- Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
- / ISBN・EAN: 9784043736027
感想・レビュー・書評
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本編もいいが、『水に沈んだ私の村』でのプールの場面、真志喜と瀬名垣、みすずと秀郎、そして宇佐見先生の会話がなんだか映画にできそうなほど輝いていた
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瀬名垣と真志喜の行き着く先はどこなんだろう?タイトルの響きがステキ。
★ごひいきキャラは真志喜 -
真志喜の描写が特に細かく、美しい
色素の薄い髪、抜けるような肌、着流しの華奢な体躯、といった麗しい言葉でありありとそこにいる
瀬名垣との間に流れる静かで潔く、それでいて熱情的な空気がたまらない
2人以外の人間を排した世界に、とりまく人々も魅せられる
無駄のないあっさりとした文体だからこそ際立つ、登場人物たちの清廉な美しさ
また、古書を取り巻く人々の生き方に
憧憬とも羨望とも違う愛しさを感じる
美しい2人の男
纏う古書と土の香り
この空気に酔うことが、この話の全てだと思った。 -
カドフェス2015に紹介されていて、かつ有名な作者だからと手に取ったがBL作品でした。正直なところ、そうなのだという表記が欲しい。
序盤から隠しはせず匂わせてきたため驚きました。
結局最後まで読んだけど、正直同性愛に抵抗がある人も多いため「これおもしろいよ」とは勧めにくいです。
ただし作品のまとう空気感は好きでした。
十三年前の些細な、それこそ子供ながら純粋に「これが欲しい!」という思いから起こした行動が一人の大人を傷つけ、家庭を崩壊させてしまったことへの罪悪感を抱えている瀬名垣と、古書店の店主・真志喜の両片思い。
予期せぬ再会、新たな出発への覚悟と短いながら盛りだくさんで読み応えありました。 -
装丁も題名も田舎っていう設定も……全て繊細な雰囲気を漂わせておきながらその芯は意外と力強い。
またBLも含むということでどんな風に描かれるのだろうと身構えてたけど、匂い系とガチ系のやつの狭間っていう絶妙な所で小説の内容に対する違和感もないし、むしろその関係がないと!って思える。
綺麗で繊細なテーマに見えて実は力強い。
また古書を取り扱うってのも、魅力的(ビブリア古書堂読んでるせいかもだけど…)。
いろんな人の青春や思い出とかが詰まってる美しい作品だと思う。 -
長距離移動のバス車内で読むため、小さな売店の文庫本からなんとなく選んだ一冊。
古本を扱う人達のお話。どんな業界にもあるような向き不向きと上下関係、二人の少年の友情、複雑に絡まりあって「さて、どうしたものか」と読者も悩む状況で藻掻く登場人物たち。
登場人物内での依存と拒絶の幅が激しくて少し違和感があったかも。
読後感がそこまですっきりしなかったので評価は低めに......。 -
ほんとに、いい本だと思います。
真志喜は水の底の澄んだところで泳いでる魚で、瀬名垣は上手に風にのる鳥のようなイメージです。(私の妄想では月夜の夜には、あの庭で会うのです。わー!笑)
二人の関係が、きれいで妖しく優しくて好きでした。お互いを大切に思ってるのがいいです。
わたしもプールに跳び込みたいな(真冬ですが -
匂わせ系BL?っぽくて、ちょっと苦手でした。BL自体はキライじゃないけど(笑)、はなからそううたっていない作品では、作者が意図しないところでこちらが勝手に深読みする余白・行間が欲しいところ。はい、ここ深読みするとこですよ~って、確信犯的に餌をまかれると逆に萎えちゃうんですよねえ。
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真志喜と瀬名垣の意味深な関係に想像力を掻き立てられます。表紙も可愛くて、お気に入りの一冊です!
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びっくりした。
冒頭から引きずり込まれる静かな世界に、ただうっとりしていただけだったのに、瀬名垣が真志喜に会った瞬間、背筋がぞくっとした。
三浦しをんという作家さんには、エッセイから入ったからこそ、余計に、彼女の書く小説には毎回驚かされる。それも、とびきり心地よいやり方で、毎回。
何も説明されていないのに、過去なんて暴かれていないのに、「ああ、そうか」と感覚に訴えかける文章は、圧巻。
エピソードのひとつひとつ、登場人物のひとりひとりが、とても丁寧に、とても愛情をもって描かれていて、不器用だけれども、決して悪人ではない人間たちがその場にひっそりを佇んでいて、文章の間、句読点の間で、何度もため息を頭の中だけでついた。 -
舞台は現代なんだけど
古風というか幽玄な美しさが漂う作品
けれどそんな上品で物語的な雰囲気を崩さない中にも
登場人物の人間くささみたいなものがハッキリと描かれていて、そのギャップがいい
真喜志と瀬名垣の曖昧に表されてる関係性も
作品にマッチしてて、いい味だしてると思います。 -
三浦さんの作品、次に手に取ったのはこれでした。
由緒ある古書店の三代目、真志喜と、その兄弟のように育ってきた瀬名垣とのお話。
ある出来事のせいで、ふたりの間にはいつも見えない溝がある。
表面上は分からないほどのものだけれど、決定的な溝。
真志喜が葛藤していく様子や、それを支えていく瀬名垣の様子が、静かに描かれていて、「風が強く吹いている」から読んだ私には、また違った魅力が感じられました。
男二人の話に、こんな感想どうかと思うんですけど、なんだか全体的に官能的な雰囲気が漂う小説でした。
時々「ん?これはえーっと…?」という会話が出てきたのですが、察してください、なのかなと思って、スルーして読みました。笑 -
星の評価がもっと細かくあったら3.7とか。
初めて読んだ三浦しをん作品。
最初数ページ読んだ感じでは同性愛ものかと思った。
でも、実際はもう少し複雑。
老舗古書店『無窮堂』の3代目ましきと幼なじみで同業の背名垣の物語。
幼い頃、古書をめぐって出来たトラウマがお互いの動きを鈍くしている。
そんな2人の関係を動かす再会が古書買い付けの旅に待っていた。
古書という地味なフィールドでこんな面白いのかと、感心しきり。
古書には全く興味がなかった私も、若干神田とか行ってみたい衝動にかられた。
私が影響をうけやすいってだけかもしれないけど。
これを期に三浦しをん作品を開拓しようと思う。 -
三浦しをんの『月魚』は、古書業界を舞台にした物語です。
古書店『無窮堂』の若き当主、本田真志喜と、同じ業界に身を置く瀬名垣太一。二人は幼い頃から、密かな罪の意識をずっと共有してきた。瀬名垣の父親は「せどり屋」とよばれる古書界の嫌われ者だったが、その才能を見抜いた真志喜の祖父に目をかけられたことで、幼い二人は兄弟のように育ったのだ。しかし、ある夏の午後起きた事件によって、二人の関係は大きく変っていく…。
この本の主要なテーマは、本と人との絆です。本は、人の心に触れるだけでなく、人と人をつなぐ力があります。真志喜と瀬名垣は、本を通して互いに惹かれ合いましたが、本をめぐる事件によって離ればなれになりました。しかし、本は、彼らの間に残された唯一の繋がりでもありました。本に対する愛情と執着は、彼らの人生に大きな影響を与えました。本書のおすすめポイントは、作者の透明感のある文体と、幻想的な描写です。作者は、古書の魅力や、真志喜と瀬名垣の感情を、繊細で美しい言葉で表現しています。
総評として、この本は、古書業界の裏側や、本に対する様々な思いを描いた作品です。登場人物の感情や背景には、深い謎や秘密が隠されています。読者は、真志喜と瀬名垣の関係の変化や、事件の真相に引き込まれるでしょう。この本は、本に対する情熱や、人との絆を感じたい人におすすめです。 -
三浦しをんさんの作品は「舟を編む」と「風が強く吹いている」とアンソロジーに入っていた短編くらいしか読んだことがありませんでしたが、本作は「舟を編む」などとは文体や作風が違っていました。
「舟を編む」などと比べるとユーモアが足りないのですが、瀬名垣と真志喜との関係を、真摯に描きたかったのかもしれません。
最初は読んでいても文章がなかなか頭に入って来なかったのですが、中盤からは物語に入り込めました。
BL小説と言われる作品ですが、確かに評判通りでした。 -
BL好きの中2娘からのオススメで読んでみた。三浦しおんさんの作品、初めて読みだったけれど、なんとも綺麗で情景の浮かぶ文章、心地よく読めた。
BLといえばそうだけれども、真志喜と瀬名垣の惹かれ合う様子が人としてとても微笑ましかった。
古書の世界のことも垣間見ることができて興味深く面白かった。