したたるものにつけられて: 自選恐怖小説集 (角川ホラー文庫 83-1)
- KADOKAWA (2001年9月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
- / ISBN・EAN: 9784043597017
感想・レビュー・書評
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「自選恐怖小説集」とあるように恐怖が根底にある文庫オリジナル短編集。収録作に共通しているのは、登場人物が何らかのある考えに捕らわれており、その固執した自意識によって状況が一転してしまう点。その執念に捕らわれたら最後、まさに恐怖である。こけおどしのスプラッターホラーなどはなく、人間の意識によって日常が歪んで狂っていく恐怖を味合わせてくれるという上質な一冊。
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やはり良い
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自選恐怖小説集とのこと。恐怖小説といっても、ホラーとひと括りにはできない感じです。
中国史あり、自己愛あり、SFあり、その中でも特に印象的だったのは歌舞伎役者が主役の
「田之助の恋」と「葺屋町綺談」のふたつ。どちらも実在した人物がモデルらしいが
どこまでが創作なのだろう。怪談めいた雰囲気とあでやかな美しさを同時に味わえました。 -
『田之助の恋』は正統的幽霊噺ながら、幽霊そのものより生きている人間の我執妄執の恐ろしさを感じた。それは収められた他の作品全般に云えることで、同じく歌舞伎役者を描いた『葺屋町綺談』などはその最たるもの。久々に恐怖に慄いたのは江戸時代の史実風の作品『流れる』不条理が導く狂気の連鎖がおぞましい。傑作!倦怠した日常が我執に取り憑かれた女によって狂気の非日常に取って代わられる『悲歌』『走る女』『したたるものにつけられて』の3作は《欲望する女》に対する男達の根源的恐怖心がとてもよく描かれていた。
さすが、三島由紀夫賞作家、表紙の安っぽさを払拭する高レベルな作品群。 -
悲歌 / 初出 新潮 2000年1月号
走る女 / 初出 小説新潮 2000年4月号
したたるものにつけられて / 初出 群像 1999年1月号 (「キュクロプスもしくは松風」 加筆訂正 改題)
星空 / 初出 小説現代 1999年7月号
流れる / 初出 海燕 1995年1月号
田之助の恋 / 初出 新潮 別冊・時代劇特集号
葦屋町綺談 / 初出 へるめす 53号(1995年1月) (「再臨」 改題)
東昏候まで / 初出 海燕 1996年11月号
ゴブリン / 初出 群像 1990年12月号
解説 (幸森軍也)
カバーデザイン 田島照久 (thesedays)
口絵 サカタカヨ
装幀 田島照久
印刷 e-Bookマニュファクチュアリング
製本 e-Bookマニュファクチュアリング -
ぶっちゃけ「小林泰三」さんの小説と間違えて買いました。こういう本との出会いもあるのね。ホラーと銘打ってるのですが、ホラーって感じもそうしません。
「世にも奇妙な系」と私が勝手に呼ぶ「なんか奇妙な不思議な、気味悪い、怖い」っていうお話の短編集です。
川上から大量の死体が何故か流れてきて、村が怪奇に見舞われる「流れる」。そして、歌舞伎役者の一生をテーマにした「田之助の恋」と「葦屋町綺談」が良かった。
特に「田之助の恋」は美男の立女形が幽霊に恋をしてしまう話ですが、恐ろしいやら美しいやらで引き込まれました。