百人一首(全) ビギナーズ・クラシックス 日本の古典 (角川ソフィア文庫 A 4-1 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典)
- 角川学芸出版 (2010年11月25日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784044072186
作品紹介・あらすじ
かるた遊びとして広まり、誰でも1つや2つの歌はおぼえている「百人一首」。すべての歌の意味、どんなところが優れているのか、そして歌人たちはどんな人だったのか-。天智天皇、紫式部、清少納言、西行、藤原定家、後鳥羽院ほか、日本文化のスターたちが一人一首で繰り広げる名歌の競演がこの1冊ですべてわかる!歌には現代仮名でも読みを付け、コラムには歌の技法や歌を作る場、現代につながる文化など、楽しい話題も満載。
感想・レビュー・書評
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百人一首といえば、全部覚えなさい、と親に本を渡され、何度もトライするものの、最初の十首ほどを繰り返し読むだけで先に進まず、といった苦い思い出しかない。
ブクログのレビューで、ビギナーズ・クラシックシリーズが紹介されていたので、読みやすそうだな、と手に取り、ようやく百首全部に目を通すことができた。
無知をさらけ出すようで恥ずかしいが、百人一首は平安時代の一時期に詠まれた和歌を集めたものだと思いこんでいた。だが、第一首は天智天皇という古代のヒーロー、第百首は鎌倉時代の順徳院。徳政で有名な歴史上の人物をトップに据え、最後は(当時の)現代、鎌倉幕府との軋轢でうまくいかない世を嘆く、というストーリー仕立てなのがすごく新鮮で面白いと感じた。
この本では、さまざまな歌の技法も解説してくれている。これまでは、なんだか難しそう、と感じていたが、今でいういわゆる大喜利とか、謎かけみたいなもの、と考えれば腑に落ちる。ちなみに、私は大喜利を見るのは好きだが自分ではからきしで、現代に生まれてつくづくよかった、と思う。
せっかくなので、気に入った歌を紹介。
五 奥山に紅葉踏み分け鳴く鹿の声聞くときぞ秋は悲しき 猿丸太夫
※シンプルに情景が浮かんで、共感しやすいのがよい。
二七 みかの原わきて流るるいづみ川いつ見きとてか恋しかるらむ 中納言兼輔
(みかの原を分けて湧き出て流れる泉川の、その「いつ」ではないが、いつ見たといって、こんなにも恋しいのだろうか。)
※「みかの原」「いづみ川」「いつ見きとてか」と音で聞いた時の気持ちよさがよい。
三八 忘らるる身をば思はず誓ひてし人の命の惜しくもあるかな 右近
(忘れられてしまうわが身のことはなんとも思いませんが、私との愛を神に誓ったあなたの命が、神罰により失われるのではないかと気がかりです。)
※この痛烈な皮肉!こんな歌を詠まれたら相手は心穏やかでいられないだろう。
ビギナーズ・クラシックシリーズ、よいなあ。これをきっかけに他の古典も読んでいきたい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
古典の個性が見えてくる?! 「ビギナーズ古典MAP日本編」制作裏話 谷知子先生(フェリス女学院大学教授)インタビュー① | カドブン
https://kadobun.jp/feature/interview/2fxbj69eoidc.html
ビギナーズ・クラシックス 20周年 | カドブン
https://kadobun.jp/special/beginners/
「百人一首(全) ビギナーズ・クラシックス 日本の古典」 谷 知子[角川ソフィア文庫] - KADOKAWA
https://www.kadokawa.co.jp/product/201008000363/ -
万葉集、古今和歌集、新古今和歌集と、順に楽しんできたので、とても親しい気持ちで読みすすめられました。
和歌というものがいかに決められた枠組みの中で詠われたものか、ということが大変よくわかります。感情を素直に言葉にするのだけではなくて、高度にルールが規定されたものでした。
百人一首は、膨大な和歌の中から、わずか100首を選りすぐった珠玉のベスト盤です。決められた数の音で、「縁語」「掛詞」「本意」「歌枕」「本歌取り」などの技巧をたくみに活用した名作集です。
こんな芸術性の高い歌を、即興バトルで披露し合ったというのですから、鎌倉以前の人たちの知識量と創造性には脱帽です。
この本は、現代語訳と解説に加え、和歌の世界をより深く理解するためのコラムなども織り交ぜながら、現代の私たちが共感できるように軽妙な語り口で、100首すべてを紹介してくれています。どういう境遇の人がどんな場面で詠んだものなのか、ということがわかると、歌に込められた思いがより深く味わえます。
高校古文ような眠くなりそうな授業ではありません。気軽な気持ちで、私たちの財産であるクラシック文学に触れることができます。 -
好きな和歌もできた、日本人でよかった
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全部じっくり読めてはいないのですが、百人一首は授業で覚えさせられるもの、という今まで抱いていた負のイメージを払拭するきっかけになった本。
解説文が個人的に読みやすく、親しみを持って歌に触れることができました。お気に入りの歌は、
一五「君がため春の野に出でて若菜摘むわが衣手に雪は降りつつ」
八四「ながらへばまたこのごろやしのばれむ憂しと見し世ぞ今は恋しき」 -
紫式部「めぐり逢ひて~」について、高校で習ったころにはピンとこなかった歌も、社会人になり環境が変わると少しわかるようになった気がする。
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最果タヒ「百人一首という感情」つながりで。/我々にとって至極当たり前に思える季節の推移も、当時の人にとっては、天皇の徳政を表すおめでたい風景だったのだ。という指摘は興味深く。百人一首に限らず、取り上げられていた中から気になった歌を。特に、玉ぞ散りける、の歌が印象に残る。/天の原ふりさけ見れば春日なる三笠の山に出でし月かも 阿倍仲麻呂/つひに行く道とはかねて聞きしかど昨日今日とは思はざりしを 在原業平(古今和歌集)/わびぬれば今は同じ難波なるみをつくしても逢はむとぞ思ふ 元良親王/人はいさ心も知らずふるさとは花ぞ昔の香に匂ひける 紀貫之/白露に風の吹きしく秋の野はつらぬきとめぬ玉ぞ散りける 文屋朝秀/逢ひ見てののちの心にくらぶれば昔はものを思はざりけり 藤原敦忠/世の中にたえて桜のなかりせば春の心はのどけからまし 在原業平(古今和歌集)/瀬をはやみ岩にせかるる滝川のわれても末に逢はむとぞ思ふ 崇徳上皇/ながらへばまたこのごろやしのばれむ憂しと見し世ぞ今は恋しき 藤原清輔/願はくは花の下にて春死なむその二月の望月のころ 西行(山家集)/
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「千年後の百人一首」を読むにあたって、百人一首の知識が皆無だったため副読本のように並行して読みすすめました。
恋歌が圧倒的に多く、43首をしめるらしい。なんとまあ。
著者によるあとがき解説の、和歌とはなんぞやという話も素敵でした。和歌とは「ハレ」を題材にしているらしい。恋の迷い、明けまで残った月、霧が立ち上る風景など、日常生活の中にあっても、心がきゅっと引き締まる、その優美な一瞬をとらえているもの。
和歌では自然が必ず詠まれるが、それは自然であって単なる自然ではない。人間の心情と深く絡み合うことによって意味が生まれる「自然」なのだ。
和歌にはかならず人と人とをつなぐ力がある。素敵だ。いとあはれ。
花の色はうつりにけりないたづらにわが身世にふるながめせし間に
以前から気になっていたビギナーズ・クラシックスシリーズですが、とても読みやすくて良かったです。
他のも読んでみよう。 -
百人一首の入門書。読み物としても面白い。少々見解の違う解釈もあるがそれも古典の古典たるゆえんである。和歌をめぐる様々な知識もコラムとして載せられている。中高生は必読。大人も読みやすい。
電子書籍版(Kobo)では多少レイアウトが崩れるところがある。 -
たくさんの恋の歌。でも、その恋愛観も、現在とはかなり異なっています。
普通に会うことはほぼなく、歌を通じて親交を深め、逢った時には関係を持つ。
今の私には想像もできない世界。
でも、これもあの時代の一般的なことだったかというとそうでも無い気がします。
私は歴史に詳しい訳ではありませんが、百人一首に登場するような人たちは、みんな貴族か、その出身の人たち。
一般庶民ではない。
あの時代も、彼らの恋愛観はやはり特別なものであったのかもしれません。
お互い身内のような立場だからこそ通じる言葉、共通認識の中で、言葉を洗練し、短い文章の中に様々な情景を埋め込んで行った。
そうやってできたのが和歌であり、その中でも特に洗練されたものが、百人一首なのかもしれませんね。