家 (角川文庫 く 19-1)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・本 (271ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041500392

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  • 結婚25年にして、念願のマイホームを手に入れた主婦の規子。
    夫は男前ではないが、大手の会社に勤めるエリートサラリーマン。
    子供は二人で、長女の真佐美は反抗的だが頭が良く、その弟の忍は病弱だが、おとなしく聞き分けのよい美少年。
    理想的な環境に理想的な家族-。
    所が、新しい家に引越したその日から奇妙な出来事が起きる。
    視界に過ぎる灰色の影、誰もいない部屋でする物音・・・。
    それらの出来事はおさまるどころか、どんどんひどくなり、やがて突然テレビのチャンネルが変わったり、物が勝手に動いたりするようになる。
    そんなある夜、規子は金縛りになり、恐ろしく巨大な人の顔を見てしまう。
    さらに、不気味なホームレスの老人が家の周りをうろつくようになって-。

    切羽詰った主人公は一人でずっと悩んだ末、主婦友達に相談します。
    だけど、一番近い家族には打ち明けない。
    どうせ、分かってくれない。
    その思いが彼女の口を閉ざす。

    何て、冷たい家族関係だろう-と思いました。
    毎日顔を合わせて、毎日一緒に生活して、一番近しい存在のはずなのに一番困っていることを相談する事すらできないなんて・・・。

    物語は終始、主人公の頭の中の考えで進んでいきます。
    だから読んでいる方も、もちろん主人公目線で物事を見る。
    何て冷たい家族だろう・・・と主人公の側になって読んでいたけれど、家族の冷たさの訳が物語の最後で明らかになります。

    ポルターガイストという現象は思春期の子供がいる家庭で起こることが多いのだと以前読んだ事があります。
    また、この物語の長男は喘息なのですが、喘息という病気も精神的なものが大きいというのも読んだことがあります。

    主人公の女性は自分に不都合なことは何も見ようとしてこなかった。
    それを皮肉にも、彼女の理想の家が奇怪な現象を起こすことによって、彼女に全て見せてしまう-。
    彼女の固く閉じた心の目をこじ開けて。
    その結果は-。
    一番欲しかったものを手に入れたとたん、本当のことが見えるようになり、そして全てを失うことになることにつながる、なんて皮肉な話でしょう。
    いつも心の目は開いていたい、と改めて思いました。

  • 念願のマイホームを手にした主人公は日夜エスカレートするオカルトチックな出来事に頭を痛める。そして段々と家族の本当の姿が見えてくる。浮気をしている夫、ラジカルな娘、同性愛の息子。娘の「だってあんたはいつも『きれいな家』やドラマばっかり見て、私が話しかけてもこっちを見てくれなかったじゃない」というセリフはちょっと反省した。いくら自分の打ち込んでいることがあっても独りよがりでは夢を実現した時に子どもに「それはあんたが勝手に思い描いていた夢でしょう」なんて言われてしまう。悲しい。やっぱり喜びは分かち合いたい。ところで私には浮浪者の位置づけがよく分からない。彼の存在って何かを象徴してるの?'94

著者プロフィール

東京都生まれ。早大卒。江戸川乱歩賞、吉川英治文学新人賞受賞。中島梓の筆名で群像新人賞受賞。『魔界水滸伝』『グイン・サーガ』等著書多数。ミュージカルの脚本・演出等、各方面でも活躍。

「2019年 『キャバレー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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