新訳 リチャード三世 (角川文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784042106173

作品紹介・あらすじ

薔薇戦争の末期、世の中に平穏が訪れようとした頃、醜悪な容姿と不自由な身体を持つグロスター公リチャードは、王となることで全ての人々を嘲笑し返そうと屈折した野心を燃やしていた。やがて彼は兄王エドワード四世の病死を契機に、暴虐の限りを尽くして王位を奪う。しかし、明晰な頭脳を誇ったはずの彼にも思わぬ誤算があった-。シェイクスピア初期の傑作を、原文のリズムにこだわった名訳でおくる決定版。

感想・レビュー・書評

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  • シェイクスピア初期の戯曲。
    16世紀末の完成以来、ピカレスク(悪漢)ロマンとして、今日に至るまで、さまざまな脚色で上演され続けている。歴史劇としては「ヘンリー六世・三部作」の続編にあたる。
    醜い「せむし」として嘲笑われてきたグロスター公リチャードが、権力を手にすることで周囲のすべての人々に復讐を遂げようと野心を燃やし、暴虐と謀略によって王位につき、しかしやがては転落していくまでの物語である。
    時は薔薇戦争の時代で、リチャード三世はヨーク家側である。父や兄とともに、ランカスター家と血みどろの争いを繰り広げる。
    リチャード三世はランカスター側の王太子を謀殺。その妃を篭絡するも、のちにこれを殺す。
    ヨーク家長兄の死をきっかけに、権力の座に昇りつめようと企んだ彼は、身内にも刃を向けていく。まずは次兄を排除する。まだ幼い長兄の息子2人は、不義の子であり、王家の血を引いていないと言い立て、陰気なロンドン塔に幽閉したうえ、殺人者に命じて殺させてしまう。
    世に悪事は数多くあれど、やはり万人が非道と認めるのは子供殺しではなかろうか。
    そうまでしても彼が権力に執着したのは、自らの醜い容姿に原因がある、というのがシェイクスピアの言わんとするところなのだろうが、さて。

    実際、リチャード三世が非道な王だったのかといえば、実はそうではなかったようで、ジョゼフィン・テイの『時の娘』もこれを題材としている。
    巻末の解説によれば、シェイクスピアは史実を取り込みつつも、時系列などを巧みに操作して、「極悪人リチャード三世」の肖像を作り上げている。
    リチャード三世を破ったヘンリー七世は、ランカスター側であり、シェイクスピアの時代の女王、エリザベス一世の祖父にあたる。リチャード三世を悪党に仕立て上げたのはヘンリー八世、つまりエリザベス一世の父の時代の歴史家たちと言われる。
    シェイクスピアはそれを踏襲したわけで、そこにはもちろん、エリザベス一世の「ご機嫌取り」の要素もあっただろう。
    だが、おそらくはそれだけではなく、歴史上の人物の姿を借りて、全き悪、この上ない悪を描いてみたいという、作家としての欲望もあったのではなかろうか。
    どれだけ貶してもよいリチャード三世は、その恰好な標的だったというところだろう。
    「せむし」という表現は現代ではなかなか使いにくいところもあろうが、鬱屈し、世の中への怒りを滾らせている人物というのは、現代でも、さらにはこの先も、描き甲斐のある人物像として、上演され続けていくのだろう。

    角川文庫版は河合祥一郎訳。原文のリズムにこだわった訳が特徴。シェイクスピアの戯曲には、得てして版がいくつも存在し、どのテキストを採用するかの判断が付きまとうが、これに関する注も詳細。
    ただ、以下は、訳がどうこうという話ではないが、王家の名前でよくあるように、同じ名前の登場人物が多く、文字で読んでいるとわかりにくい。ランカスター家の王太子も、ヨーク家の長兄も、その息子もエドワード、2王子の弟の方はリチャードといった具合で、さらっと読んでいると誰が誰なのかわからなくなる。このあたりは実際に劇で見た方が格段にわかりやすいだろうと思う。

  • 人が多いし呼ばれ方が変わったりするしで、相関図にパラパラ戻りながらでもついていくのがかなり大変
    注釈がけっこう詳しい。
    さすがに原著に戻る気にはならないけど、言葉遊びが多いようなので英語だとさらに楽しめるのだろうなとおもう。

  • 文のリズムや言葉遊びが可能な限り訳出されているとのことで、劇の雰囲気を楽しめます。
    人物の名前がややこしくて少し苦労しましたが、詳細な注釈があったことでなんとか読み終えられました。

  • 2021/3/5

    シェイクスピアの悲劇、まだまだ触れていない作品は多々あれど、パターン認識ができると大体の展開が予測できちゃうなー。序盤では王位や恋などの欲望に燃えた主人公が自分の意図通りに事が進むように裏工作し、中盤それが上手くいくか鑑賞者をハラハラさせ、終盤は自分だけではなく周囲の人々も皆が破滅へと向かう。

    このパターンを手を替え品を替え行うのがシェイクスピア悲劇だと思う。ただここで注意しておきたいのは、決して展開が予測できるからと言ってつまらないことにはならないということ。逆に言えば、押し並べて面白いからシェイクスピアが偉大だとされる所以なのかも知れない。

    注釈が詳しいので、人物関係が複雑であっても『リチャード3世』を読み通すことができて良かった。劇でみてみたいなー。

  • 池袋にて、舞台リチャード三世を観ての記録。本は未読。

    自分が王になるために、周囲の人間を次々と冷酷無比に殺していく悪人を演じるのは、佐々木蔵之介。彼の見事な演技に心底圧倒された。
    鍛え上げられた肉体、それを駆使した演技と台詞まわし。つい先日までNHKの朝ドラで見ていたシェフと同一人物とは思えないほどで、ここまで魅了されるとは思わなかった。
    また、登場人物に複数の女性がいるにもかかわらず、実際に演じているのはほとんど男性というのも興味深い。何度も出てくる濃厚なキスシーンも当然男同士で、ドキドキした。

    脚本、演出、美術等がルーマニア人という舞台は初めてだったが、一貫して退廃的で淫靡な大人の雰囲気が漂うシェークスピア、期待以上の満足感があった。役者も芸達者な人たちばかり、こういう舞台をもっと観たい。

  • 翻訳は今まででベスト。勉強になったわー。

  • 残忍な悪党で カッコ良くもないのに 何だか気になる役な、リチャード3世。台詞の魅力なんだろうか…

  • 勢いのある物語だった。コミカルさを含んだ悪漢劇。
    拍子抜けするような終わり方をするが、爽快な読後感だった。

  • 河合祥一郎の訳が良い。版による違いを上手く整理している。内容としては、あくまで演劇を目的としているので、一般小説のようなスぺクタルなシーンはなく、人間中心の心理劇が展開する。複数のリチャード、複数のヘンリー、複数のエドワードが出てくるので、人物一覧と相関図が助けになったが、翻訳ものを読む時にネックとなる同一人物の複数の名称が完全には網羅されてないのでやはり混乱した。

  • 【335】

    だいぶ前に読んだ。
    悲劇。
    戯曲は中盤の展開が早いよなー。
    シェイクスピアって明るい話ないのかな??

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著者プロフィール

イングランドの劇作家、詩人であり、イギリス・ルネサンス演劇を代表する人物。卓越した人間観察眼からなる内面の心理描写により、最も優れた英文学の作家とも言われている。また彼ののこした膨大な著作は、初期近代英語の実態を知る上での貴重な言語学的資料ともなっている。
出生地はストラトフォード・アポン・エイヴォンで、1585年前後にロンドンに進出し、1592年には新進の劇作家として活躍した。1612年ごろに引退するまでの約20年間に、四大悲劇「ハムレット」、「マクベス」、「オセロ」、「リア王」をはじめ、「ロミオとジュリエット」、「ヴェニスの商人」、「夏の夜の夢」、「ジュリアス・シーザー」など多くの傑作を残した。「ヴィーナスとアドーニス」のような物語詩もあり、特に「ソネット集」は今日でも最高の詩編の一つと見なされている。

「2016年 『マクベス MACBETH』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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