新装版 人間の証明 (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店
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感想 : 185
  • Amazon.co.jp ・本 (509ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041753606

作品紹介・あらすじ

「母さん、僕のあの帽子、どうしたでせうね?」西条八十の詩集をタクシーに忘れた黒人が、ナイフで刺され、ホテルの最上階に向かうエレベーターの中で死亡した。棟居刑事は被害者の過去を追って、霧積温泉から富山県へと向かい、ニューヨークでは被害者の父の過去をつきとめる。日米共同の捜査の中であがった意外な容疑者とは…!?映画化、ドラマ化され、大反響を呼んだ、森村誠一の代表作。

感想・レビュー・書評

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  • 1970年代に書かれた作品であるが、2020年の今、ほとんど違和感なく読むことが出来る。これは時代を描くのではなく、人間の心理に重きを置いたことによるものだろう。
    とてもモダンな雰囲気が小説から感じられた。

    人間の証明とは、個人の主観による極端な考え方であり、読了後に思い返すと時に嫌悪、時に憐れみの感情を抱く。人間らしさという大きく曖昧なものではなく、明確な定義とも言える線引きであった。

    客観的な視点で読むことから脱することは無いが、それは人間の持つ、闇の深さがあまりにも得体の知れないものであるからだろう。

    登場人物についてうまく焦点を合わせ、簡潔な書き方の中に妙にリアリティがあり、感情の多様性を感じずにはいられない。

    終わりにかけて、凄まじい伏線回収が連発する。あらゆる点が、一気に線で繋がるのだ。
    あれも?!これも?!あらら......

    無関係である事件は無関係であり続けるが、それに関わる人間は同じ世界で生きている故に、同じ過ちを犯すのかもしれない。そこには愛、憎悪、虚構、依存、差別という人間の持つ、いわゆる人間らしさがあるのだ。

    人が殺される物語を読むたびに、頭の中で少し違和感を感じる私がいる。罪無く死んでいった登場人物に、何を想うか。楽しい読書、おもしろい小説とは。
    私にとって人間の証明とは何を意味しているのかな。

    読了。

  • 「人はだれでも母から買ってもらった『麦稈帽子』を持っている」。結末を知っていても、長い旅路にまた身を委ねたいと思う推理小説は、この物語ぐらいです。

  • 麦わら帽子、詩集、熊のぬいぐるみ…。
    言葉だけ並べると可愛い少女が浮かび上がりそうなこれらのモチーフが、事件に絡んでつながってゆく。
    たとえ漠然としたものであったとしても何か期待のようなものを胸に日本へ来たのだろうと思うと、なんとも切ない。
    郷愁を誘う詩がよけい寂しく響く。

  • 引き込まれた
    一気に読める

  • 映画とあいまったメディアミックスの先駆け的作品として有名な小説。どんな本かと読んでみたら……こういう小説だったのか。面白くてグングン読めた。
    舞台は1975年頃。つまり戦後30年という頃だけど、根底には終戦直後の出来事が深く影響していて、1975年当時って終戦当時にそこそこの年齢だった人がまだそこそこの年齢のままで生きていた時代だったんだなあと、ある意味驚き。
    人がたくさん出てきて一つの事件を追うようでありながら群像劇のようなテイストがある。そして最終的に、そのたくさんの人々がこじつけなくらい相関してしまうのはどうなのって感じだった。棟居刑事の幼い頃の惨事に直接的に八杉恭子やケン・シュフタンが居合わせたなんてやりすぎ。

  • 今更ながら読んでみたが、40年以上も前の作品とは思えないほど読みやすくてそして面白かった。
    ページ数も多めだったけど一気読みしてしまいました。
    最初はバラバラに進んでいたいくつかの物語が最後は綺麗に纏まる感じが良かった。
    ただジョニー・ヘイワードの人生と母を想う気持ちがあまりにも切なくてなんともやりきれない気持ちになった。

  • ちょっと展開に無理があるんじゃない…?と思いながら読み進めていったけど、たくさんの登場人物の中に少しずつある“つながり”が、「どうも引っ掛かるな」と思っていた。最後まで読むとその“引っ掛かり”が解き明かされて、びっくりします。

    東京である黒人が刺殺される、その事件を追う刑事、東京から連絡を受けてニューヨークで黒人の身元を調べるプエルトリコ人の刑事、黒人と何らかの関係があると思われる女性、その息子、その息子が事故に巻き込んでしまった女性、その夫と愛人。
    みーんながどこかで少しずつ繋がっているのです。つながり具合が不気味でさえあります。でも、もしかしたら自分の人生も、自分がした行為が、知らない間にいろんなつながりを作り、何年も何十年も経って自分のところに“戻ってくる”のかも…、などと考えました。怖いです。

    ところでこの小説は昔、映画化、ドラマ化されて話題になったらしい(観たことないけど)。小説にはニューヨークのスラムの描写がリアルに描かれている。このスラムが映像でどんな風になっていたのか気になるな。

  • 「母さん、ぼくのあの帽子どうしたでせうね?」

    子供の頃、角川映画が大流行りだったころにCMでよく
    流れてたのかな?
    このセリフだけすごく覚えてるのですが、
    内容の記憶が薄く読んでみました。

    読み始めるといきなり興味をひかれる事件が発生。
    その後いくつもおよそ無関係と思われる出来事や人物が登場し、
    それらにどんどん引き込まれていきます。

    例えば松本清張などは大筋はともかく本を読むと、
    書き方でしょうか・・・古臭さは否めません。
    しかしこちらは同じ何十年も昔の作品とはいえ、
    そう古臭さを感じず読めましたね。
    面白かったです。

    ラストはそこまで結びつけなくとも・・・
    と、思うほど見事に全てがつながります。
    不自然さはないのですが、
    逆にそこが現実ではなく小説っぽく感じました(笑)

    証明シリーズは他にもあるので、
    今更ですが、もう少し読んでみようと思います。

  • 東京の高級ホテルでアメリカ人が刺殺された。ちょうど同じ頃、一人のホステスが行方不明となる。
    アメリカ人殺人事件を追う日米の刑事、ホステスを追う夫と不倫相手、そして逃亡者たち。散在する各々の経路が交錯し、全てが繋がってゆく。
    昭和後期の日本を舞台にした上質のサスペンス。

    この作品の良さを以下の3点にまとめた。

    1.プロットが秀逸
    これほど複雑に絡み合っていて、最後にすっきりまとまる作品はないだろう。

    2.テーマが揺るがない
    人間性を我々が持っているという主張が小説に一貫して流れている。それは犯人もそうだし、猜疑する刑事たちもそうだ。全ての行動に裏付けがあり、その人物の歴史が垣間見える。だから、現実味がある。

    3.文章が美しい
    その言い回しの端々に著者の美学を感じる。非常にわかりやすく、心地よいリズムの文章である。


    動機もよくわからない変質者を犯人として登場させ、自己満足している小説家さんには是非とも読んで頂きたい。
    そんな上質のサスペンスでした(・∀・

  • ≪内容覚書≫
    スカイレストランへ登るエレベーター内で黒人男性が、死亡した。
    胸に深くナイフを突き立てたまま、最上階を目指した彼は、
    いったいそこに何を求めたのか。

    犯人を探し、日本と米国双方が刑事が、殺された男の足跡をたどる。

    被害者、犯人、刑事。
    それぞれの思いが交錯する中、人間らしさとは何かを問う1冊。

    ≪感想≫
    推理小説としては、展開が無理やりなところはあると思うが、
    この作品を、「人間らしさ」とは何かを問うものと考えれば、
    そんなものは些細な問題として流せる。

    登場人物が絞られているおかげで、
    混乱することなく読めるが、その分役割が読みやすい。
    推理小説としては、そのあたり、物足りなさが残った。

    その代り、愛憎は表裏一体、というのを見せつけてくれる作品。
    人間を憎みながらも信じたかった刑事。
    息子との再会を喜びながらも憎しみを抱いてしまった母親。

    愛があるからこそ、愛を求めるからこそ、
    憎しみが生まれるんだろうと実感。
    感情が理解しやすく、移入しやすい。

    ただ、さて、じゃあ、母に裏切られた時、
    それを受け入れて仕方ないと思えるほど、
    母を愛しているかと問われると、正直、分からない。
    ジョニーの母への思いの強さに心が打たれた。

    また、それ以上に、随所にちりばめられたニューヨークの問題や、
    日本の民族性に関しての記述が興味深かった。

    様々な人種が集まるアメリカと違い、
    単一民族(一応)で構成される日本の
    その結束力の話は説得力があった。
    確かに、一応、みんな日本人で、
    外見もそれほど変わらないからこそ、助け合える気がする。
    「外人」を、なんとなく避けてしまうのは、
    他国でもあることなのかな、と思う。

    きれいごと、なような気もしなくもないが、
    現代の問題をいろいろ見せてくれた良い作品。

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著者プロフィール

青山学院大学卒業。
10年に及ぶホテルマン生活を経て作家となる。
1969年『高層の死角』で江戸川乱歩賞、
1972年『腐蝕の構造』で日本推理作家協会賞を
受賞するなど社会派ミステリーの
第一人者として活躍する。
2004年日本ミステリー文学大賞、
2011年『悪道』で吉川英治文学賞を受賞。
推理小説、時代小説、ノンフィクションまで
幅広く執筆するなど著作数は400作を超える。
2005年に出版した「写真俳句のすすめ」で
写真俳句の提唱者として広く認知される。
写真俳句連絡協議会の名誉顧問を務め、
写真俳句の普及と後進の育成に取り組んでいる。

「2021年 『表現力を磨く よくわかる「写真俳句」 上達のポイント』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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