- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784044004026
作品紹介・あらすじ
雷神、酒呑童子、茨木童子、節分の鬼、ナマハゲ……古くは『日本書紀』や『風土記』にも登場する鬼。見た目の姿は人間だが、牛のような角を持ち、虎の皮の褌をしめた筋骨逞しい姿が目に浮かぶ。しかし、日本の民間伝承や芸能・絵画などの角度から鬼たちを眺めてみると、多彩で魅力的な姿が見えてくる。いかにして鬼は私たちの精神世界に住み続けてきたのか。鬼とはいったい何者なのか。日本の「闇」の歴史の主人公の正体に迫る。
感想・レビュー・書評
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鬼ものが好きなので久しぶりに民俗学。1冊にまとめてはあるけれど掲載はバラバラのエッセイのようで、序盤はちょっと内容薄くて不満だったのだけど、後半どんどん面白くなって一安心。たとえば、退治されたあと鬼の首がどうなったか、妖怪変化の出現の音は?など、テーマが多角的で、意外な角度からの分析が新鮮でした。
「虎の巻」って言葉、なにげなく使ってたけれどそういえば元ネタ知らなかったなあ、とか。そういえばちょっと前に読んだ町田康のギケイキに「六韜」出てきたっけ(つまり六分冊でそれぞれ○○の巻となってるわけですね)
個人的に異類婚姻譚がとても好きなので、最後のふたつの「片側人間」の話はとくに興味深かったです。片側人間というのはつまり異類婚姻の結果生まれたハーフの子供のこと。ここではおもに、鬼と人間の女性の間に生まれた子供が見た目まんま縦割りで(※昭和の人間なので即座にアシュラ男爵を思い浮かべてしまった)半分人間、半分鬼のビジュアルで、あちらとこちらの世界の板挟みになるパターンの事例紹介。
異類婚姻譚をさらに分類して、嫁入りバージョンと聟入りバージョンの傾向の差、結婚後子供が生まれる場合と生まれない場合、そのまま結婚しつづける場合と逃げ戻る場合(さらに相手を殺すか、殺さないか)等、どんどん枝分かれしつつ分析してあって、なるほどーと。ざっくり、嫁入りは報恩型が多いし生まれた子供は異能を武器に出世するパターンもあるのに(オカンが狐の安倍晴明とか)聟入りは押しかけ通い婚パターンだと子供は殺されることが多い気がする。
あとたまたま紹介されていた事例に蛇聟が多かったせいかもしれないけれど、これフロイト先生だったら絶対蛇は男性の○○○の象徴だと分析しそうとか勝手な想像をして苦笑い。まあ日本は水の多い土地で蛇は竜とも結びつき田植えやらなんやらで雨乞いしたり水の神様系の繋がりで、実際は女性がそのための生贄にされたのではないかとこれも勝手に思うけれど。
※目次
鬼とはなにか/鬼の時代――衰退から復権へ/「百鬼夜行」の図像化をめぐって/「虎の巻」のアルケオロジー――鬼の兵法書を求めて/打出の小槌と異界――お金と欲のフォークロア/茨木童子と渡辺綱/酒呑童子の首――日本中世王権説話にみる「外部」の象徴化/鬼を打つ――節分の鬼をめぐって/雨風吹きしほり、雷鳴はためき――妖怪出現の音/鬼の太鼓――雷神・龍神・翁のイメージから探る/蓑着て笠着て来る者は――もう一つの「まれびと」論に向けて/鬼と人間の間に生まれた子どもたち――「片側人間」としての「鬼の子」/神から授かった子どもたち――「片側人間」としての「宝子・福子」詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
-2022.10.14読了
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蔵書(文庫・千葉1)
新刊(文庫・千葉1) -
鬼とはなにか
鬼の時代―衰退から復権へ
「百鬼夜行」の図像化をめぐって
「虎の巻」のアルケオロジーー鬼の兵法書を求めて
打出の小槌と異界―お金と欲のフォークロア
茨木童子と渡辺綱
酒呑童子の首―日本中世王権説話にみる「外部」の象徴化
鬼を打つ―節分の鬼をめぐって
雨風ふきしほり、雷鳴りはためき・・・妖怪出現の音
鬼の太鼓―雷神・龍神・翁のイメージから探る
蓑着て笠着て来る者は・・・もうひとつの「まれびと」論に向けて
鬼と人間の間に生まれた子どもたち―「片側人間」としての「鬼の子」
神から授かった子どもたち―「片側人間」としての「宝子・福子」
あとがき -
終盤の「片側人間」のあたりが好きです
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結局のところ、鬼は、人間なんだと思いました。今はやりのスペクトラムなんじゃないかと。図版が白黒で文庫本なので小さくてみづらいのが残念だった。