フルメタル・ジャケット (角川文庫 赤 447-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784042447016

感想・レビュー・書評

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  • 海兵隊員は決して仲間を見殺しにしない、という話。

    原題 "the short-timers"は「短期除隊兵」の意(p.68)だが、
    映画化に際して
    キューブリック監督が『フルメタル・ジャケット』に変更したそうな。
    full metal jacketは完全被甲弾(貫通性が高い通常の弾丸)のこと。
    正解でしょう、原題のまま映画にしたらパッとしなかったのでは(笑)?

    映画は鑑賞のチャンスを逃したままだが、ふと気が向いて、
    夫の実家の書棚からサルベージして二年以上寝かせていた
    原作本を読んでみた。

    いやー、面白かった。
    ページを捲る手が止まらず、
    普段読書スピードが遅いのに結構な勢いで読み進めた。
    うねりのある濃い文章が好きな私としては、
    これは真逆なのだが、テンポがよくてグイグイ引き込まれた。

    訓練を受けて期限付きでベトナムの戦場に送り込まれた
    元は平凡な若者たちが一人前に成長していく様が描かれる。
    もちろん、戦争の中でイッパシになるというのは、
    本来の人間性を剥奪され、兵隊としての人格が醸成されることである。
    こんなことも呟いちゃう(p.72)。

    > 連中はやみくもに恐がる。死を友とした体験がないからだろう。

    何故、読みやすく、作品に没入しやすかったのかと言えば、
    訳者があとがきに書いているとおり、物語が
    一兵卒の眼差し=「地を這う虫」の視点で叙述されているからだ。
    兵士一人一人には戦争の全容など皆目わからない、
    それどころか、敵の正体だって本当は掴めていない。
    ただ命令に従って前進または後退しつつ、
    襲われそうになったら先に殺すだけ……。
    主人公は入隊訓練の後、最初は従軍記者として戦地に身を投じたのだが、
    読んでいるうち、まるで彼に寄り添って
    ジャングルをさまよっているかのような感覚に陥ってしまったのだった。

    結末は残酷で無情だが、
    自分も彼の立場なら同じ行動を取ったかもしれない、などと考えてしまう。

    海兵隊員は決して仲間を見殺しにしないのだ。

  • 【速読】あの映画の雰囲気そのままですね。悪い冗談を言い合いながら、戦況が一定の早さで流れていく。邦訳は短く切った文の中に豊かな語彙が仕込まれており、カミソリのように鋭敏な戦況が鮮やかに表現されていると思います。映画には原作者も関わっているようですが、ラストが意外な形で違ってくるんですね。物語だけで見れば、こちらの原作には戦争への無常感というのが分かりやすい形で現れる。名作と思いますが再版されてないようですね。手元に欲しい一冊。

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