彼のオートバイ、彼女の島 (角川文庫 緑 371-9)

著者 :
  • KADOKAWA
3.66
  • (13)
  • (18)
  • (31)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 181
感想 : 16
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (298ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041371091

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 片岡義男が売っていたのはアメリカナイズされた都会的生活のイメージだったと思う。彼の小説には教訓もないし、芸術性もないけれど、スナック菓子のような劇的な中毒性があって、1冊500円くらいの赤い背表紙の角川文庫に次々と金を出して当時の若者が買っていたのは自分たちをどこかカッコいい想像の世界に連れ出してくれるそのイメージだったのだと思う。あとがきで室謙二が書いているように、「片岡義男のどの小説の主人公も、彼ら彼女らがどういう家庭で育ち、どういう教育を受けたのかを想像するのはむずかしいし、一度本を閉じたら彼ら彼女らがこれからどうなるのかも想像するのはむずかしい。」彼の小説というのは、気取った台詞やカットが先にあり、ストーリーはそれらを使うがために組まれている無理やりさがあって、小説として上手いかというと疑問があるが、それでもその「娯楽小説」が与えるイメージは一級品。特に夏、バイクというのは彼の専売特許であり、単行本のあとがきでは本人も「夏とは単なる季節ではない、それは心の状態なんだ」と言っている。これに関しては何も言うことはない。

  •  

  • 35年ぶりに読んだ。ノスタルジー、W3やCB400フォアが現役の頃を描いているので時代はあと5年から10年は遡る。オートバイが主役になり得た片岡さんの小説を疑似体験したくてよく愛車を駆って旅に出ていたことを思い出した。当時、片岡義男氏の文庫本は角川出版社から赤の背表紙で本屋に並び、装丁は小説の一部を切り取ったような写真で構成されていてデザインも時代と切り離されてとてもモダンなものであった。なんだか新しい時代が提示されている感じが文字の間からビンビン伝わってきた。今読んでも一向に昔の感じがせず、やはり時代とは隔絶した小説だったと思う。

  • 青春時代に読んで未だに大好きな作家さん。バイクの免許が欲しかったし、SR400に乗りたかった。その後ViragoやらSteedやらのアメリカンタイプが憧れになった。けど結局免許は取っていないし、バイクにも乗ってない。青春ってそんなもんだと思う今日この頃。

  • 2012/08/30読了

    映画の主題歌のフレーズがリフレインする。「きらめいて きらめいて」
    あの映画はまだ見れていないんだけどね…。

    バイクの魅力を知ってしまえば(とはいっても、まだぺーぺーなんだけど)コオの言うことが、ストン、と、落ちてくるんだ
    四季と、音楽と、そしてバイク、風になることの意味や本質っていうのはどんなものなのか。
    映画では舞台が尾道だけど、原作では笠岡の近くの島なのか。

    まさにバイクと青春を形にしたような小説

    こういう物語を目指した人はきっといるんだと思う。
    80年代ではないし、コオとミーヨが走った場所はもうないのかもしれない。
    けれども、その何かを求める本質みたいなものは存在しているんだと思う。いつでも、どこでもね。

著者プロフィール

1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始める。74年「白い波の荒野へ」で小説家としてデビュー。翌年には「スローなブギにしてくれ」で第2回野性時代新人文学賞受賞。小説、評論、エッセイ、翻訳などの執筆活動のほかに写真家としても活躍している。『10セントの意識革命』『彼のオートバイ、彼女の島』『日本語の外へ』『万年筆インク紙』『珈琲が呼ぶ』『窓の外を見てください』『いつも来る女の人』『言葉の人生』ほか多数の著書がある。

「2022年 『これでいくほかないのよ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

片岡義男の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×