風の耳たぶ (角川文庫)

著者 : 灰谷健次郎
制作 : 坪谷 令子 
  • 角川書店 (2003年12月25日発売)
3.49
  • (11)
  • (9)
  • (37)
  • (2)
  • (0)
  • 本棚登録 :137
  • レビュー :14
  • Amazon.co.jp ・本 (413ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043520336

風の耳たぶ (角川文庫)の感想・レビュー・書評

並び替え:

表示形式:

表示件数:

  • 話の大半が説教臭い対談である。
    老夫婦が旧友の元へ訪れた後、あての無い旅(死出の旅路)をする話。この作者の書く小説は地の文が少なく、会話が多い印象を受ける。
    何故説教臭いのかというと、現代日本に対して、数々の事柄を批判をするからだ。だが、それが筆者の伝えたい事だと考えれば、何が言いたいのかわかりやすい。
    好きな物しか食べない子供を叱れない親、孫をただ甘やかすだけの祖父、欲に流される人とそれを利用して金儲けしようとする人……本当にその人の為を思って行動しているのか。浅はかな甘さ、優しさを強く批判している。老夫婦含む登場人物達は、人との繋がりは、夫婦、親子、教師と生徒、どんな関係でも相手に対する尊敬の念を奥底に根ざした友情のような結びつきが良いと語りかけている。
    物が溢れる昨今、私達はこのようにお互いの長所を認め合えるような関係が希薄になってきているのではないだろうか。小説の中でも、機械化や物資は豊かになっているものの、人間は退化していると読み取れる部分がある。
    「人と人が愛し合う。人と人が仲良くなる、仲良くする。それは、とてもいいもので大事なのに、わけのわからん理屈のために、理不尽な因習の為に、家というしがらみのために、壊されたり傷つけられる……人間は反骨精神を持たんといかん。そういうものを持たない人間は、いつか、どこか、権威や金に媚びた生活を送るようになる。口先のうまい人間になる」
    これは籐三の旧友、翔太郎の言葉だが、人間関係以外でも、周りの意見に流されず、自分の中で考えて得た答えは、人の迷惑にならない限り大事にするべきである。
    「何事を考えるにしても、人間と、その暮らしを真ん中に据えたなら、あらゆる虚偽が見えてくる」
    これも、翔太郎の言葉であるが、これを念頭に置いておけば甘い言葉や洗脳に惑わされずに済むのではないだろうか。
    流れは後に戦争の話に変わっていくのだが、政治家や権力のある者が「国のため」と言い、教育・洗脳を施して民衆を戦地へ赴かせる時代があった。民衆も表向きでは「国のため」と言っているものの、いつも心の内にあるのは肉親や愛する人、故郷であるはずだと綴られている。これも虚偽の内の一つであろう。そして「国」という言葉がいかに曖昧であるか思い知らされた。「国」の正体、それは天皇や政府の要人達である。彼らの決定によって人民は利用され戦地で捨て駒にされるのだ。戦争について深く考えを巡らせる事は無かったが、それを考える上で最も重きを置かねばならないのは、戦争の犠牲になった罪の無い人達だと気づかされた。

  • 灰谷健次郎のことばは、これ以上ないというほどに噛み砕かれていながら、傷ひとつない珠のようにつるんとしていて、体の隙間という隙間に染み込んでくるようだ。そしてこの作品は、あまりに凄まじい。凄まじく鋭くあってなお、ぬくい。こんな小説があったものか、と、読み終えてまだ、思いにやり場がない。惑う。出会えてよかったと思える一冊が、また増えた。

  • 本を読んで味わう優しさというものを学んだ。
    僕の将来を決めた一冊。  批評しきれない優しさを持っています。
    是非読んで、批評してください。

  • 最初は現代に対する批判ばかりで投げ出そうかと思いましたが、最期まで読むと何だか切ない気分に。ふしぎです。

  • 素敵な夫婦でした?

  • 私が読んだのは単行本版だ!!!

    話のオチの部分に行くまで、旅の理由に全然気づいていなかった当時の自分。そう思うと、浅いなあ。
    渋谷のシーンがとても好きです。

    でも、読み返せる気力がない。

  • ああいうふうに奥まで突ける発言ができるくらい達者になってみたいものです。

  • 老いと死の優しい物語。

    妻を「ハルちゃん」なんて呼ぶ老齢の画家。
    80年来の友人とその孫。
    そうした人々が登場して、
    物語をつくる。

    終わりがあるから輝くものがあるのだと私は思う。
    終わりが人を追い詰めることもあれば、
    終わりが大きなエネルギーをくれることもある。
    最後数ページがとてもよかった。


    そしてそして、
    巻末の対談(灰谷健次郎×樹木希林)!
    これもとてもよかった!!

    『兎の目』や『太陽の子』とはなんだか違うな、
    と思っていた違和感がスッキリした!

    この小説で使われている言葉は、標準語なんです。
    いつもは関西訛りのある言葉なのに。

    やっぱり言葉のちがいでずいぶん印象が変わるもの。
    私は東京生まれの東京育ちだから、
    デフォルトではあまり他人とぐっと近寄らないような
    東京の言葉、いわゆる標準語には違和感ない。
    でも、確かにそれぞれの味があるんだろうね。

    灰谷さんが
    「関西の言葉のいいところは、情感をスーッと伝えるところ」
    と書いていて、とても納得した。

  • こんなふうに子どもを育てられる
    大人に
    なりたいと
    ならなきゃと思ってる。

  • 〜「むずかしいものですね」「むずかしい。人は試行錯誤してこなければわからぬという厄介さを抱えておる。だから人生派といういい方も出てくる」〜


    ほんとうに…ほんとうに…

全14件中 1 - 10件を表示

風の耳たぶ (角川文庫)のその他の作品

風の耳たぶ (角川文庫) Kindle版 風の耳たぶ (角川文庫) 灰谷健次郎

灰谷健次郎の作品

風の耳たぶ (角川文庫)に関連する談話室の質問

風の耳たぶ (角川文庫)はこんな本です

風の耳たぶ (角川文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする