ぼくがぼくであること (角川文庫 緑 417-1)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 28
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041417010

感想・レビュー・書評

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  • 昭和44年の作品ということだったが、展開が始まってからは(最初の主人公がどういう少年かというくだりがやや長い)どんどん話が繰り出されていき、面白く読めた。ただ、女は家事、男は稼ぎみたいな昔のテンプレート的な設定や会話は多く、そのあたりを今の子がどう受け止めるかは不明。
    五人兄弟(!)の下から二番目、小六の秀一は名前はりっぱだが、成績などイマイチ振るわず、兄弟姉妹の中でいつも駄目だと母親に言われ続けている。他の兄弟は皆、良くできる。
    あまりにも怒られるので、夏休みに家出を試みる秀一。もちろん計画性もなにもない(アホなので)。このへんまでは読んでいてもあまり楽しくない。
    しかし、飛び乗ったトラックがなんと交通事故を起こして、秀一は密やかな目撃者となり…。
    つばさ文庫になっているのが、どの程度手を入れたのか気になる。挿絵だけでも、少し昔の感じだせばかなり読みやすいかもしれない。

  • すごい。これが児童文学か?小6の子供が主人公なだけで、ただの児童向け読み物とは思えず。「常識や慣習といった束縛にとらわれず、自分の頭で考えてみよう。そのために、外の世界に目を向けよう」という思いがある。
    ラスト、自分の家が燃えたのにも関わらず感じてしまうすがすがしさは、やはり今までの束縛が壊れだしたからだろう。結局のところ、何も問題は解決していない(解決しそうな気配はあるけれど)。それでも前向きな気持ちになるのは、自分の頭で考えだした人が行動を始め、今までの束縛から逃れだしたからだ。

  • 夏休みのある日、小学校六年生の秀一が突然家出をした。その波紋は、静かに深く広がって激しく家庭をゆさぶった。家出先で出くわしたさまざまな出来事−−−ひきにげ殺人事件の目撃、武田信玄の隠し財宝の秘密、発行の少女夏代との出会いなど−−−が微妙に絡みあって、教育ママの母親や優等生の兄妹の重圧から彼を解放する。
    家庭が持つ強さともろさの二面性を児童文学の中にみごとに描き、読み物としても抜群におもしろい話題作。

    -----
    夏代のキャラクター、特に最後の祖父との会話がグー。

    過去ではなく今が大事(リアル)という夏代のセリフがいい。さすが山中恒、子どもにこういうことを言わせてしまうところがとてもいい。模範的な児童文学にはなかなかできない芸当である。ジェネレーションギャップがテーマ。上記の部分にもつながっている。子どもが自分たちの今を主張。その意味では「ノーライフキング」とも通じるところがある。

    活き活きとしたストーリー・文体。秀一が手紙を盗まれたことを知り吐くところがよい。

  • 親と子達の物語。
     母親を嫌うようになった子供たちの様子が描かれいるけどこんな小学生いるか?と思ったが境遇によってはいるのかもしれない。作者が子供の時に体験した事を文章にしたらこうなるのか...言葉が大人ぽっくて小学生に思えなかったが、作品の時代背景や戦国時代についてふれている関係なのかな。

    家出をモチーフに親と子の関係をうまく物語りに取り込んでいました。さすが児童文学の最高傑作で考えさせられました。そして正直に面白かったです。

  • なんとなく手にとって読んでみたら、主人公は小6の男子。
    ちょっと反抗期。
    うるさい母親。

    なんとも自分の境遇に似ている・・・。

    読めば読むほど、母親が鬱陶しい。

    私が読み終わった後、小6の息子が読み始めたので、
    「この母親、ママとかぶる?」と聞いてみたら、やはり「すごーくかぶる」とのことで。

    普段の自分を大いに反省するきっかけとなった良い1冊でした。
    すごく前の作品とは思えない今読んで共感できる本でした。

  • 子供向けの読み物と思って油断した。

    兄弟の中で、ひとり、出来が悪いと母に毎日小言を言われる主人公、秀一。兄の良一、優一、姉の稔美、妹のマユミ。ほかの兄弟は、成績もよく、母の小言を言われる事がない為、秀一だけが一人、母の小言を受ける事になる。

    この本が書かれた当時の時代背景が、今とは違うから、「全学連」などという耳慣れない言葉も出てきて、少々分かりづらい部分もあるけれど、この本の世界に引き込まれる。

    妹のマユミの告げ口から、母との言いあいになり、軽い気持ちでした家出が大きな事件になり…。

    ここまでめちゃくちゃな母親はないだろう、と思いながらも、これに近い母親はきっといるだろうと思う。
    この母親がしたこと(秀一宛ての手紙を勝手に読んだり、秀一が受け取れないような細工をしたり、秀一が出した手紙を盗んだり)は、今の時代なら子供の人権を踏みにじる行為として完全に非難されることだろうし、あんな結末にはならないんじゃないかと思う。
    母親は子供から訴えられてもしょうがない行為をしているし、この本が書かれた時代だから、こんな母親でも、ある程度容認されてしまっているけど、今なら絶対に許されない。

    で、最後まで読んでいった時に、もしかして私、この本を子供の頃に読んだかも知れないと思った。
    たぶん、この本を読んだ時に、「親の言う事を聞く事」が正しいという考えは間違ってると思って、各家々に、法律のように決まりを作ればいいのにと考えた気がする。
    そうすれば、親が間違った事をしたり言ったりしたら、親も子供に謝らなければならなくなるし、子供が親に対して、言ってる事や、やってる事に矛盾があると思った時に、はっきりと言う事が出来る。
    親は親であるから正しいのではなくて、親でも間違う事はあるし、その時は、相手が子供でも謝らなくちゃダメだよな、と子供ながらに思った。

    そして今、私は親になっているけど、あの頃の、子供の頃のに抱いた気持ちを、忘れずにいるかというと、忘れてはいないけれど、実行できているかというとそうでもなくて。
    親でも子供に謝るべき時は謝らなくちゃならないけど、年を取ると、素直になれなくなる。変なプライドが高くなったり。でも、気をつけなくちゃ。

    時代背景が違うから、今の時代ならとても考えられないほどの酷い事をした母親でも、最終的には家族から受け入れられて、家族が再生していくことを示唆したようなラストになっているけれど、今の時代に同じような設定でストーリーを書いたなら、最後は、母親は自分のした事の報いで、家族から見捨てられてもしょうがないんじゃないかと思った。
    この本が書かれた時代に、ここまで酷い母親が存在したのかどうかは分からないけれど、「親の言う事は絶対」という考えの親が存在したであろうとは思う。
    今は親と子が、友達のようなフレンドリーな関係になっているから、このような親子関係は考えられないし、そういう親子関係を異常と感じるけれど。

    読み始めの、冒険ものかなにかかな、という軽い気持ちが、読み終わった時には、色々な思いが渦巻いていた。
    親になって読むと、また子供の頃に感じた思いとは違う思いを抱く。
    子供は、これを読んで何を感じるのかなぁ。

  • 最初は文章が古臭いし、主人公の魅力ゼロで読むのをやめようかと思ったほど。でも、公園で寝ていた男のトラックの荷台に潜り込んで家出してから急に物語が生き生きと動き出した。殺人事件、世話になった家の秘密、武田信玄の財宝と、結局最後まで読んでしまった(笑)

  • 小学6年の息子が読んで、よかったよというので、借りて読んだ。
    この本で言っていることの趣旨は、よく分かる。
    一人ひとりの人生がある、そして、にも関わらず、大人はときどき自分の勝手で何かを押しつける。
    こういう永遠に思えるテーマの他に、時代背景も感じた。
    戦争を経験した夏代のおじいさん。そのときは、日本が混乱していたから、心の傷を負った人もたくさんいただろう、そして、その傷はずーっと抱えたままのことが多かっただろう。
    学生運動。大人の不正に立ち向かおうという機運の中で、それぞれの思いがあったようだ。
    作者の山中 亘さんは、「あばれはっちゃく」も書いたそうだ。
    子供のころ、テレビでやっているのを見ていた気がする。

  • 小学生の時に読んだ。名作。

  • 子供にどうぞ。家出助長かもだが。

著者プロフィール

1931年北海道小樽市生まれ。児童読み物・ノンフィクション作家。戦時下を描いたノンフィクションに『ボクラ少国民』シリーズ(辺境社)、『少国民の名のもとに』(小学館)、『アジア・太平洋戦争史』(岩波書店)、『戦時児童文学論』『靖国の子』(大月書店)などがある。

「2019年 『山中恒と読む 修身教科書』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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