- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041800034
作品紹介・あらすじ
97本の短編が収録された「N・P」。著者・高瀬皿男はアメリカに暮らし、48歳で自殺を遂げている。彼には2人の遺児がいた。咲、乙彦の二卵性双生児の姉弟。風美は、高校生のときに恋人の庄司と、狂気の光を目にたたえる姉弟とパーティで出会っていた。そののち、「N・P」未収録の98話目を訳していた庄司もまた自ら命を絶った。その翻訳に関わった3人目の死者だった。5年後、風美は乙彦と再会し、狂信的な「N・P」マニアの存在を知り、いずれ風美の前に姿をあらわすだろうと告げられる。それは、苛烈な炎が風美をつつんだ瞬間でもあった。激しい愛が生んだ奇跡を描く、吉本ばななの傑作長編。
感想・レビュー・書評
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N・Pという小説を書いて自殺した小説家の父をもつ3人の子どもらと、その小説の翻訳をして自殺した男の恋人だった主人公とのつながりを描く。
高校生の時に何回も読み直した本。
そのわりにストーリーを覚えていなかったため、約20年ぶりに再読。
なぜかレズの話だと思い込んでいたのだが、そういうわけでもなかった。ただ、主人公の風美を振り回す萃という女性は、あやうげながらも魅力的で、小説N・Pを象徴する人物。二人のやりとりは、友情よりも濃厚なもの。それは、共通の自殺した恋人を持つ者同士、N・Pを心に持ち続ける者同士としての、共鳴というか。
高校生で読んだ時には、それを単純に恋愛だと解釈してレズというイメージを持ったのかもしれない。
咲、乙彦という人物も魅力的。
久々に読んだ感想としては、こんなに散文的だっけ?と思った。短い場面が断片的に、詩集のように繰り返される。きれいな情景で切り取られたそれらは、思春期の子には刺さるんだろうなぁと思うが、きれいすぎるんじゃないか?と思って読んでいた。
でもラストになって「ああ、ここで今までのことを思い出してたから、こんな書き方してたのか」と合点がいく(と私は解釈しました)。ただの散文で終わらず、ラストの乙彦との焚火の前での会話が読後の余韻をひろげていく。言葉にならない感情を、言葉にせずに表現していて、好きだなと思う。
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イメージの中で、よしもとばななさんの本に出てくる登場人物はいつも人が聞いたら心配せずにはいられないような境遇にいることが多い気がします。彼らはそのもがくしかないどうしていいかをまだ考えられないような間、本当に落ち込んで、落ち込んでいるけれど突発的に泣きそうになったり人と思いがけず繋がって生活をしています。でも、あまりに苦しいので、あるいは外部的な要因により仕方なく、死にそうになる。そうした物語の終盤は追いかけるこちらも堪らなく思います。こころの機微がキラキラ散りばめられた文章の中で一層逃れられないような感じがします。
けれど、n.pでも、その他の作品でも(私が読んだ作品では)彼らは奇跡的に死を回避したりギリギリのところで死を選ばなかったりします。その底にあるエネルギーにいつも人間の美しさを魅せられるようです。
また時間が経ったらどんな風に思うのかと、次回読む機会が楽しみです。 -
友達に読んでみて、と貸してもらった。初めて吉本ばななさんの作品を読んだ。終始淋しい、という感想。でもなんだかその中にもキラキラしたものがあったなぁ。
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20数年の時を経て、2度目の読了。
読み返してもほぼ内容に記憶がないのですが、当時ものすごく心を揺さぶられたような。
でも今回はあまり心にくることがなくて、これは私の心が疲れすぎているのかもしれない。
また、もう少し心の余裕を作って読んでみたい。 -
自我と感性が剥き出しだった思春期と吉本ばななさんのデビューが重なってしまった宿命で、キッチン以来すべての本を読み続けている。
NPはそんなに読み返す事もない本で、そういえばどんな話だっけな、と数十年ぶりに本棚から手に取った。そして驚いた。一字一句、気持ち悪いくらいに覚えていたのである。
当時、どれほどの貪欲さでこの本を読んでいたのか自分で引く……
強烈な夏の印象。ビニールバックに原稿をいれてショートパンツでコピーを取りに行った記憶まで鮮やかに残っている。
翠と確かに過ごした夏。 -
あらすじ読んで面白そうーむかし実家にあったなー。
と思って読んだら、いやこれ読んでたわ。多分高校生くらいの頃…
リリカルな少女漫画みたいな美しさがあるな。
ばななの文章はみずみずしいなあ。 -
再読。ばななさんの初期作品は、なぜこんなに圧倒的にその世界へ引き込まれてしまうのか。ある真夏の空間で、刹那的な翠の存在に、あっけらかんとした咲の明るさに、静かだけれど「起こったことのすべてが、なにもかもが美しい」ラストに、やられてしまった。
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2017/03/16
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毎年夏が来ると必ず読み返してしまう。哀しいような切ないような、夏が始まってから秋が始まるまでのひとつの物語。
自分について、自分が今感じていることについて、家族の歴史について、一冊の本について、移り変わる季節について、傍らにいる者について、失ってしまったものについて…。人は、一瞬一瞬、様々なことを考えながら、時を重ねていく。そのことを意識化し再確認するために、毎年この物語を私は読み返すのかもしれない。そしてまた、夏という特別な季節が私にそうさせる、のかもしれない。 -
夏に夏を感じた。
翠