- Amazon.co.jp ・本 (446ページ)
- / ISBN・EAN: 9784043754021
感想・レビュー・書評
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高史明『闇を喰む 2 焦土』角川文庫。
完結編。東京でニコヨン生活を始めた金天三。ニコヨンとは日給240円の日雇い労働のこと。ニコヨン仲間に進められ共産党員になった金は警察との衝突で逮捕され、投獄される。やがて、党にも裏切られた金の向かう未来は……
押し潰されそうな程の重苦しい闇の中に微かな光が見えたところで物語は完結する。結局のところ、宗教や精神世界に救いを求める位しか無いのだろうか。
今では考えられない戦後日本の闇の歴史。背景にあるのは差別による経済格差だろう。共産党がアカと呼ばれ、暴力で主義主張を訴えようとし、警察は暴徒に対して平気でリンチを加えるという野蛮な時代。しかし、よく考えてみれば昔も今も余り変わらない。弱者虐めや差別の構造はネット世界でより陰湿となり、考えられないような陰惨な殺人事件は毎日のように耳にする。世界を見渡してみても、アメリカの同時多発テロやその報復攻撃など、暴力の嵐はとどまることを知らない。
物質的には豊かになったはずの人間は、その精神に於いては全く豊かになっていないのだ。他人より少しでも優位に立とうとする欲望で生きる人間にとって、これだけの経済的格差があると、とてもその格差を埋めることが出来ず、精神的な貧しさはどんどん膨らむばかりなのだろう。
本体価格819円(古本7冊で127円)
★★★★詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
壮絶なドラマ。在日、共産党。組織に恋愛を決定される時、決定される側は、生殺与奪の権限まで奪われたロボットとなる。人を人と思わない、そうしたやり方が、奴隷や囚人、党人、一部宗教、あるいは人気商売などであり得るのだ。そうまでして、自由を売ってまで、何を守りたいか。売ってしまい、その判断をリセットしたいならば、壮絶な人生を送るしかないのだ。当然、生まれながらに、それを売られてしまった人たちも。
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在日二世の著者が苛烈な極貧生活の中で、やっと自分の居場所を見つけることができた。東京で日雇い労働者として働く彼は、仕事仲間のすすめで共産党員となる。しかし、疑問を持ちながらの党員生活にも在日朝鮮人排除という理不尽な党則から終止符が打たれることになる。信じていた党に裏切られ、精魂尽き果てた彼に明日はあるのだろうか、最終章では一部の望みを描きながら彼の新しい門出を感じさせる。