新訳 ヴェニスの商人 (角川文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784042106166

作品紹介・あらすじ

貿易商のアントーニオは親友バサーニオから借金を申し込まれる。貴婦人ポーシャに求婚するための資金がないのだ。だが、アントーニオの全財産は現在、船の積み荷となって海の上。仕方なく、ユダヤ人のシャイロックに借りるのだが、「返済できない場合は、アントーニオの肉を一ポンドもらう」という酔狂な条件つきだった。果たして、船はすべて難破し、約束通り肉を差し出さねばならなくなったアントーニオだが…。ラブストーリー、法廷劇、ヒューマンドラマ。様々な物語の魅力が詰まった、シェイクスピア作品で最も人気が高い、悲喜劇の傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 最後の裁きのところは知ってはいたが、それがどのような経緯でそうなるかは、やはりちゃんと読んでみないとわからないもの。

  • キャラクター、ストーリー、セリフ、戯曲を読むだけでもシェイクスピアを堪能できる作品だけど、今読むとユダヤ人差別が強烈なところがきっつい。許される条件の一つがキリスト教に改宗すること、とは…

  • 2021/2/16

    『ヴェニスの商人』初読は岩波の中野訳だったが、一年越しの今回は河合役で。

    初読の時は裁判の畳み掛ける勢いに圧倒される印象しか残らなかったが、今回は「正義を行使する悪魔となるのか、それとも慈悲を与える天使となるのか」という問題に着目した。河合先生があとがきにも書いているが、これは今日的な意味を持っている。

    例えば企業の正義が利益をあげることだとすれば、経済的合理性を追求して環境破壊という悪事をなすのか、それとも経済的合理性を犠牲にしてでも環境保全に努めるか、という問題に置き換えることができるだろう。
    また警察が連続殺人鬼を逮捕した場合、国民の安全という正義のためにその人を殺してしまうべきか、それとも慈悲のために更生保護を行うべきか、というある種死刑制度的な問題に置き換えることもできるだろう。

    この問題についてはポーニャの結婚クジでも触れられている。金の箱を選んだ者は表面だけを見て中身を考えないという理由から、彼女と結婚できない。これは正義というお面を被った悪魔の否定と呼応する。

    今回はこんな発見があって面白かったので、また折に触れて読んでみようと思う。

  • 読後もっとも強く感じたのは、ユダヤ人に対するマイナスイメージのこと。本作が世に出て以降、舞台で演じられ読み継がれること数世紀。ユダヤ人に対するバッドイメージが流布され再生産されてきたことを案じた。

    後述の法廷で、シャイロックは頑なに肉1ポンドに固執。ユダヤ人への仕打ちに対する復讐の思いを滲ませる。ここで双方は異教徒という言葉を口にする。西欧におけるユダヤ人差別と偏見は、彼らがユダヤ教を信じる異教徒であること、西欧キリスト教社会の内なる異分子であったことが根のひとつか、と改めて思い至る。

    かように古典作品に散見される偏見や差別。とはいえ、後世の者にこれを修正・検閲する権ありとも思えない。有名な戯曲・文学である本作を、ユダヤ・イスラエルの人々は、どのように受け止めてきたのだろうか。
    * 
    以下内容あらましを少々。ヴェニスの人バサーニオは、親友の貿易商(資産家)アントーニオに借金。超絶美人ポーシャへの求愛に赴く旅費を工面するためだ。このときアントー二オは、ユダヤの金貸し商人シャイロックからその金を工面。ただし期限内の返金無ければアントーニオの胸の肉1ポンドを差し出す、という証文を取り交わす。
    (中盤、ポーシャに求婚する者たちが、金・銀・鉛の3つの箱、いずれかを選ぶ試練に挑むサイドストーリーあり。)
    そのあと終盤近くは法廷劇。1ポンドの肉の是非を問うやりとりが展開する。ちなみにこの法廷で、先の美しき某貴婦人が男装して登場し、鮮やかな大岡裁きを披露する。だが、バサー二オはじめ誰ひとり、その変装に気づかない!そのへんの強引さはシェイクスピア戯曲を読む際のお約束か。逆に、舞台化・映画化したものを観たいと思わせるドラマチックな作品である。

  • 注釈もなるほどというものが多く、面白く読めた。

  • 多分、なんだかんだでベニスの商人初めて読んだ。
    こういう話だったのね。教養として、知っとかないとね。

  • こわいやらおやじギャグやら。
    喜劇・・ではないと思うぞ。

  •  財産のない情熱家バサーニオは、噂に名高い女相続人ポーシャに求婚するために金が必要だった。大商人アントーニオは、この若い友人のため、航海中の全財産を担保にユダヤ人金貸しシャイロックから大金を借りる。シャイロックは無利子で融資するといった――ただひとつ、「期限を破った場合は、アントーニオの胸から肉一ポンドをもらう」と条件をつけて。

     2005年秋に映画『ヴェニスの商人』公開に合わせて出たもの。
     すばらしい訳だと思います。シャイロック、アントーニオ、バサーニオ、ポーシャ、それぞれの人物像に口調がぴったり合っている。
     これを小田島訳で読んだのは映画公開のころだったし、映画もこのところ観返していないしで、いい具合に中身を忘れていたので読んでいて楽しかったです。

  • シェークスピア作品特有の、たたみかけるようなクライマックスのシーンがすごくスカッとしますよ。すっきり~、そしてかなり愉快!

  • こういう新訳には「新訳」としての価値がじゅうぶんにあるのではないか、と感じます。(普及版である文庫だし)。アル・パチーノ主演の映画にも触れた訳者あとがきも興味深い(あとがき自体は映画公開の直前に書かれたものみたい)。「シャイロック」にどれだけ肩入れするか(できるか)で、この劇の印象が変わってくるというのは当然のこと。そのへんも勘案された、「上演を目的」ともされる新訳です。だから流れがいい。途中、まるでヴェネツィアのゴンドラに揺られているような(ヴェネツィアにもゴンドラにも詳しくはないが)リズムの「うた」が印象的です。私はやはり「詩人」としてのシェイクスピアもまた、とても好きみたいです。

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著者プロフィール

1564-1616。イギリスの劇作家・詩人。悲劇喜劇史劇をふくむ36編の脚本と154編からなる14行詩(ソネット)を書いた。その作品の言語的豊かさ、演劇的世界観・人間像は現代においてもなお、魅力を放ち続けている。

「2019年 『ヘンリー五世 シェイクスピア全集30巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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