氷点(下) (角川文庫 み 5-4)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041437049

感想・レビュー・書評

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  • 人間模様の描写が非常に興味深い。「汝の敵を愛せよ」というテーマが一貫してとられているが、悟りでも開かない限りホントウの意味で愛することは難しいだろうし、まず相手が自分にとってホントウに憎むべき敵なのかすらも、考えなくてはならないと思う。キリスト教でいう最上級の愛である「赦す」ことで救われることも多々あるのでは。
    映画化されているだけあって引き込まれる内容だった。

  • こんな結末?とびっくりしました。
    でも全体的にすらすら読めて、おもしろかったです。

  • おかんが性格悪すぎ。

  • 「生きているだけで罪になる。」
    「持って生まれた罪がある。」

    夏江のわがまま、啓造の復讐、トオルの愛情、北原の存在、陽子の出生。
    どれか一つ欠けてもだめだった。
    全てが運命だったんだと思う。

    心が弱くて、いつも何かのせいにしてきた私は「この人がいなかったら」って思ったりした。
    その後そんな風に思ってしまった自分にぞっとするのだけど。

    依存体質な私は、「この人がいなかったら」と、何度も思ってきた。
    いつも、誰かに助けられてる。


    ある人が存在しているだけで誰かを傷つけてしまう。
    ある人が存在しているだけで誰かを幸せにする。

    今までも誰かに心傷つけられたことがある。(それ以上に誰かを傷つけてきたのだろうけど)
    でも、今の私は傷なんて忘れて大きな声で、あっけらかんと笑う事ができる。
    誰かのおかげで。


    人間の世界は残酷で、だけどもとっても優しい。

  • あれだけドロドロして、
    あれだけ母親にイライラしたわりに、
    終わり方には納得がいきました。そこまで悲惨ではなくて希望が持てる終わり方だったのがよかった。

    ものすごいうっすい感想になりました。。
    やっぱり読み終わってすぐかかないとだめみたい。

    Jan 2011

  • ということで連続して下巻に突入。「原罪」というテーマがずっと描かれている。続篇があるらしい、また探して読んでみようと思う

  • 『やられたな。』
    という小説。


    まさしくこの一言に尽きる。
    それはけして映画の感想などにみる、「すっかり騙されました!」という類のものではない。
    作者が好き勝手やってくれたというもの。期待を裏切らないという意味ではすばらしい小説だと思うし、昼ドラのような怒濤の展開で読むものをけして飽きさせない。ほんと、誰でも楽しめる小説だと思う。
    ただ、毎度の難癖をここでも付けるが、驚くほど文章がへたくそだ。展開や台詞の運びに対する表現が恐ろしく稚拙。参ってしまう。うまいと思える表現が皆無だった。これには正直参ってしまった。




    作者が敬虔なキリスト教徒らしくこの小説は『原罪』を扱っている。
    『原罪』とはつまり禁断の果実を食べてしまったことに端を発する私たちが先天的に持つ『罪』のことである。
    殺人犯の娘という宿命を『原罪』として陽子に設定するのは非常にわかりやすいが、ならばその苦悩を当人にさせて、読者にも罪と向き合うということをさせても良かったのではないかと思う。
    とはいえ、それでは読者は限られる。かなり頑張らないとおもしろくないだろうから。
    作者の関心は陽子を囲む人間達が自ら進んで侵す後天的な罪に対して向く。そこは掘り下げられるのだが、どことなくそれでは本来の主題とは少しずれるのではないかと私は思った。『罪』と『原罪』がはたして一緒なのだろうかという話だ。
    陽子の配置は先ほど私が言ったような『原罪』に対する導入であり、作者からすれば『原罪』は全ての人類が抱える共通事項と考えているのだろう。しかし、逆境の中にあって生きることにどん欲であった陽子は、自分が罪人の子であろうがなかろうが関係のなく、啓三のいう『根本的な罪の意識』によって作中最後には”氷点”を迎えてしまう。
    やっぱり、陽子なのか。とも思った。しかしこの唐突感。どこかしっくり来ない。
    しつこいようだがおそらく罪と原罪を対比させるつもりなんてないのだろうが、そうであるならなおさら陽子の位置付けがイマイチわからなかった。原罪の象徴であり清廉潔白な主人公が氷点を迎えたことで私は思わず、要するに私たちにも素直に死ねって言ってるのかと思ってしまった。
    まぁ勿論少し極論すぎだが、やはりどうも捉えずらい。
    収集がつかなかったのかな。とも思えたが、最後にはキリスト教で言う「人間が失ったが故の神からの導き」作中においては”救い”がしっかりと配置させている。とはいえこれは根本的な解決にはまったくなっていない。小説としてはいいが、主題に沿わせるのならばちと困るオチのように私には思えた。
    そこは、あくまで続編を読みなさいった話なのかもしれないけれども、今は気が乗らないので保留。


    いろいろクサしたがけして悪い内容ではないということは言っておきたい。しかしだめなのだ。
    心理描写が、悪い意味で私には”女性らしすぎる”のだ。夏枝がみるみる醜くなってゆくのはおもしろかったけれどもね。こういった「女」を描いた小説を書いたら、この人は秀逸ではないかと思う。
    と、いうことで読み終わった感想としては非常におもしろかった。
    アトラクションだ。
    「告白」よりはこの方が私としてはよい小説だと思う。


    さて、これでようやく去年の借金を返済できた。

  • 二度と読みたくないや…。自己中心の極みたる価値観の人物たちに怒りさえ湧いてくる。

    陽子以外の誰ひとり、他人を責めることはしても、自分を省みることは決してしない。

    陽子が自殺を図ってさえ、養母の夏枝が考えることは、

     (何も死ななくてもいいのに)
     自分への面あてのように薬を飲んだ陽子を、夏枝は心の中で責めていた。かわいそうだ、と思うよりも、自分の立場も考えてみてほしい、と夏枝は思っていた。
     (このまま死なれたら、人はわたしを何というだろう)

    なのだ。「自分の立場も考えてみてほしい」。お前が言うな!!だわ
    (たぶんこの怒りには、私の母親も私が自殺したらこんな反応なんだろうな、という怨みの投影も入っていると思う)。


    そして最後の場面では、陽子は殺人犯の娘ではなかった、ゆえに夏枝たちの虐待は不当であったことが分かる。それにも関わらず、

    「こんなに罪の意識を強く感じる子は、誰の子に産まれたとしても死を選ぶ運命だっただろう」

    と、被害者に原因があるように言われてしまう。これでは陽子も浮かばれまいよ(死んでないけど)。

    陽子が死を選ぶ理由も、「殺人犯の血が流れている自分に耐えられないから」。

    「殺人犯の子どもは死ぬべきだ」

    これってヘイト・クライムの思想そのものじゃないか…。
    これがキリスト教における罪の意識なの?
    被害の否定、加害の否定、責任の否定、非難者への非難…散々だな。

  • 夫「下巻は終始イライラする展開が続くね」
    妻「陽子の思い人が現れたのはいいけど、それにからんでいく夏枝・・・おそろしい母親ですね」
    夫「札幌の喫茶店のシーンは近年まれに見る問題のシーンです。あんな母親が存在するだけで娘は自殺したくなるだろう」
    妻「最後にはやっぱり二人に秘密をぶちまけるし・・・。しかも陽子が犯人の娘じゃないと知るや、またもや手のひらを返した態度・・・頭の中はどうなっているのやら」
    夫「夏枝の陰に隠れるようだがご主人も妄想癖を持っている。昼ドラを楽しむ主婦のような気持ちをくすぐられる本です」
    妻「作中で繰り返し謳われる‘原罪とゆるし’を考えるきっかけには、ならないなあ」

  • ある事故をきっかけにして、辻口はキリスト教の世界に心惹かれるようになる。それでも夏枝を許せず、陽子に対しても自然な愛情が持てずにいた。夏枝も心の揺らぎはあるものの、陽子への屈折した憎しみを消すことができず、ついに卒業式の答辞を白紙にすり替えるという行為まで犯してしまった。また、兄の徹も、陽子に対して自らの想いに危険を感じるようになり、ある時友人の北原を陽子に紹介する。

    自分がもらい子だと知っても、なおひたむきに健気に生きる陽子の姿がとても憐れで痛々しくて、胸が苦しくなった。
    徹や北原という心強い味方はいても、自分を育ててくれた人が実の両親ではなかったという事実は、やはり考えられないほどのショックだろうし、普通だったら、グレてしまうだろう。
    人が人を憎む。それはマイナスの連鎖を生み出すだけで、決してプラスにはならない。人間とはここまで残酷になれるのかとも思ったし、真剣に愛してくれる人もやはりいつかは現れるのだとも思った。
    とても意味の深い小説だと思う。

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著者プロフィール

1922年4月、北海道旭川市生まれ。1959年、三浦光世と結婚。1964年、朝日新聞の1000万円懸賞小説に『氷点』で入選し作家活動に入る。その後も『塩狩峠』『道ありき』『泥流地帯』『母』『銃口』など数多くの小説、エッセイ等を発表した。1998年、旭川市に三浦綾子記念文学館が開館。1999年10月、逝去。

「2023年 『横書き・総ルビ 氷点(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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