あしたはうんと遠くへいこう (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 190
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043726035

感想・レビュー・書評

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  • 旅がお好きな角田さんならではのストーリー展開かな、と思いました。
    恋愛に、男に夢中になって、そしてふとしたきっかけで喧嘩して。
    そこでリセットして旅に出る。
    リセットはどうやるかというと、住み替えだったり、旅だったりするのです。

    世間一般にはなかなかリセットに踏み切ることはできないけれど、いずちゃんは家財すべてを捨ててリュックひとつで踏み出します。
    今住んでいるところをすべて捨てるので、戻るところはとりあえずなくなっています。そこまでリセットして大丈夫か? と不安になるくらいのリセットなのですけれどある意味潔い。

    こうやってときどきリセットする人は世の中に結構存在しているのかもしれない。
    でも、リセットにはお金と行動力が必要。できるひとは限られます。

    断捨離もそこまでとはいわないけれど、生きていくために必要なものって、そんなにないし、あの世にもっていけるもの、そんなモノなんてなにもないわけだから、そう捨てちゃっていいんだよな~、と別な視点で読んでいました。

  • 恋愛至上主義になると、こんなふうに、自分でダメだとか思わないまま突っ走ってしまうんだろうか。
    多くの人が味わいたくない失敗、相手のことばかり見てしまってアホになる感覚。
    自分のこと大事にしなよって言われても、恋愛が突き動かしてくる衝動ってすごいものがあるし、なかなかそうはできないよね。
    苦い思いばっかりして、自分が悪かったんだって思って、自分のこと嫌いになって、ますますいい恋愛なんか程遠くなっていく。
    苦い恋愛なんて、誰だってしたくはない。
    頭の中が男のことばっかりになっているそんな自分にも、OKが出せるようになる小説でなんじゃないかと思う。

    いつも満たされなくて、誰かを好きになってしまうと後先考えない、ダメ女な泉が主人公。
    高校時代から始まり、1年から2年くらい次々と時代が進んでいく小説。
    いっときはラブラブだった男子ともひどい別れ方をしていたり、恋人との関係をやり直したくて旅に出たり、愛した人がストーカーになっちゃったり。
    恋に溺れてここまで行動力を示せるのがすごい。
    昔読んだ「ハッピーマニア」という漫画ばりにいきすぎた女性目線。

    自分自身も好きな人ができてアホみたいになっちゃったことがあったので、恋愛至上主義な人にちょっと軽蔑する気持ちがある方なんだけど、
    恋愛至上主義な人たちも、男の人が自分の価値観を作ってしまっていることに悩んだり、逃れようとしたり、自分に言い訳してみたり、そんな堂々回りを繰り返すことがあるんだろうと思う。
    そのときそのときでダメな男を好きになったり、恋愛に失敗したり、何度同じことを繰り返してしまうんだろうって、怖くなる気持ちはわかる。
    ダメならダメで突っ走ってみればいい。

    こんな恋愛したいと思わせる小説も素敵だが、世の中には上手くいかない恋愛の形の方が多いように思う。
    恋に溺れたら、その方がドラマチック。
    恋に溺れても、少しずつ成長できる。

  • だめんず好きなのか?って位よく分からない男の人を好きになる泉。お友達の町子も10年以上妻子ある人と不倫。かなりグズグズなんだけど、好きな人が出来たときの思い込みの激しさとか、相手を美化しすぎてる感覚とか…十代の頃の自分思い出した。今でも気をつけてコントロールしないと危ういけど…考え過ぎて伝えられないのも考えものだしなぁ。

    作中では高校~32歳までの恋愛運遍歴が面白おかしく書かれていて、2人のパワーに圧倒される。リアルなら25過ぎたらもう少し慎重になると思うけど、フィクションだからむしろこの迷走する感じがいいなぁ。安野モヨコさんのハッピーマニアっぽい。

  • 旅先で読みたいと書いてあったので、旅先でも読んでみた。

    ここまで恋に溺れる事は脳内ではあっても行動としては無いんだよな。

    一度でいいから、こんな風にどうしようもなくなってしまいたい気持ちもある。

    どっか脳内でわーってなってても、心が苦しくても、日常を送れているし。

    多少の行動はあっても衝動みたいなものにまではなってないような。

    いつまでも脳内恋愛してる場合じゃないんだよな。

  • 表紙の感じや題名から想像してたのとは、だいぶかけ離れた内容だけど、映画を見てるように光景が浮かんできて、面白かった。
    ここまで激しくはないけど、好きな人に夢中になって演じてみたり無理してみたりって言うのは共感出来る。
    この後何年後か、ちゃんと幸せになってて欲しいな。

  • Kindle Unlimited(9冊目)

    高校をでてから32歳までの栗原泉の人生を描いた物語。
    簡単に言うと、全編中二病のお話。

    なんか、角田さんの小説で海外に行くと(特に東南アジア)村上春樹を彷彿とさせる。
    リアルに描いているけど絶対に現実でない世界。そんなことを感じて、ふと、(角田さんってサラリーマン経験ないよね?)と思った。あ、いや、山本文緒をパラで読んでいたので、それがとても顕著に見える。どっちが良いとか悪いとかではなく。随分と大人の年齢になった自分には、この物語は嘘っぽく、気恥ずかしいんですよね…

  • 高校生からの栗原泉の15年の男性遍歴。
    恋愛してるときの泉の「だれかを好きだという気持ちの出所はいったいどこだ。嫌いな点や食い違っている点を幾つあげても嫌いになれないのはなぜだ。」とか、最後の彼氏山口の「仕事はそれなりに順調で、お金にも困ってない、でもそれだけなんだ。そのバランスを崩さないために毎日同じことをくりかえしているだけって気かしちゃうんだ。」とかすき。
    恋愛の相手関係なく、自分がしあわせって感じられるようになってほしい。

  • なんでこうダメな男ばかりを好きになってしまうかな。
    もっと自分を大事にしてほしいし、一人でやっていくたくましさも持ってほしい。
    お父さんのことは嫌いと言ってるけど、泉の性格や行動は、お父さんを人一倍意識してる結果だと思う。
    最後、ああいったところに落ち着くのであれば、今までの人生も決して無駄ではなかったのかもと思えるけど。

  • 泉という女性の成長と退化?の話

    ヤドカリが次の宿貝を探すように、次々と移り変わる自分自身。まだ見ぬ何かを求め、新しい物に惹かれる泉という一人の女性の遍歴。田舎の学生だった頃。都会の大学生になった頃。OLとしてお金を稼ぎだした頃。変わりゆく泉の視点から見える世界が精緻な筆致で描かれている。

  • つまらない女のつまらない人生。
    恋愛遍歴をキーに綴られていきます。

    そしてつまらないって書いたけど、
    じゃぁ自分の人生はどうなんだって思うと
    つまんないよねーと思ったりして。

著者プロフィール

1967年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部文芸科卒業。90年『幸福な遊戯』で「海燕新人文学賞」を受賞し、デビュー。96年『まどろむ夜のUFO』で、「野間文芸新人賞」、2003年『空中庭園』で「婦人公論文芸賞」、05年『対岸の彼女』で「直木賞」、07年『八日目の蝉』で「中央公論文芸賞」、11年『ツリーハウス』で「伊藤整文学賞」、12年『かなたの子』で「泉鏡花文学賞」、『紙の月』で「柴田錬三郎賞」、14年『私のなかの彼女』で「河合隼雄物語賞」、21年『源氏物語』の完全新訳で「読売文学賞」を受賞する。他の著書に、『月と雷』『坂の途中の家』『銀の夜』『タラント』、エッセイ集『世界は終わりそうにない』『月夜の散歩』等がある。

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