N・Pという小説を書いて自殺した小説家の父をもつ3人の子どもらと、その小説の翻訳をして自殺した男の恋人だった主人公とのつながりを描く。
高校生の時に何回も読み直した本。
そのわりにストーリーを覚えていなかったため、約20年ぶりに再読。
なぜかレズの話だと思い込んでいたのだが、そういうわけでもなかった。ただ、主人公の風美を振り回す萃という女性は、あやうげながらも魅力的で、小説N・Pを象徴する人物。二人のやりとりは、友情よりも濃厚なもの。それは、共通の自殺した恋人を持つ者同士、N・Pを心に持ち続ける者同士としての、共鳴というか。
高校生で読んだ時には、それを単純に恋愛だと解釈してレズというイメージを持ったのかもしれない。
咲、乙彦という人物も魅力的。
久々に読んだ感想としては、こんなに散文的だっけ?と思った。短い場面が断片的に、詩集のように繰り返される。きれいな情景で切り取られたそれらは、思春期の子には刺さるんだろうなぁと思うが、きれいすぎるんじゃないか?と思って読んでいた。
でもラストになって「ああ、ここで今までのことを思い出してたから、こんな書き方してたのか」と合点がいく(と私は解釈しました)。ただの散文で終わらず、ラストの乙彦との焚火の前での会話が読後の余韻をひろげていく。言葉にならない感情を、言葉にせずに表現していて、好きだなと思う。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2021年5月8日
- 読了日 : 2021年5月8日
- 本棚登録日 : 2021年5月8日
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