笑みは 対抗の会社の選手が呉越同舟で稽古をしているから 御御御付け(味噌汁) 絢爛たる応接間 古い在り来りな 恩顧をこうむった 言い換えれば消費とエンターテイメントの交差の始まりだったのだ 蒲郡プリンスホテル 強羅の環翆楼 美子は衣を着けなければその姿が見えない美の観念であって、正が日本製の身体なのである。美しい身体には愚直と純粋が宿っている、というのが三島の「思想」であった。

  • 読みやすく、50年前の日本に生きる人々のワンシーンを知ることができて興味深かった。

  • 西洋文化を最先端に取り入れているファッショナブルなマダム主人公の恋バナ。

    パトロンと元カレと今彼と、個性ありすぎの登場人物たちに振り回されて分かったこと
    心は結局「にっぽん製」だったのね。いい意味で。

  •  パリ帰りの飛行機の中で出会ったデザイナーの美子と柔道家の正。パトロンに囲われ、男に困らず、華やかなバタ臭い世界で生きる女と、亡き母の教えを尊び、柔道一筋の実直なにっぽん男児。巡り合わないはずの二人が出会い、彼女の嘘に正直な男がだまされ、堕ちてしまうのかと思いきや、孤独な女が愛を知る結果に。やっぱりにっぽんの魂、質実剛健がいちばんである。
     登場人物の名前の符号が面白い。女性は美子で「美」の象徴、男性は正で「正義」を表す。パトロンは金杉で「金」、泥棒であり正の舎弟になるのが根住(ねずみ)。さらに、美子の洋裁店ベニレスとは、フランス語で「うわべ」「見せかけ」という意味だそう。
     1952年当時、ハイカラな小説だったんだろうなあ。わかりやすいので、三島由紀夫を読んだことない人にもおすすめしたい。

  • F-1 日本の小説

  • 真実の愛が好きな三島御大。今回も彼のテンプレート通り。

  • ファッションデザイナーの美子と、柔道五段の正の青春恋愛もの。わかりやす過ぎるぐらいわかりやすい三島由紀夫によるまっすぐな青春小説でした。まだムキムキになる前の三島由紀夫が書いた小説だけど、ムキムキへの憧れがちらほら垣間見えて面白かった。

  • はじめて読んだ三島由紀夫さんの作品。試しに図書館にあった三島由紀夫さんの作品の中で一番薄い本を選んだのだけど、わかりやすく読みやすいことに驚きました。
     ココ・シャネルのような女性が、虚栄心も劣等感・優越感も超えて、自分にとって本当に大切なものを見いだす話なのかな、と想いました。
    他の作品も読んでみようと思えた作品です。

  • お洒落な雰囲気が出ている小説。
    柔道、ファッション、背景、50年以上前の小説にしては想像しやすい内容です。

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著者プロフィール

本名平岡公威。東京四谷生まれ。学習院中等科在学中、〈三島由紀夫〉のペンネームで「花ざかりの森」を書き、早熟の才をうたわれる。東大法科を経て大蔵省に入るが、まもなく退職。『仮面の告白』によって文壇の地位を確立。以後、『愛の渇き』『金閣寺』『潮騒』『憂国』『豊饒の海』など、次々話題作を発表、たえずジャーナリズムの渦中にあった。ちくま文庫に『三島由紀夫レター教室』『命売ります』『肉体の学校』『反貞女大学』『恋の都』『私の遍歴時代』『文化防衛論』『三島由紀夫の美学講座』などがある。

「1998年 『命売ります』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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