壁抜け男の謎 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 642
感想 : 50
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041913109

感想・レビュー・書評

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  • いつもの有栖川有栖作品とはすこし違った味わいが感じられる短編集。
    黄色と黒の外壁を持つド派手な豪邸を建て、外装や室内も虎モチーフで埋め尽くしていた名物タイガースファンの男が自邸で死体となって発見される『猛虎館の惨劇』が特に気に入った。
    設定がバカミス風で愉快なだけでなくトリックも面白かった。

    ラストの恋愛短編『恋人』は、成人男性が10歳の少女に性欲も含めた恋情を抱くストーリーのため、手を出すシーンはないとはいえ個人的には嫌悪感をいだいてしまった。
    ただ、とある行為が性行為の代替として描かれているのは、いかにも文学的で興味深かった。
    もう会うことのない彼女を想って主人公が見る夢の内容もふまえると、実は恋愛小説の皮をかぶったホラー作品なのかも。

  • ジャンルごった煮な掌編〜短編集。他のミステリー作家にはなかなか見いだせない、引き出しの多さを改めて感じました。

    メインテーマはしっかり表現しながら、同時に作者の根幹であるミステリー色も忘れずに随所に織り込ませるところに、どうしようもなくミステリー愛を感じられて嬉しい作品です^^



    メモ↓↓

    ガラスの檻の殺人(四つ辻の交点で起きた殺人、透明な密室、消えた凶器はどこに?)

    壁抜け男の謎(迷路庭園に消えた犯人と残された絵画、ふき取られた指紋の意味)

    下り「あさかぜ」(アリバイ工作)

    キンダイチ先生の推理(何故、被害者は自分の家に何度も電話をかけたのか?)

    彼方にて(9/11、反世界、青い薔薇)

    ミタテサツジン(売れない俳優と付き人、雪月花姉妹、見立て)

    天国と地獄(天国と地獄の長箸の使い方を聞いて得た犯罪の着想)

    ざっくらばん(スパイ容疑を告発する怪文書、言いまつがいによる差出人確定)

    屈辱のかたち(丸くなった批評家を襲う悲劇)

    猛虎館の殺人(首無し死体、熱狂的なタイガースファンの家にあるべきものの最終目標)

    Cの妄想(私という人間はいつから存在しているのか? 唐突な終わりの気配・幕)

    迷宮書房(どんな物語もそろう場所、非現実の現実化)

    怪物画趣味(怪物の犯罪)

    ジージーとの日々(SF、ロ母、ほんのりミステリー)

    震度四の秘密(結婚前の演技)

    恋人(官能、抜けた歯)



    フーダニットからオマージュ、SF小説、官能小説までを収めた十六の短編集。

  • 短編集。
    面白いのとそうでもないのがあった。
    短編集はどうも、物足りなく感じる。

  • 様々なジャンルの短編集。
    もちろんミステリー多めだが、人情ものや恋愛ものもあり楽しめた。
    ミステリーはとんでも話が多かった印象。

    一番面白かったのは最後に載っていた「恋」。
    大学生時代に小学生の女の子に恋をしたおじさんの回想録。人によってはドン引きするような設定やオチだが、とあるものを大事に扱うラストシーンはこの設定だからこそできたもの!
    普段のミステリーとは違う文体で書かれた恋愛小説は、作者の新たな魅力を教えてくれた。

  • 多彩なジャンル16篇からなる短編小説集。どれも物語自体読みやすく面白いが、短編のためすぐ話が終わってしまうのがなんだかもどかしい。長編で読みたくなってしまう。中でも「ジージーとの日々」「ミタテサツジン」「キンダイチ先生の推理」が面白かった。

  • 内容に全く統一性のない作品が集まった短編集(^ ^;
    正直、途中まで読んだ感想は「何だこりゃ」(^ ^;

    小説のジャンルも長さもテイストもバラバラで、
    中には「犯人は分かりましたか」みたいな
    「読者に挑戦」モノがあったり(^ ^;

    作者の後書きを読んで、ちょっと納得。
    初出が新聞連載で、正に「謎解きに挑戦」だったり、
    テーマや分量を出版社側から与えられて
    「縛り」の中で書かれた作品だったり、
    はたまた誰かのアンソロジーのためのものだったり....

    そういう種々雑多な(失礼!)作品を集めた一冊、との由。
    私の正直な第一印象は、あながち的外れとは言えん(^ ^;
    さらに失礼を承知で言えば、「技巧が悪目立ち」する作品が
    多かったように思うが、これも状況を鑑みれば宜なるかな。

    ...などと、作者のマネをしたつもりで
    無理に難しい言葉を使ったりしてみましたが(^ ^;

    作中のそこここに、難しい言葉(ほとんどが漢語)が散見される。
    が、正直、言葉のチョイスが内容や文体と合ってない(^ ^;
    漢検1級の勉強をした若者が、「どーだ、スゴイだろ、
    こんな難しい言葉も知ってんねんで〜」と
    得意がって使っているような印象で(^ ^;
    私にはヒットしなかった(^ ^;

    前もこの作者の著書で、同じような印象を持ったような(^ ^;
    しばらく手を出すことは無いかな...(^ ^;

  •  数年にわたって発表された短編を集めたもの。それぞれの話に関連性はない。
     「ガラスの檻の殺人」と「壁抜け男の謎」が楽しかった。もちろんトリックも犯人も全く予想できなかったが。
     しかしわたしにはこの作者の作品があまり肌に合わないみたい。

  • 短編集。気楽に読めるから、好き。ジージーの話が好き。

  • 2013/3/24
    超短編などあってまあ色々。
    最後のはそういう企画で書いたんだとわかっても「ウゲー」と思ってしまう。

  • 再読してみたら思ってたより面白かった。「天国と地獄」は『ジュリエットの悲鳴』っぽい。「迷宮書房」は本家と比べて読むとにやにや。有栖川さんはほんと何書いても上手いなあ。(でも短編ミステリよりノンミステリの方が面白かっただなんて言えない…。)

著者プロフィール

1959年大阪生まれ。同志社大学法学部卒業。89年「月光ゲーム」でデビュー。「マレー鉄道の謎」で日本推理作家協会賞を受賞。「本格ミステリ作家クラブ」初代会長。著書に「暗い宿」「ジュリエットの悲鳴」「朱色の研究」「絶叫城殺人事件」など多数。

「2023年 『濱地健三郎の幽たる事件簿』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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