夢果つる街 (角川文庫 赤 450-2)

  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (514ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784042450023

作品紹介・あらすじ

吹き溜まりの街、ザ・メイン。ここはラポワント警部補の街であり、彼が街の”法律”なのだ。そして彼にも潰えた夢があった……トレヴェニアンが小説巧者の真価を発揮した警察小説の最高傑作!

感想・レビュー・書評

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  • モントリオールのスラム街、様々な人種の吹き溜り、ザ・メインの治安を一手に引き受ける初老の刑事と刑事に清廉さを求める理想主義な大卒新人警官が主人公。ミステリー性は低いが、掃溜めの様な人々の喘ぐような生活描写がとても哀しい。未来を見る事の出来ない邦題が物語っている。

  • くたびれ廃れた街。ザメイン。
    暗い過去と持病を抱えた警部補ラポワントは、今日も希望のないこの地域をパトロールする。

    殺人事件が軸であることは間違いない。ただ、本作の魅力はこの街自体。腐りきった土地。売春婦。浮浪者。麻薬。堕ちゆく人々。未来はない。

    ラポワントの信条はどこまで貫けるのか。行く末を見守る読者。

    罪とはなにか?罰とはなにか?
    街の行く末に哀しみが押し寄せる。人生の節目節目に読みたい傑作。

  • 最初の1ページを読んだ時からこの作品は傑作だなと感じた。それも生涯忘れ得ぬほどの…。

    前回読んだ『バスク、真夏の死』とは比べ物にならない読み易さと簡潔かつ的確な訳。外国の小説でこれほど町のイメージがたやすく浮かんだのは、本書が初めてではなかろうか?
    それは著者が街の住人を誰一人として疎かにせず、見事に活写したため。行間から息吹が、匂いが立ち上ってくるが故に、それぞれが皆、確かに生きていた。
    稀に見る傑作だ。

  • 売春宿やダンスバーなどモントリオールの吹き溜まりの町ザ・メイン。
    ここで起きた殺人事件をラポワント警部補は彼なりに、この町のルールなりに解決して行く。
    罪悪とは?犯罪とは?と考えてしまう。
    頭の中ではレオンのジャン・レノやブルース・ウィリスをラポワントの重ねてしまった。

  • 邦題がいただけない気がするなあ。
    ザ、メインでいいじゃないの。
    この街がまさしくメインの物語だもの。
    メインで這いずり回る人々が、悲しくも、穢れている。
    別にたいしたストーリーじゃないし、事件も犯人も意外性はなく、メインにふさわしいだけ。
    まあ、ラポラントは、魅力的だな。
    この重く、苦しいカナダの汚れた街の空気を味わう作品だね。

  • カナダという国にはどういうわけか良い印象しかありません。
    それは何も知らないからなんだけど。
    なんとなく寒いけれどクリーンな感じがするんです。
    ま、海外はどこも観光だけじゃわからないこと、住んでみないとわからないことがたくさんあるんですけどね。
    本書は冬のモントリオールを舞台にしています。
    カナダの冬だから暗いのは当然なのですが、移民の吹き溜まりである下町を取り上げているせいか、話全体がどんよりと暗いです。
    それが何だか意外でしょうがありませんでした。
    主人公のラポワント警部補はうだつの上らない(上げようとしない?)頑固者の中年警部補。
    愛妻を早くに亡くし、何もないアパートでやもめ暮らしをしています。
    だけど本当は優しいいい人なんですね~。
    ま、ハードボイルドにはありがちですが。
    身元不明の死体を調査するためにこの街の住人たちと接していくわけなのですが、相手は売春婦、浮浪者、与太者と社会の底辺にて蠢いている人々ばかり。
    その描写が素晴らしく、思わず熱中して読んでしまいます。
    哀しい現実、それでも生きていかなきゃいけない人々。
    最後にはなんだかやり切れない気持ちになります。
    じんわりと事件を解決していくわけですが、読み応え十分!
    実はトレヴェニアン作品は2作目。
    本当は「シブミ」を読みたいのですが、なんせ順番に読んでいかないと気がすまない性分。
    これが災いして初期の古い作品ばかり読むはめになる私。
    でも、本書は読んでよかった!と思っています。

  • 殺人事件から始まるが、全くミステリではない。ザ・メインという猥雑で貧しい街とそこに暮らす人々を、主人公の老刑事を通して描きだしている。スピード感は皆無だが、この作品の魅力は、無骨で一つの生き方しかできない主人公だろう。彼は自らの死を意識するようになり、改めて周囲の人々を違った目で見るようになる。どんな人間でもいくつもの面を持っていて、そこと折り合いながら何とか生きていく。結末に少し明るさが見れて嬉しかった。

  • 感想はひと言。「渋い」。

    カナダのモントリオール、〝ザ・メイン〟と呼ばれる地区がこの小説の舞台である。一匹狼の〝警部補〟ラポワントは、移民や労働者、売春婦や浮浪者がひしめくこの吹きだまりの土地の秩序を、長いあいだ自分なりのやり方で守ってきたいわば〝番人〟のような存在。しかし、この街とそこに生きる人たちを誰よりも理解し愛しているのもまた、ラポワントそのひとなのである。そんな彼のホームタウンで、ある夜ひとりのチンピラが刺殺される……。

    そこから話は二転三転……というわけには、ところが、全然いかないのである。事件の捜査に、動きらしきものが見えるのはようやく333頁になってから。全体の4/5は、濁った池の水面をじっと眺めているような案配。最後の1/5でその濁った水面が一気に透き通り、事件の全貌が明らかになるのである。

    ただ、これはたぶんミステリではないのだろう。〝ザ・メイン〟という、時代から取り残された人々が身を寄せ合って暮らす時代から取り残された土地の物語だ。そしてその土地も、そう遠くない将来、近代化の波に押し流され消えてゆく運命にある。そしてそこに生きる人たちもまた。老兵しかり、モイシェしかり、心臓に手術不可能な動脈瘤を抱え、もはや警察署の中に味方がひとりもいない古いタイプの警官であるラポワントもまた、しかり。読了後、なんとも苦い後味が残る一冊。

  • 繊細な描写だが飽きない

  • 読み始めはこんなに魅力のあるストーリーとは思わへんかったけど、途中から引きずり込まれました。

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