帝都物語 12 大東亜篇 (角川文庫 あ 10-17)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (283ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041690178

感想・レビュー・書評

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  • 戦争篇の続きであるが、この篇では懐かしい風水師黒田茂丸と、満映の女優出島弘子、戦争篇にも顔を見せた甘粕正彦が話を牽引する。
    今となっては想いを馳せるのも難しい満州という国、その首都新京を舞台に、地下に潜む鬼を巡ってそれぞれの思惑が交錯する。中国の魔術についての描写が面白い。
    黒田が常識的な人物な為か話の展開が受け入れやすく読みやすい。満州という今もう見ることのできない街の描写への興味や、妙に脂の乗った感じがある怪奇描写のおかげか、帝都物語最終巻であるにも関わらずこれ一巻だけでも結構面白い読物として成立している感がある。
    勿論背後で全てを掌握しているのは加藤保憲なのだが、この巻ではそういう側面より辰宮恵子に対する加藤の思いの強さの方が印象に残る。

    このシリーズを読んでいて、書かれた当時の時代の空気のようなものを思い出す。うまく言えないが、終末への憧憬みたいな、カタストロフを求めるような気分がどこかに漂っていた気がする。
    少なくともこの巻には他の巻よりも色濃くそんな雰囲気が立ち込めていて、読後に当時のことを色々と思いかえしてしまった。

著者プロフィール

作家・翻訳家・博物学者。京都国際マンガミュージアム館長。
平井呈一に師事、平井から紹介された紀田順一郎とともに、怪奇幻想文学の日本での翻訳紹介に尽力。のち活動の幅を広げ、博物学をはじめとして多ジャンルにわたって活躍。
主な著書に『妖怪少年の日々』、『帝都物語』シリーズ(ともにKADOKAWA)、『世界大博物図鑑』(平凡社)、『サイエンス異人伝』(講談社)、『江戸の幽明』(朝日新書)など。『怪奇文学大山脈』Ⅰ~Ⅲ(東京創元社)を編纂。

「2021年 『平井呈一 生涯とその作品』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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